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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.453

エマ・ワトソン嬢による“人類補完計画”が発動!! 『ザ・サークル』は理想郷か、ブラック企業か?

エマ・ワトソン主演の企業サスペンス『ザ・サークル』。新入社員のメイはSNSをフル活用した理想の民主国家をつくろうとする。

 出会い系アプリで知り合った恋人にLINEで連絡し、食べログで人気のお店へ出掛ける。注文するのは、もちろんインスタ映えするメニューだ。自宅に戻ると、政治家や芸能人のTwitter発言がニュースとなって流れている。1日の終わりにFacebookの「いいね」の数を確認し、それから眠りに就く。SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)は、すっかり日常生活の中に溶け込んでいる。エマ・ワトソン主演映画『ザ・サークル』は新しいSNSを運営する巨大企業を舞台にした、極めて現実味のある近未来サスペンスだ。24時間ずっとSNSと繋がり続けることで、孤立化することなく、秘密を抱えて悩むこともない理想世界を築こうとする若き主人公の野心と挫折を描いた注目作となっている。

 本作の主人公であるメイ(エマ・ワトソン)が転職する先のIT企業「サークル」がすごい。若者たちが憧れる人気ベンチャー企業で、出来たばかりの本社はまるで大学のキャンパスのように緑豊かで広々としており、ガラス張りのオフィスはデザインも優れた快適空間そのもの。社員のことを「サークラー」と呼ぶ、とても自由な社風だ。社員食堂はGoogle社と同じく無料で食べ放題。週末には人気アーティストが出演するライブイベントやパーティーも開かれ、退屈する暇がまったくない。

 メイが入社してしばらくすると、創業者でありカリスマ経営者のベイリー(トム・ハンクス)が全社員を集めてのスピーチを行なう。「全人類がひとつに繋がる完全なる社会を目指そう」。ベイリーが熱く語る企業理念に、メイたち社員は惜しみない拍手を送る。サークル社は福利厚生も充実しており、メイだけでなくメイの両親にも医療保険が適応されるとのこと。そのお陰で、病気がちだったメイの父親は最新の治療を受けることができ、すっかり元気に。この世の理想郷のような最先端企業の一員になれたことが、メイにはとても誇らしかった。

 

モデルはアップル社のスティーブ・ジョブズと思われる、サークル社のカリスマ経営者ベイリー(トム・ハンクス)。

 ある日、メイはスピーチ中のベイリーから壇上に呼ばれ、新サービス〈シーチェンジ〉の体験モデルにならないかと持ち掛けられる。〈シーチェンジ〉とは超マイクロカメラを衣服に付けたり、お気に入りの場所に設置することで、その人の見る風景や体験を多くの人とリアルタイムでシェアできるというもの。メイは〈シーチェンジ〉の体験モデルになることに応じるだけでなく、「シーチェンジカメラを24時間身に付け、私の生活を完全に透明化します!」と高らかに宣言する。トイレ休憩とバスタイム以外はすべて可視化するというメイの大胆な言動はたちまち話題となり、メイは世界中で1,000万人のフォロワーを持つアイドル的存在となっていく。

 24時間オープンにし、プライベートをなくせば、ひとりでクヨクヨ悩まずとも気づいた誰かがすぐに励ましてくれる。秘密という概念そのものが消滅するため、犯罪も起きなくなる。自分が体験した感動を世界中の人たちと共有することができる。人類の祖であるアダムとイヴは、神に隠れてこっそりと知恵の実を食べたために楽園を追放されてしまったが、メイが実践するこの新しいライフスタイルが世界中に広まれば、人類は自分たちの手で新しい楽園を築くことができる。SFアニメ『新世紀エヴァンゲリヲン』(テレビ東京系)の中で提唱された“人類補完計画”のように、もう人類はそれぞれが孤独であることに悩み、罪の意識に苦しむこともなくなるはずだったが……。


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