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【震災3カ月】被災地から上京した被災者の違和感「まだ、明日の生活も見えないよ」

shinjuku_hangenpatsu001.jpg反原発運動が盛り上がる東京を、被災者はどう見ているか。

 JR東日本は、被災地復興に向けた取り組みの一環として東京~仙台間の新幹線料金の値引き率を50%に設定した「やまびこ自由席片道きっぷ」を販売。これにより所要時間が約2時間程度、価格にして5,000円で首都圏と被災地が結ばれることとなった(この切符の販売期間は6月13日まで)。

 震災発生直後に比べれば飛躍的に便利に往復できるようになったため、5月の連休以降には多くの人々が被災地入りしてボランティア活動や被災地観光をすることとなった。さらに現在では、被災地から東京に来る人も増えている。

 宮城県石巻市から友人に会うために東京を訪れた30代の男性Aさんは、「なんていうか、震災の爪あとのようなものは、まったく感じなかったね。東京の人たちはテレビで見ただけだから徐々に記憶が薄れていくのかもしれない。でも、実際に自分の目で見た僕たちは忘れたくても忘れられないよ」と都内では震災の影響を見出すことができなかったと話す。一方でAさんは「震災の記憶を忘れてほしくはないけど、震災だけに縛られてもね」とも語り、別段気にした素振りもなかった。

 それというのも今回の上京は友達に会うだけでなく、自分自身の息抜きをすることも目的の一つなのだという。

「地元は少しずつ落ち着きが戻ってきたけど、どうしても遊ぶところがないんだよね。僕たちも震災にあう前は普通に遊んできたわけだし、我慢も限界でさ。今なら片道5,000円で東京に行けるし、とにかく楽しいことがしたかった」

 交通機関が発達した現代では、仙台と東京の距離は近いものといえるだろう。Aさんの気持ちは容易に理解できる。新幹線が復旧したいま、彼らにずっと地元で待機していろとは言えない。

 仙台市の沿岸部に住む40代のBさんは、東京の取引先に挨拶をするために上京した時「出会った人に宮城から来たと言うと、被害のことばかり聞かれるので、それには疲れたかな」と語る。Bさんの気疲れの原因は、被害の程度が軽かったことにあるという。自宅は若干のダメージを受けたが、津波の被害もなく家族も全員無事だったそうだ。

「みんな心配してくれるけど、私は全然苦労していないから、かえって申し訳ない気持ちになるよ。馬鹿げた考えだけど、自宅でも半壊していてくれたら話しやすかったかな……なんて思ったりするよ」

 Bさんは「東京」そのものに違和感を抱くことはなかったという。そして東京と被災地の間での温度差については「東京の人は気にし過ぎじゃないかな。東京が元気であれば日本の将来に希望がもてるので、むしろ安心した」と語る。

 一方でAさんやBさんのみならず、東京に来た被災地の人々が共通して語るのが「地元から出て行くときの地域の目に、必ずしも好意的でない雰囲気がある」ということだ。Bさんのように仕事ならまだしも、遊びや息抜きでの上京は口に出せない「自粛ムード」があるのだという。

 被災地には家族や家、学校や仕事を失った人が数多くいる。それだけに生き残った人たちが遊ぶなど論外で「喪に服すべき」と考える人もいる。そのため地元を離れることすらはばかられる空気が立ち込めている。このことは、私も取材をしていく中で、AさんBさん以外からも複数の意見として耳にした。

 さらに、被災地に暮らす人との温度差は、東京と比較した場合だけでなく、ネットの世界でも生じている。

 140文字の短文を発信できるTwitterは、震災発生当初から使用されてきた。携帯電話が使えなかったために、情報やメッセージをやりとりする手段として急速に認知度を高めたツールだ。その結果、被災地と東京などのそれ以外の地域でのコミュニケーションの手段にもなり、2カ月以上が経過した現在でもその形は受け継がれている。

「Twitterでのやりとりで違和感があるのは、原発問題かな」

 そう語るのは宮城県の沿岸部で被災したCさん、32歳だ。彼は避難所で暮らしている時から携帯電話でTwitterにアクセスしていた。Cさんの言う「原発問題に関する違和感」とは何なのだろうか。

「原発と地震の被害を同一視している人が意外に多くて。なかには、『地震は一回だからいいけど、原発は何年も引きずるんだよね』と、私に言ってくる人もいた。それは十分に分かっている。だけど、こっちはその一回のおかげで明日の生活が見えない。震災から3カ月たったけど、まだ何も変わってない。そんな状況を分かってないのは仕方ないと思う。だけど、わざわざ言うべきことではないと思う」

 Cさんによれば、この人は特に変わった人ではないと思うとのこと。実際、その発言をした人物の普段のツイートを見てみたが、バランス感覚が悪い人だとは思えなかった。もちろん、東京などの首都圏やそれ以西に住む人間たちにとって普段の生活に戻ることは重要だ。しかし、便利になったネットツールは、我々と被災者との温度差がダイレクトに伝わってしまうことも忘れないでおきたいものだ。一方で悲惨な記憶を消し去るには、新しい記憶で上書きする方法しかない。生き残って動ける人たちのためにも震災後の間違った自粛ムードや行動を規制するような空気を払拭して、日本全体で明るい空気をつくる努力をしていく必要があるだろう。
(取材・文=丸山ゴンザレス/http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/

岩手日報社 特別報道写真集 平成の三陸大津波 東日本大震災 岩手の記録

日本の”震災後”は、まだ始まったばかり。

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最終更新:2013/09/12 20:56
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