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【沈黙する、もうひとつの発電所事故】前編

「原油の流出なんて気にしている場合じゃない!?」福島・原町火力発電所原油流出事故

haramachikahatsu0001.jpg破壊された原町火発の施設と、油をかぶって真っ黒になった消波ブロック。

 写真週刊誌「FLASH」(光文社)6月7日号に「福島県で第二の海水汚染……火力発電所から重油が海に漏れている!」と題された記事が掲載された。この記事は東北電力原町火力発電所で起きた原油流出事故を取材した筆者によるものだが、「FLASH」に掲載しきれなかった裏側をリポートしたい。

 発端は、当サイトに掲載された私の記事を読んだ方からのメールだった。

「南相馬市にある原町火力発電所の重油が大量に流出しています」

 宮城や福島の沿岸部を何度か訪れて被害の大きさを目撃してきた経験から、無視できない情報だと思った。これまでにデマや飛ばしとしか思えないメールを受け取ることもあったが、今回はあながちウソではないと思ったのだ。海沿いの施設は規模の大小にかかわらず軒並み津波で破壊されており、引き波で海中に持っていかれてしまったケースも無数にある。その中には、ガソリンを満載したタンクローリーや排泄物ごと流された浄水施設もある。それらは、有害物質を多分に含んだ状態で海中に沈んでいることになるだろう。その中に火力発電所の燃料として使われていた重油が含まれていても何の不思議もない。むしろ、それぐらいの被害は起こり得るだろうと容易に推測できた。詳しい話を聞くため、メールを送ってくれたフリーカメラマンの工藤大介氏とコンタクトを取ることにした。

 工藤氏の話によると、3月20日ごろ、福島県南相馬市にボランティアとして訪れたときに異臭がしたことがきっかけだったそうだ。

「海岸沿いに重油のにおいが立ち込めていたんです。それで気になって地図を見たら、その海岸の数キロ先に発電所があったんです」

 この発電所こそ、東北電力原町火力発電所だったのだ。工藤氏は火力発電所を目指して車を走らせたが、県道74号、260号線がそれぞれ地震の影響で陥没していたため、たどり着けなかったそうだ。それから約1カ月後の4月末にも再び現地入りしたが、そのときもまだ油臭さが漂っていたという。

 工藤氏からは、そのとき撮影した発電所の写真も送られてきた。写真には大破した2基のタンクが写っており、これほどの被害を出した原町火力発電所に関する報道が皆無だったことに、私は違和感をぬぐえなかった。

 厳密に言えば、原町火力発電所についての報道はあった。震災発生直後の3月14日に「重油タンクが爆発炎上し火災が発生」とのニュースがあったが、その直後に福島県が「原町火力発電所の火災はクレーン車が燃えただけ」と訂正を発表しただけにとどまった。

 このことを「FLASH」編集部の担当者に伝えると、「取材してきてほしい」と返事があった。同時に「事実かどうかの裏を取ってきてください。それができなければ記事にはできません」とも伝えられたため、私は急いで準備を整え、福島県南相馬市へと車を走らせることとなった。

 原町火力発電所は福島県南相馬市の中部にあり、東京電力の福島第一原発からおよそ25キロ北の距離に位置している。福島市から国道115号線を抜けて海方面に向かい、発電所の南側、原町区北泉の海浜総合公園に車を止めて、夏には海水浴場として使われる砂浜を歩いていく。震災からおよそ2カ月が経過しようとしているのにもかかわらず、海辺一帯はいまだに「油」のにおいが消えていなかった。

haramachikahatsu0002.jpg総出力200万kWを誇った原町火発。周囲には油臭がたちこめていた。

 1キロほど手前から発電所に向かって歩いていくと、容量9,800キロリットルの重油タンク2基から流出したと思われる大量の重油が黒い液体となって広がっているのが確認できた。

haramachikahatsu0003.jpg被害に遭ったタンク。奥に見える1基は原形をとどめていない。

 火力発電所周辺にめぐらされた防波堤の岸壁からは、石炭を搭載した大型のタンカーが座礁している様子が見えた。そのタンカーを横目に進んでいくと海中に防油フェンスが申し訳程度に張られているのが見えたが、その内側に油膜はとどまっていなかった。

 防波堤の海側壁面やテトラポッドには黒い液体がべったりとこびりついており、外洋に面した岸壁に向けて流れ出していったと思われる重油の黒い痕跡も見て取れた。

 火力発電所の敷地周辺は、さらにひどく油臭さが立ち込めていた。施設内には砂にオガクズを混ぜたような物が道沿いに積まれている。おそらく、流出した重油を吸わせて処理しているのだろう。その砂を詰め込んでいると思われるドラム缶も数多く並べられている。

 5月に入ってまでこのような撤去作業が行われていた理由としては、福島第一原発から半径20~30キロ圏内で屋内退避勧告がなされていたことが考えられる。この勧告が緩和されたことで、ようやく発電所の職員たちが施設内に立ち入れるようになったのだ。私が取材に訪れたときも、すでに火力発電所周辺の家屋に一部の住民たちが戻ってきていた。そこで、原油流出について知っているかどうかを中心に話を聞いてみることにした。

 発電所周辺に人がいるのか心配だったが、車を走らせてみると、時折歩いている人を見掛ける。避難指示区域の近くとはいえ、人は住んでいるようだ。なるべく警戒されないように、努めて明るくあいさつをしてから「東京から取材にきたんですが、お話しを聞かせてもらえませんか」と切り出すと、どの人も気さくに取材に応じてくれた。

「この辺りの港は船も全部流されたからな。(発電所の)北も南もやられちまった。海沿いに住んでいた漁師たちもみんな避難しちまったし、いま別に問題にするような人もいないんじゃないかな」(原町区60代男性)

「自宅で暮らしている人たちはスーパーも開いていないような状況の中で生きるのに必死。原油の流出があったとしても、それを気にしている場合じゃない」(南相馬市20代男性)

「今は何があっても南相馬で暮らそうと思っている。とにかく放射能が気になるから、どうしてもそっちにばかり目がいってしまうよ。原油流出なんて聞いたこともないしね。それよりも目に見えない放射能の方が怖い」(60代女性)

 結局、どの人も「知らない」とのことで大きな進展はなかった。だが、地元の人ですら原油流出を知らないということは、この件がまったく報道されていないことの裏付けでもある。原町火力発電所の原油流出の現状の一端を確認できた私は、事実関係の確認のため関係者への直接取材を開始することにした。
後編へつづく/取材・文=丸山ゴンザレス/http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/

海の色が語る地球環境

本当に心配。

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最終更新:2013/09/12 21:46

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