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シャープ、サムスンからの出資は焼け石に水?目前に迫る社債償還という危機と、両社の思惑

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シャープ、サムスンからの出資は焼け石に水?目前に迫る社債償還という危機と、両社の思惑 – Business Journal(3月15日)

シャープ本社
(「Wikipedia」より)

 テレビ製造事業の不振で経営再建中のシャープは、事業パートナーを台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業から韓国のサムスン電子に乗り換えた。背中を押したのは米アップルの失速という“アップルショック”だった。

 シャープは3月6日、サムスン電子と資本提携すると発表した。サムスンの日本法人、サムスン電子ジャパン(東京・千代田)を引き受け先とする第三者割当増資を実施し、1株290円で発行済み株式の3.04%に当たる103億円の出資を受ける。サムスンは第5位の株主になり、シャープはサムスンに液晶パネルを安定供給する。

 シャープとサムスンは、長年ライバル関係にあった。液晶テレビで張り合ってきただけではない。シャープはサムスンと特許訴訟を含めて激しくぶつかり合う米アップル陣営に加わっているからだ。シャープが出資交渉を続けてきた鴻海精密工業は米アップル製品の組み立てで急成長した企業。郭台銘会長自身、シャープに「打倒サムスン」での共闘を呼びかけ、12年3月、シャープと資本・業務提携で合意した。

 アップル陣営に加わったシャープが、経営再建の柱に据えたのがスマートフォン(スマホ=高機能携帯電話)やタブレット端末向けの中小型液晶パネル事業だった。社運を賭けて開発された酸化物半導体IGZOの技術を採用した高精密の液晶パネルが切り札である。

 亀山第1工場は、アップルが1000億円を負担して設備を増強したアップル専用工場。生産品目はiPhone 5用のパネルのみだ。亀山第2工場でアップルの第4世代iPad向けの液晶パネルを製造している。シャープは“アップル経済圏”に加わり、息を吹き返すとみられていた。

 ところが、高い成長を続けてきたアップルが失速した。12年9月に発売した看板商品の新型スマホ、iPhone 5の販売で苦戦した。iPhone 5の出荷台数は、発売直後の10~12月の3カ月間で4500万台と推定されている。しかし13年1~3月は2500~2800万台と、半年もたたないうちに40%も減る可能性が出てきた。

 先進国のスマホ需要が一服。新興国や途上国が主戦場となり、売れ筋も低価格機種に移ってきた。先進国、高価格モデルのアップル製品は伸び悩んだ。これに対してサムスンは高価格から中・低価格帯の機種までの幅広い品揃えで、新興国市場を開拓してきた。

 アップルの失速は、シャープの再建計画を根底から崩した。12年12月、亀山第2工場のiPad用パネルの生産を停止した。亀山第2工場の稼働率は下期に50%を計画していたが大口顧客のアップル向けの出荷が止まり、稼働率は損益分岐点を下回る30%程度にまで落ちる。13年2月末には、亀山第1工場でiPhone 5用の原材料搬入が止まった。アップル専用工場のパネル生産が停止するのは時間の問題となった。

 絶体絶命のピンチに立たされたシャープを取り込むチャンスと判断したのが、アップルと敵対しているサムスンだった。サムスンは薄型テレビやスマホでは独り勝ちの状態だが、液晶ディスプレー事業がアキレス腱だ。

 サムスンのライバル企業、韓国LGディスプレーは12年、液晶ディスプレー生産でサムスンを抜いて世界1位の座に躍り出た。LGエレクトロニクスは、次世代の有機発光ダイオード(OLED)テレビの販売でサムスンをしのいでいる。サムスンはOLEDの技術にディスプレー事業の将来を託している感がある。

 サムスンがOLEDテレビの生産で苦戦に陥っているのは、大型ディスプレーの生産の歩留まりが低いためだ。そこでシャープの中小型高精密液晶パネルの技術を取り込んで、液晶パネル事業でLGエレクトロニクスに追いつくことを狙っている。しかし、シャープへの出資が明らかになり、ソウル株式市場でサムスンの株価が下落。「シャープに出資しても、サムスンはディスプレー事業の出遅れを挽回できないだろう」と、投資家が判断したためだといわれている。

 アップル向け液晶パネルが失速したため、シャープも頼る先はサムスンしかなくなった。アップル向けの穴を埋めるために亀山第2工場で受注したのが、サムスンの32型テレビ用パネルだった事実がこれを物語る。亀山第2工場だけでない。鴻海精密工業との合弁事業となった、大型パネルを製造する堺工場も、今やサムスン頼みなのだ。堺工場の液晶パネルの半分をシャープが引き取るが、その大半がサムスンの40型と60型のテレビ向けで、残りを自社テレビの「アクオス」に振り向けている。

 一方で12年3月、巨額赤字に陥ったシャープは、鴻海グループから669億円の出資(1株550円で9.9%相当)を受けることで基本合意。13年3月26日が払い込み期限だった。

 液晶パネルの製造拠点である堺工場は鴻海との合弁会社に衣替えしたが、シャープの株価が一時、142円まで下落したため、鴻海は出資条件の見直しを求めてきた。だが、シャープは首を縦に振らなかった。このため、鴻海のシャープに対する熱意は完全に冷え込んだ。鴻海は期限内の出資を見送る。

 シャープが現在策定中の中期計画は、鴻海からの出資を前提としないかたちで進んでいる。13年度から3年間の次期中期経営計画で、15年度の連結売上高の目標を3兆円超とする方向だ。もし、3兆円を回復すれば、10年度以来となる。資本・業務提携したサムスン電子など液晶パネルの安定供給先を確保したうえで、冷蔵庫など白物家電と複写機の販売の拡大を図る。

 しかし、事業パートナーを鴻海からサムスンにくら替えしても、シャープの危機は基本的に変わらない。13年9月に、2000億円の新株予約権付社債(転換社債=CB)の償還を控えている。サムスンが出資する103億円程度では焼け石に水。出資したという、象徴的な意味しかない。

 シャープは転換社債の償還資金確保のため、1000億円の公募増資の計画をまとめた。残る1000億円は、液晶パネルの販売増などで手元資金を積み上げるつもりだ。だが主力取引行の、みずほコーポレート銀行三菱東京UFJ銀行は、公募増資は実現可能性が低いと難色を示し、計画の練り直しを求めている。シャープの企業格付けは既に投機的な水準まで引き下げられており、社債などを発行することができなくなっている。そこで公募増資に活路を求めたわけだが、危機的状況にあるシャープの公募増資が成功する確率は極めて低いからである。もし強行した場合、1000億円を調達するためには、かなりの新株を発行しなければならず、1株当たりの利益は一層、少なくなる。利益の希薄化である。これが株価の下落の要因になるのは間違いない。

 だから、メインバンク2行も、株式市場からの資金調達に難色を示しているわけだ。資金繰りの綱渡りが続く中、シャープの生殺与奪権は主力行が握っているということになる。

 サムスン電子と提携しても、シャープが生き残れる保証はどこにもない。
(文=編集部)

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最終更新:2013/03/16 07:00

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