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『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第1話 あの号泣メ~ンがテレ東の深夜に帰ってきた!!

 クラブチッタに出演するために「SHO-GUNG」を再結成しようと鼻息荒く持ち掛けるIKKUに対し、「嫁がいるし、子どもも産まれるから」と辞退するTOM。このシーン、第1話の見どころです。『SR1』のラストのように熱いラップでTOMの心に呼び掛けるIKKU。まだ「SHO-GUNG」は一度もクラブデビューを果たしていない。『SR1』では公民館で曲を披露して大恥を掻き、『SR3』では野外フェスのステージに立ったものの、絶妙のタイミングでMIGHTYが騒ぎを起こしてライブは中断してしまった。一度でいいから、きちんとライブをやって、中途半端な青春にケジメをつけよう。それが連ドラ版『SR』のテーマだ。

 夢を見ている時間は楽しいけれど、ふと現実に立ち返ると帰り道がもうないことに気づいてしまう。夢を追い掛け続けることは両刃の剣のような恐ろしさがある。IKKUのラップに耳を塞さぎ、「もう地獄に戻さないでよ。この悪魔!」と罵るTOM。「もう終わったの、俺の青春。もう戻れないって、あの興奮」。普段はボケキャラのくせに「あっ、いま韻踏んだ」と冷静に指摘するIKKU。かくして、超かっこいいオープニング映像を挟んで、伝説のラップグループ「SHO-GUNG」は再始動することに。そして、一時期メンバーだったものの、姿を消したMIGHTYを探し出してクラブチッタのステージに立つことを2人のラッパーは目指す。

 ブロッコリー農家のMIGHTY宅を久しぶりに訪ねるIKKUとTOM。『SR3』で傷害事件を起こして刑務所送りとなったMIGHTYだが、実家のお母さんに聞くとすでに出所しており、今は青森県大間町にいるらしい。ずっと姿を見せない息子のことを心配するMIGHTYの母親から交通費5万円をちゃっかり預かって、MIGHTYを実家に連れ戻すことを請け負うIKKU。埼玉から東京には一度も上京したことのないIKKUとTOMだが、東京以外の地方へ出向く分にはフットワークが軽い。ヒッチハイクでうまいこと本州の最北端・大間に辿り着いたIKKUとTOMは地元名物のマグロ料理店でデブの運転手(皆川猿時)に睨まれ、海岸では青森弁の地元ギャル・トーコ(山本舞香)にいちゃもんを付けられ5,000円をカツアゲされるはめに。それでも、偶然入ったスナックでMIGHTYにばったり遭遇するという非常に都合のいい第1話の幕切れだった。

 3週間後に迫ったクラブチッタでのライブに間に合うよう、MIGHTYを連れ戻すことが超頼りないこの2人にできるのか。気性の荒いトラックの運転手と、スナックに通い詰めるメガネ中年(杉村蝉之介)から結婚を迫られているトーコを巻き込んで東北道を南下するロードムービーとなっていきそうだ。ちょっと気になるのは、一行は東北最大の都市・仙台で途中下車するかどうか。仙台は入江監督にとって、トラウマシティとして記憶されている街。『SR1』でブレークする前、長編デビュー作『ジャポニカ・ウイルス』(06)を完成させた入江監督は仙台の上映会でお披露目しているが、上映後の質疑応答の際に司会者と会場の観客たちから酷評されまくり、精神的にボコボコにされた体験がある。そのときの苦い記憶は『SR1』の公民館ライブでIKKUたちが吊るし上げられるシーンとして再現されており、いわば『SR』シリーズを生み出す原動力ともなった因縁の街である。「SHO-GUNG」のクラブチッタでのライブデビューはもちろん、入江監督が自分自身の20代の頃のトラウマにどうオトシマエを付けるかにも注目したい。
(文=長野辰次)

最終更新:2017/04/24 19:02
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