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入れ墨規制の裏で……「業界団体推進派」と「伝統彫り師」の対立激化! 闇の彫り師として生きる道も

※イメージ画像

 医師以外が入れ墨を入れる行為への規制議論を受け、彫り師の業界団体設立の動きがある中、これに関与せず「闇の彫り師」としての立場を貫こうとする者がいる。

「世の中に認められようなんて思っちゃいない」

 そう話すのは、神奈川県の40代彫り師だ。医師免許を持たない「闇の彫り師」だが、「その立場を変えようとは思わない」と話す。

「医師免許の問題で、被害者ぶって騒いでいるような彫り師は、看板を出して金もうけをしたいとか、表でカッコつけたいファッション彫り師とか、そんな連中。彫り師なんて、もともと表舞台の職業ではないし、俺は社会に認められたくてやってるわけじゃないから、そんなもの関係ない。今まで通りやる」(同)

 この彫り師は、先代から引き継いで4代目だというが、看板を出して店を構えたことはない。その理由は「暴力団との付き合いがあるからだ」という。

「客の多くがヤクザ関係。俺自身は組員ではないけど、実質、彼らは兄弟。もし業界団体なんかできたら、まず迫られるのがヤクザとの絶縁だろう。その時点で相いれない。俺は先代がやってきた兄弟(組員)たちの世話(施術)に徹するべきで、兄弟たちとの縁がなかったら彫り師の血脈は続いてこなかったのだから、その仁義こそが一番重要」(同)

 昨年9月、医師免許なしに入れ墨を施した医師法違反(無資格医業)の罪に問われた彫り師に、大阪地裁は罰金15万円(求刑30万円)を言い渡した。こうした摘発により、これまで無資格で営業を続けてきた全国の彫り師たちが、事実上の「違法営業」であることが明るみに出た。その対策として、業界団体の設立に向けた動きが見られるのだ。

 1月中旬、約50名の彫り師が集まった会合では、弁護士らも交え、彫り師のライセンスを新たに設ける法整備などが話し合われた。同業者が結束を強めて国会議員に働きかけ、新たな倫理基準をもとに法整備を行ってもらうという方向性だ。

 しかし、前出の彫り師のように、これに同調しない者も少なくない。福岡県在住の50代彫り師は「この世界は、伝統ある一門で修業した者だけが正統で、それ以外はまねしているだけのニセモノ」と、派閥外の彫り師たちに敵対心を強く持つ。

「10代で師匠に弟子入りし、日本が誇る伝統の入れ墨について勉強してきた。彫り物にはすべて意味があり、伝統ある和彫りの手法に限る。そこらで自主開業したような連中は海外のタトゥーを見よう見まねでやっているだけで、我々のやってきた伝統の入れ墨とは本質的に違う。そんなミソクソを一緒にして団体を作られても、伝統無視のものに興味はないし、弁護士が金もうけを狙って利用しているだけにしか見えない」(同)

 この彫り師は現在、6名の弟子と共同生活をしている。まるで大相撲の部屋制度のように、厳しい上下関係の下で若手を指導し、卒業できた者だけが一門として新たに店を構える形を採っている。

 中には途中で脱走して「破門」扱いとなるも、独自に営業を始める者もいて、「そんな半端な奴とも一緒にされるわけにはいかない」と言う。

 業界団体は、彫り師たちに社会的に認められた職業としての立場を与えようとする一方で、必ずしも全員がそれを求めているとは限らないわけだ。日本での入れ墨文化は、昔に比べればファッション的な人気を高めてはいるものの、偏見もいまだ根強い。その偏見の中で、日陰者としての立場を選ぶ者もいるのである。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

最終更新:2018/02/04 18:00
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