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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

忘れられない苦しさと、忘れようとする苦しさ――帰る場所はどこにあるのか?『いつ恋』第6話

itsukoi0224.jpgフジテレビ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』

 ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の第6話は、回想の場面から始まる。音(有村架純)が幼い頃、公園で母(満島ひかり)と遊んでいた日の思い出だ。「恋って何?」と訊ねる音に、母はこう答える。

「せやなあ。お母さんが思うのは、帰るとこ」
「おうちもなくなって、お仕事もなくなって、どこも行くとこなくなった人の、帰るとこ」

 第5話までで東日本大震災の前日を描いたこの作品は、第6話になって5年後へと舞台を移す。音はまだ東京にいる。彼女だけではない、練(高良健吾)も、木穂子(高畑充希)も、朝陽(西島隆弘)も、小夏(森川葵)も、晴太(坂口健太郎)もまた、東京にいる。あれから5年がたった今でも、彼ら彼女らは第5話までと同様、まだ帰る場所を探している。

 第5話までと第6話からの変化を象徴しているのが朝陽だ。介護施設の現場で働いていた彼は、今は本社に戻り、音と付き合っている。一見すると第5話までと同じような優しい笑顔を音には見せているが、ところどころに違和感がある。たとえば、現場の窮状を訴える部下に対して「だめなときは、だめなもんだからね」と突き放す様子は、これまでの朝陽とはどこか違っている。

 あるいは、高級レストランで音と二人で食事をする場面。「ファミレスでいいのに」と言う音に対して、これぐらいのお店で食事することは「普通だよ」と朝陽は言う。また、その日に帰宅してパーティーに出かけようと音を誘う朝陽は「音ちゃんの年なら、普通なんだよ」と声をかける。朝陽は気づいていないかもしれないが、これは第2話の「今はどこの従業員も自腹だよ」や「みんな頑張ってるしワガママ言わないよね」というセリフと同様、どこか圧力がある。少なくとも音には似つかわしくない言葉だし、朝陽はそういった考え方から逃れようとしていたのではなかったか。

 そして、朝陽は社長である父(小日向文世)から呼び出される。これまで父の右腕だった朝陽の兄が、もうついていけない、と異動願いを出したらしい。「弱いやつはだめだ」と言い放つ父は、明日から社長室に入るよう朝陽に命じる。「俺の跡を継ぐつもりでやれ」と。そして、続けて言う。

「お前ももう、30か。ついこの前、生まれたばかりなのにな」

 こう父から言われた朝陽は、怒ることなく、言い返すことなく、ただ黙って笑ってしまうのだった。心からうれしそうに。幼い子どもが父親から褒められたときに見せるような笑顔で。だから、朝陽が帰る場所、帰りたいと本心で願っている場所はここなのだ。愛人の息子として生まれ、父親から無視され、疎んじられて過ごしてきた朝陽が本当に欲しいものは、父親から認められることだった。それが朝陽の帰る場所なのだ。これまで朝陽の生き方を応援してきた私たちは、この場面でどうしようもなく切なくはなるが、彼の帰る場所は彼が決めるのだから仕方がない。


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