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亀田大毅敗戦! 興毅は大丈夫?「実力の正体」に迫る(後編)

 10月11日、有明コロシアムで行われたWBC世界フライ級タイトルマッチ、王者・内藤大助(宮田ジム)と挑戦者・亀田大毅(協栄ジム)による12回戦は、判定で王者・内藤に軍配が上がった。

 この試合における、大毅選手の度重なる反則プレーに観衆の怒りは爆発し、試合後、勝者の内藤選手は“英雄”としてネットや各メディアで賞賛された。試合後のインタビューで、内藤選手は大毅選手について「全然弱かった!」とコメントしている。

 さて、次の防衛戦は大毅選手の兄、興毅選手(協栄)との対戦も注目されるが、本当の実力はいったいどれほどのものなのか? 以前より興毅選手の強さに懐疑的だったサイゾー編集部では、本誌誌面にて彼の実力の正体について検証を試みたことがある。今回はその内容をお伝えしたい。


「噛ませ犬」は、業界の常套手段

 プロモートを行う大手ジムは、国内外からリスクの少ない選手を探してくる。自ら興行を行うことのできない弱小ジムは、こういった大手ジムの興行に選手を参加させる場合が多い。対戦する大手ジムの選手が格上だろうと、滅多にない試合のチャンスを逃せないのだ。また、タイやフィリピンの選手などは、国内での試合の2~10倍以上のファイトマネーを得られることもあるので、噛ませ犬役だろうが、喜んで来日するケースが多い。

 本誌5月号でも指摘した通り、グリーンツダ時代の亀田の対戦相手は、6人ともさほど実績がないタイ人だった。それは、史郎氏が、日本人と対戦することに強く反対していたからだともいわれている。協栄ジムに移っても、実力と人気が高まるよう、元世界チャンピオンなどとのマッチメイクが組まれてきたが、亀田側が戦いやすい相手を巧みに選択してきたとの声もある。8月に行われる世界戦も、これまでのフライ級から階級を下げたライトフライ級での王座決定戦となるが、WBA、WBCともに実力者が揃うフライ級チャンピオンに挑戦するよりも、王座奪取の確率は高まったといえるだろう。

 昨今、週刊誌などで、このような亀田のマッチメイクを批判する向きも多いが、亀田に限らず、このようなジム(プロモーター)と選手の密接な関係により、日本は選手人口に比較して、数多くの世界チャンピオンを生み出してきたのだ。また、プロモーターであるジムは、レフェリーやジャッジなどに報酬を支払う立場の上、世界戦においては海外から招いた彼らを夜な夜な接待することも珍しくない。これによって、所属選手に多少なりとも有利な判定を得られるというのも、ジムがプロモーターを兼ねているからこそだ。

 だが、このように大手ジムの思惑が中心に置かれたマッチメイクは、ファンにとっては魅力のないものになりがちだという指摘もある(亀田のように、選手自体の人気があれば無関係だが)。海外のように、ジムから独立した立場で魅力的なマッチメイクをすることを仕事とするプロモーター(ドン・キングなどが有名)が制度上存在しないことこそ、ボクシング人気低迷の一因なのだ。そのほか、徐々に階級が増え、世界チャンピオンの絶対数が増えたことの弊害もある。これにより、プロモート力を生かして、王座に挑戦しやくなったものの、実力不足の選手たちがことごとく玉砕していったことが深刻なファン離れを招いたのである。

 人気凋落の象徴が、テレビ中継の激減ぶりだろう。20年ほど前は、国内の試合でさえもゴールデンタイムに生中継されていたのに、いまや世界戦ですら生中継されないことも多い。また、現在は、関東キー局でボクシング中継を定期的に放送しているのは、日本テレビの『ダイナミックグローブ』だけ。歴史あるTBSの『ガッツファイティング』は、昨年11月に終了。他局のボクシング番組も、ことごとく終了している。

同じ世界挑戦でも1億円と0円

 ところで、亀田は、デビュー戦で1000万円のファイトマネーを手にしたとされるが、これは例外中の例外。アマチュアでよっぽどの成績を収めているとか、デビューから連続KOを続けているなどの話題性がある場合を除いて、ファイトマネーは基本的に4回戦で6万円、6~8回戦で10万円、10回戦で15万円程度。ここから、マネージメント料33%や保険料などを差し引かれるため、選手の手元にはほとんど残らない。しかも、このファイトマネーが全額現金で支払われることはまれで、もっぱらチケットで支払われることが多い。選手は、これを自分で売ることで自分の収入とするのだ。

 プロボクサーの最高の舞台・世界戦のファイトマネーは、プロモーター(日本では基本的にジム)が決める。亀田の世界戦のファイトマネーは1億円ともいわれるが、その一方で、今年1月にWBCフェザー級王座を獲得した越本隆志の挑戦時のファイトマネーは0円だった。越本の場合、所属ジムの会長である父親がプロモーターを務めたが、チャンピオン側に支払うファイトマネーなどで資金繰りが苦しく、結果的に挑戦者である越本はタダで戦うことになったのだ。

 同じ世界戦のファイトマネーでも、人気選手か否か、ジムが放送権料やスポンサー料をどれだけ集められるかで、これだけの差が開いてしまうわけだ。実力だけで稼げる世界ではないのである。史郎氏がジムをつくっていたところで、ここまで稼ぐことはできなかっただろう。

 ちなみに、亀田の所属する協栄ジムは、古くからTBSがバックアップしている。そのため、協栄所属の世界チャンピオン、たとえば、具志堅用高や鬼塚勝也は、基本的にTBSの番組にしか出なかった。

 ところが、亀田は、TBS以外の番組にも頻繁に出演するという異例の存在。これは父親の史郎氏が、マネージャーとして息子の権利をがっちり囲っているためだ。史郎氏は、亀田のボクシング以外のマネージメントを、ジムではなく、別会社に委ねている。この会社を通して、CM契約やタレント的活動、各種権利管理を行っているため、ジムの事情に制約されることなく、亀田家の思惑に沿って活動できるわけだ。

 これまでの選手とは異なり、ジムには籍だけ置いて、独自の練習スタイルを守りつつも、大手ジムのプロモート力を存分に活用。その一方で、人気を支えているタレント的活動においては、ジムと一線を画してマネージメントを行う、亀田一家。このしたたかなスタイルこそ、大手ジム偏重の弊害が一因となり、ここのところ低迷を招いたボクシング界にとっては、ちょこっとした革命だったのかもしれない。
(羽田譲治+編集部)

最終更新:2013/02/12 11:37
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