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中野サンプラザライブレポート

あかりん脱退、そして5人が残った!「Z」に改名して国難に立ち上がるももいろクローバー

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 思いもかけないことが起き、昨日までとは世界が変わってしまうことがあるとすれば、規模は違えど、東日本大震災と早見あかりの脱退は、それぞれが価値観と日常を一変させる大事件であるはずだ。

 震災以前に「4.10 中野サンプラザ大会 ももクロ春の一大事~眩しさの中に君がいた~」は、1月16日にららぽーと柏の葉にてももいろクローバーからの脱退を発表した早見あかりのFINALライブとしても準備が進んでいた。その時点で第一部と早見あかりに焦点を当てた第二部とでまったく異なる内容になることは決まっていたが、3月11日に東北太平洋沖地震が発生したあとは、第一部にはまた違った意味が生まれたようだ。

 リーダーの百田夏菜子は第一部開演前の囲み取材で「地震が起きたあとで私たちに何ができるのかと考えたときに、ライブを全力でやって、ひとりでも多く、たくさんの方を笑顔にすることだと思いました。2,200人すべてのファンの方を笑顔にできたらいいなと思います。それと、やっぱりあかりん(早見あかり)のFINALなので、誰の心にも、いつ振り返っても、すごくいい思い出として残るような、歴史に残るようなライブになればいいなと思います」と答えた。

 この4月10日のコンサートにふたつの大きなテーマがあることはメンバーも自覚していた。

 舞台は中野サンプラザホール。非常灯など照明を極力落とした「節電コンサート」である。東北太平洋沖地震からギリギリ一カ月が経過していないというタイミングであり、諸事情に配慮した結果だった。

 プロレスか格闘技イベントのようなオープニングの「煽りVTR」は明確に震災からの復興を志したもの。ステージの背景に掲げられたクローバーロゴのフラッグには「強いニッポン 未来へススメ!」の文字が掲げられ、ファンの寄せ書きがびっしりと書き込まれていた。

 第一部「ももクロ☆オールスターズ2011」は、いつものイントロダクションBGMが流れないイレギュラーな導入。「ももクロ流。」「今、ももクロにできること。」「全力のパフォーマンス。」「ももクロとしての使命。」──次々と放たれるメッセージは、いつもももクロがステージで心がけていることが、この非常時にあたり、被災した日本を励ます意味に転化したことを表している。

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 会場では生写真を販売し、その収益は義捐金に向けられた。チャリティーである。第一部のコンセプトが復興支援にあることははっきりしていた。先日のサッカー日本代表対Jリーグ選抜でスーパーゴールを決め、”カズダンス”を踊った三浦知良にも似たマインド。それがこの日第一部のももクロだった。

 サブカルチャー路線の武者修行で厚みを増したももクロのパフォーマンスは、第一部にかぎっては「プロレス」「笑い」「元気」に集約されていた。それでいて歌と踊り、サービス精神はこれまでの集大成。何百回何千回と繰り返してきた練度に、復興という別種のモチベーションが加わり、6人編成ももいろクローバーの総決算にして最高到達点とでも言うべき完成度の高い、力のみなぎるコンサートとなった。

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 マスクを被り、フォーク、一斗缶、チェーン、竹刀、タライ、パイプ椅子といった凶器を携えたプロレスラー姿で登場したメンバーたち。そのままの扮装で暴れまわり、制止に入った(?)同じくマスクを被った私立恵比寿中学の12人を蹴散らすと一曲めの『ピンキージョーンズ』に突入。ようやくマスクを脱いだ二曲めの『キミとセカイ』を歌い終えるとこの日一回めのMCに入った。「きょうは海外から苦情が来るくらい日本を明るくする」という高城れにのひとことも頓智が効いている!?

 中盤ではメンバー6人がそれぞれ異なるコンセプトのソロ曲を披露。中でもラストを締めたあーりんこと佐々木彩夏の『だって あーりんなんだもーん☆』はいろいろな意味で問題作だった。昭和のビッグアイドルへのオマージュかと思わせる謎のイントロ、途中で脱ぎだしていきなり空気がピンク色になってしまうセクシーさ、自己紹介MCの入れ込みなど、アヴァンギャルドな構造で客席を仰け反らせていた。

 つづけて、限定ユニットの「マス寿司三人前」(有安杏果&玉井詩織&高城れに)によるフィンガー5のカバー、同じく限定ユニットでふたりが延々と喧嘩を続ける「デコまゆ」(百田夏菜子&早見あかり)の熱演があった。さらに12人編成によるフォーメーションプレーが光る妹分の恵比中までもが登場し、会場を盛り上げる。

 その後、インターミッションとしておこなわれたプロレス番組ふうの控え室中継では、レスラーさながら、アナウンサーに不機嫌な対応。試合前の緊張感を模した演技で笑いをとった。

 最後のアンコール三曲は、期せずしてメッセージソングとなった『未来へススメ!』『走れ!』『ツヨクツヨク』。もとより応援歌的な性質のナンバーだったが、震災後というシチュエーションでは、立ち直ろうとする日本への応援歌として特別に響く。

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 そしてももクロのメンバーは、彼女らをダンサーなど様々な役割でサポートした恵比中メンバーとともに挨拶をし、第一部は終わった。

 つづく第二部「早見あかりFINAL そして…」は、もちろんこの日限りでももクロを脱退する早見あかりをメインに据えたコンサートとなった。

 日の出の勢いにあるアイドルグループからサブリーダーが抜けるという事態も、そうそうあることではない。当の早見あかりは開演前の囲み取材で現在の気持ちを訊かれ、こう答えていた。

「正直、きょうで自分がFINALだということに実感がないのがほんとうのところなんですけど、でも、時間は停まってくれない。ももクロとして私がステージに上がれるのはきょうが最後。すごいがんばります! と言いたいんですけど、がんばります! と力み過ぎると自分にプレッシャーをかけてしまうので、最後なんだから全力で楽しむしかないなと思って。メンバーとも昨日メールで全力で楽しもうねと約束したので、とにかく楽しんでライブをやりたいと思います」

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 ソロ、変則ユニット、恵比中のナンバーが多かった第一部に比べると、第二部は、セットリストそのものは非常にオーソドックス。数曲ごとにMCを入れ、つなぎVを挟んで衣装をチェンジし、次々に代表曲をこなしていく。『ミライボウル』から三曲で着用した学ランふうの衣装は早見あかりがデザインしたものだった。昨年暮れの日本青年館公演で衣装を自分たちで考えていいと言われ、アイデアを出した思い出の品。体が大きい早見あかりにとっては、フリフリの衣装よりもよく似合うと評判だった。

 プロレスLOVEのポーズを引用した『Chai Maxx』では、なんと間奏部分で本物の武藤敬司が登場! 第一部で同曲を演じた際には、武藤敬司のものまねで有名な神奈月のみがゲスト出演していただけに、この第二部で神奈月+本物の武藤敬司とパワーアップしたことは、まさに予想外。ファンは度肝を抜かれていた。

 14曲めの『オレンジノート』を歌い終えると、FINALセレモニーの時間がやってきた。第二部の始まりに円陣を組んだときから泣いていたももクロが、再び涙ながらにマイクを握る。5人のメンバーが早見あかりへの思いを語り、早見あかりが5人のメンバーへの思いを語るうち、メンバー全員の人となりが浮かび上がっていく。それはドキュメンタリーのようだった。

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 1月16日に柏の葉で脱退を発表したその帰路、百田夏菜子と早見あかりは、それまでにないというくらいに本音をぶつけ合った。百田夏菜子ははっきりとした言及を避けていたが、開口一番、ふざけるなという意味の強い言葉を浴びせられた、そんな車中の会話があったことを、早見あかりは振り返る。しかしそれほどまでに緊迫したやりとりがあっても、早見あかりが「もし私がももクロを辞めても親友でいてくれるよね」と言うと、百田夏菜子は笑顔で「当たり前じゃん」と答えたのだという。

 お互いを思い遣るエピソードが5通りあることを確かめると第二部はつつがなく進み、「自分で決めたことなのに、ももクロを去りたくない自分もいます」という早見あかりにも終わりの時が来る。

 去り際に、早見あかりはファンに向かって静かにするよう求めると、広いホールにもかかわらず、マイクなしで肉声を張り上げた。

「みなさーん! いままでほんとうに!! ありがとうございましたー!!!」

 それが最後だった。

 そしてメンバー全員がステージを退いたあと、水木一郎らしき声が「ゼェエーット!」と絶叫。場内のオーディエンスがいっせいにどよめいた。そのZの意味とは──。

 この日を最後に早見あかりはももいろクローバーを脱退し、女優への路を歩き出す。残った5人はメンバーを補充せず「ももいろクローバーZ」と改名して活動を続行することを決めた。紅白歌合戦に出場したももクロZを、大女優となった早見あかりが審査する。それが彼女たちの未来予想図だ。

 ももクロZのプレスリリースにはこんなキャッチコピーがある。

「救え週末! 守れ笑顔!! 行け、超えろ、試練!!! ももいろクローバーZ!!!!」

 そしてそのヘッドコピーにつづくボディコピー、最後の一行は次のようになっていた。

「ももいろクローバーZは歌とダンスを武器に日本中を笑顔にするため全力で戦うのだ!!」

 早見あかりの脱退というグループの危機と東日本大震災という国土の危機を乗り越えるべく生まれ変わったももいろクローバーZ。週末ヒロインにして救国ヒロインが誕生した。
(取材・文=後藤勝)

※第二部で『行くぜっ!怪盗少女』の一部を援用し、早見あかりにその存在を一切知らせぬまま贈られたサプライズ曲『あかりんへ贈る歌』が完全予約限定販売決定。4月24日(日)23時59分受付終了。詳細はKing Records e-shopまで。なお収益の一部は東日本大震災の被災地、被災者への義捐金として寄付される。

<セットリスト>
第一部
01. ピンキージョーンズ
02. キミとセカイ
03. Believe
04. ミライボウル
05. 全力少女
06. ありがとうのプレゼント【有安杏果】
07. …愛ですか?【玉井詩織】
08. 恋は暴れ鬼太鼓【高城れに】
09. 太陽とえくぼ【百田夏菜子】
10. fall into me【早見あかり】
11. だって あーりんなんだもーん☆【佐々木彩夏】
12. 恋のダイヤル6700【マス寿司三人前(有安杏果&玉井詩織&高城れに)】
13. デコまゆ 炎の最終決戦【デコまゆ(百田夏菜子&早見あかり)】
<ebiture>
14. チャイム!【私立恵比寿中学】
15. ザ・ティッシュ~とまらない青春~【私立恵比寿中学】
16. Chai Maxx
17. 行くぜっ!怪盗少女
18. オレンジノート
~ENCORE~
19. 未来へススメ!
20. 走れ!
21. ツヨクツヨク
第二部
00. ももいろクローバー参上!!
01. ももいろパンチ
02. 全力少女
03. ココ☆ナツ
04. words of the mind 〜brandnew journey〜
05. きみゆき
06. ピンキージョーンズ
07. ミライボウル
08. Believe
09. 気分はSuper Girl
10. 走れ!
11. キミとセカイ
12. Chai Maxx
13. 未来へススメ!
14. オレンジノート
15. あかりんへ贈る歌
16. 行くぜっ!怪盗少女
~ENCORE~
17. ツヨクツヨク
18. あの空へ向かって

未来へススメ!

進もう。

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最終更新:2013/09/17 20:11
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