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昼間たかしの100人にしかわからない本千冊 29冊目

いつまで同じことをいってるんだ? 労働時間短縮「目標」だけはバブル時代と同水準の残酷

※イメージ画像(「Thinkstock」より)

 昨年2月から始まったプレミアムフライデーって、どうなったんだろう?

 ちょうど最初のプレミアムフライデーの日は、某役所に取材にいっていた。話の合間に、今日は3時で上がりではないかと尋ねたところ「そんなわけないじゃないですか……」と苦笑。正直、プレミアムフライデーだと言って楽しんでいる人を、テレビの画面の中以外では見たことがない。世の中に実在しているか疑わしいものである。

 日々出会うのは、サービス残業で家にいるのは1日に数時間、もしくは寝ている時だけという人が当たり前だ。

 そうした人々と話をすると、バブル時代は給料も高いし、残業代は出るし、遊びの時間も目いっぱい取ることができるバラ色の過去に見えるようだ。

 でも、実態はまったく違っていた。給料・残業・労働時間と、それぞれ語るだけでトピックスが作れるが、今回は労働時間から。

 現在、日本の労働時間は実質年間2,000時間で推移している(「毎日新聞」2016年9月11日付)。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると現在、パートタイム労働者や短時間労働者以外の一般労働者の年間総労働時間は2,026時間(2015年)。これは1995年(2,038時間)と、ほぼ同水準。日本では、「長時間労働が当たり前」という風潮が、心と身体の隅々にまで行き渡っているのは、当然である。

 こうした風潮の中で、労働組合などが一つの目標として掲げる短縮目標は、年間1,800時間。けれども、プレミアムフライデーが画に描いた餅となっているように、いまだ現実的な施策は講じられていない。

 今となっては忘れ去られているが、この年間1,800時間という目標は、実はバブル時代に提案されたものなのである。

 当時の政府の諮問機関・経済審議会が1988年1月に掲げた目標では「豊かな国民生活の実現に当たっては、年間労働時間を計画期間中に欧米水準に近い1,800時間程度に短縮し、法定労働時間は週40時間制の実現を図るべき」とされていたのである(「中日新聞」1988年1月23日付)。

 実は、この提言によって確かに労働時間はちょっと短くなった。当時、すでに始まっていた週休2日制の導入は、バブル時代に著しく進んだ。花金という言葉が流行し、半ドンという言葉は消えていった。最近、サラリーマンでも土曜日にちょっとだけ仕事を進めるために出勤することを「土曜出勤」とはいうけど「半ドン」とはいわない。いや、そもそも「半ドン」って言葉は、東京メトロを指して「営団線」というくらいに通じない。

 さて、バブル時代の流行は、週休2日制に続いてフレックスタイム制の導入を根付かせること。フリーターブームに見られたように「自分らしい働き方」が話題のバブル時代。でも、自分で時間を管理して働き、余暇も増えるはずのフレックスタイム制は、浸透しなかった。好景気による圧倒的な人手不足は容易に労働時間の短縮を許さなかった。当時、労働時間が短縮されれば「より徹底した仕事の見直しが進められ、生産性の上昇に結びつく」こと。「生産水準は維持あるいは拡大されざるを得ないから、時間当たりの生産性は上昇する」と見込まれていた(「エコノミスト」1989年10月31日号)。

 こうした状況で、労働基準法も改正し法規制で年間労働時間を1,800時間まで短縮する案。さらには、欧米のような長期のバカンスを文化として社会に定着させ労働時間を短縮させようという意見だってあったのだ。(「朝日新聞」1988年4月18日付)。

「プレミアムフライデー」も「働き方改革」も、まったく実現性のない言葉に聞こえるのは、まさにこれが理由。記憶からは消えても、DNAのどこかで「いつか、どこかで聞いた話」と誰もが覚えているのである。

 もしも、もう少しだけバブル景気が継続したとすれば、リゾート開発の進展とも相まって寝る間も惜しんでバカンスを楽しむ風潮が日本社会に定着したかも知れない。

 でも、日本人はむしろ、そうではない道のほうを好んでいた。バブル真っ只中の1989年5月。オンエアが始まった、あのCMは一大ムーブメントとなった。

♪黄色と黒は勇気のしるし 二十四時間戦えますか
 ビジネスマン ビジネスマン ジャパニーズビジネスマン

 三共の栄養ドリンク・リゲイン。「テープを貸してください」「レコードはどこで売っていますか」。連日の問い合わせを受けて11月にはCDシングルもリリースされた。経営側は、もちろんのこと、労働組合までもが「サラリーマンの応援歌」だとして、さまざまな行事に利用した。

 CMを製作した黒田秀樹は「週刊朝日」1989年10月13日号で、取材にこう答えている。

「働きすぎのビジネスマンをちゃかしてやろうと、シニカルにつくったつもりです。ときにはロボットのように働く彼らの姿をデフォルメして描きたくて、時任さんの表情も、あえて冷たく無表情にしました。でも、スポンサーさんも、こちらの皮肉がいま一つ見えていないようです」
(文=昼間たかし)

最終更新:2019/11/07 18:39
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