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閉塞感漂う仮設住宅に革新! ”これから”を見据えた『木造仮設住宅群』

mokuzokasetsu.jpg『木造仮設住宅群 3.11から
はじまったある建築の記録』
(ポット出版)

 雪が降りつもる東北地方のプレハブ住宅で新しい年を迎える被災者の様子が、年末年始にかけてテレビ各局で放送されていた。震災から10カ月、いまだ復興の足取りは鈍く、沿岸地域に明かりの灯る家は少ない。東日本大震災で建設された仮設住宅はおよそ7万戸。被災地が広範におよんだこと、津波によって流された家が多かったことなどから、その建設数も前代未聞の数字となった。そんな仮設住宅に対して、今回の震災では新たな試みがなされている。『木造仮設住宅群 3.11からはじまったある建築の記録』(ポット出版)は、前例のない木造による仮設住宅の建設に挑んだ記録である。

 木造仮設住宅の建設に取り組み、この本を上梓したのは福島県会津地方に本社を置く建築事務所「はりゅうウッドスタジオ」。本書には、福島県に建設された史上初の木造ログハウスによる仮設建設の様子や、その具体的な工法とともに、そこに住む人々の写真が多数収められている。

 震災直後から仮設住宅建設は急ピッチ進められたものの、前例のない需要量はプレハブ住宅の供給量をはるかにオーバーしていた。そこで注目されたのが、木造による仮設住宅。建築費用はおよそ400万円と、プレハブ仮設住宅の300万円に対して割高であるように見えるが、プレハブ仮設がリースであるのに対して、木造仮設は買い取りとなる。つまり、被災者が仮設から別の場所に移ったら、コテージや簡易宿泊所として転用したり、解体して「復興住宅」のための建材としてリサイクルをすることもできるのだ。さらに、使用した木材は福島県産のスギ材が使用されており、震災によって危機的な痛手を負った地場産業の活性化という意味でも効果を発揮する。

 仮設住宅は一時避難場所としての住居であり、原則として使用期間は2年間と定められている。だが、入居者の状況によって期間は延長され、1995年に発生した阪神大震災の際は、最長で5年もの間を仮設住宅で過ごした被災者もいた。今回の震災で、福島県はいつ収束するともしれない原子力災害に見舞われており、被災者が仮設住宅を出られるめども立っていない。

 プレハブ住宅は遮音性が低く、外や近隣住民の物音が筒抜けとなってしまうことが以前から問題視されていた。また、夏は暑く冬は寒いという居住性は、一般の住宅に比べて快適とはいえない。そんな問題点を抱えた仮設住宅で長期間避難生活をすることは、被災者にとって少なからぬストレスとなるだろう。プレハブに比べ、居住性の面で圧倒的に優れた木造仮設住宅は、先の見えない日々を送る被災者たちに安心感を与えてくれる。木材の温もりが伝わってくるような杉板張りの内装や、そこに生活する人々の明るい表情、本書に掲載された仮設住宅の写真を見ていると、思わずここに住んでみたいという気持ちにすらなってしまう。

■畑がある仮設住宅

 仮設住宅をつくることは、新しい街をつくることでもある。本書には、その町づくりに対する工夫も記されている。

 東日本大震災における仮設住宅の建設の際に重要視されたのがコミュニティー機能だった。阪神大震災発生時は、「地域コミュニティー」という感覚が乏しく、仮設住宅で新たな人間関係をつくりなおさなければならない被災者が続出。そのため、新たなコミュニティーからこぼれ落ちた老人たちの孤独死が発生し、社会問題にまで発展した。震災前と同じコミュニティーを維持しての避難生活や、そこでの人間関係の育成も仮設住宅に課せられた任務となった。

 「とりあえず住む」という機能面ばかりが重視されてきたこれまでの仮設住宅は、まるで高度経済成長期の公団住宅のように、画一的で表情がなく、閉塞感を感じさせるような住宅だった。今回、はりゅうウッドスタジオでは、木造仮設住宅を建設するにあたり、家の配置を意図的にずらすことによって、画一性をできるだけ回避した。また、菜園スペースや談話室などを設けることによって、住民たちの会話が生まれるような仕組みもつくられている。

「仮設住宅に住む人々が建物をどう受け止めていくとしても、避難したすべての人々の生活が前向きなものでなくてはならず、避難している今現在の生活を容認することから、新しく復興が始まると思う」

本書のあとがきで、木造仮設住宅を設計したはりゅうウッドスタジオの芳賀沼整氏はこう語る。数年、あるいは数十年の単位によって行われる復興計画。一時的な避難場所としてではなく、「これから」に向けた第一歩として木造仮設住宅を建設することは、震災後の社会をつくる第一歩にもつながることだろう。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

木造仮設住宅群 3.11からはじまったある建築の記録

アイデアつまってます。

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最終更新:2013/09/09 20:17

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