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”安倍トモ”朝日新聞元編集委員、「新聞協会賞スクープへの調査」に発展か

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朝日新聞社屋

 4月7日に朝日新聞が公表した懲戒処分が、メディア界隈を賑わせている。編集委員の峯村健司氏(47)が、安倍晋三・元首相のインタビューを行った「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)の副編集長に電話を入れ、記事のゲラを見せるよう強要したことが発覚。朝日は報道倫理に反するとして、峯村氏を13日付けで編集委員の職を解き、停職1カ月の処分を下した。

「6日晩には、名物記者の処分の話が一気に広まり、内容について憶測を呼びました。フタを開ければ、『安倍』『朝日』『メディア介入』といったパワーワードだらけ。7日早朝には峯村氏はnoteに『朝日新聞社による不公正な処分についての見解』を掲載。これもツッコミどころ満載だったために、SNS上では現役記者やジャーナリストらが”総コメンテーター状態”となっているのです」(全国紙記者)

 峯村氏は「不当性については法的にも明らかにしてまいりたい」と朝日と徹底抗戦の構えだが、事実関係は概ね認めている。

 発端は3月9日、ダイヤモンド編集部が安倍氏にインタビューを実施したことだ。峯村氏が同日、安倍氏と面会した際に「ニュークリアシェアリング(核兵器の共有)についてのインタビューを受けた。酷い事実誤認に基づく質問があり、誤報になる事を心配している」と相談があった。峯村氏は、インタビューを行ったダイヤモンド副編集長と面識があった事から、取材翌日の10日に同氏に電話を入れ、ゲラを見せるよう要求。「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私がすべての顧問を引き受けている」として説得したが、副編集長は拒否。さらにダイヤモンド編集部は「編集権の侵害に相当する」と朝日に抗議した。結局、安倍氏サイドとダイヤモンド編集部で事実関係の確認でやり取りをしたことで”誤報”は免れ、記事は3月22日発売号に掲載された。朝日は調査の結果、「政治家と一体化してメディアに圧力をかけたと受け止められても仕方がなく、極めて不適切」などとして処分を公表したのだった。

 実は、峯村氏は4月20日付けの退職がすでに決まっていた。つまり停職自体はダメージがないにもかかわらず、朝日は峯村氏の実名を出し、社会面3段見出しという異例の大きさで公表した。大組織は身内に甘いものだが、異様な厳しさである。

 朝日関係者が解説する。

「峯村氏が退職をTwitterで公表したのは3月20日。朝日は多額の退職金を割り増しする早期退職制度がありますが、それを利用せずに、そそくさと辞めるのは不自然です。時系列からして、朝日の社内調査を受け、”逃げた”可能性が高い。峯村氏は青山学院大客員教授、北海道大研究員、テレビコメンテーターと順調な船出が約束されており、それが会社としては許しがたかったから実名を出して大々的に公表したのでは。実際、峯村氏のnoteによれば、朝日のゼネラルマネージャー補佐がその転職先に、あらかじめ処分の通告をしていたといい、峯村氏は『転職妨害の強い意図』を感じるとしています」

 北京、ワシントンに勤務し、中国当局に何度も拘束されながらも2010年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞するなど、峯村氏の記者としての実績は誰もが認めるところ。だがnoteでの言い分はお粗末な中身だった。週刊誌デスクが呆れる。

「ゲラを見せるよう強要した理由が『ジャーナリストにとって誤報を防ぐことが最も重要なことであり、今、現実に誤報を食い止めることができるのは自分しかいない、という使命感』。安倍氏との間柄について『完全に独立した第三者として専門的知見を頼りにされ助言する関係』。さらには自身を『SNS上でも「朝日新聞の良心」と言われる』とまで記す始末で、あまりに自己肯定感が強すぎます。しかも、『安倍氏に対して取材や報道はもちろん、やりとりをメモ書きにしたことすらもありません』と、それがあたかも立派な行為のように書いているが、政局の中心にいる安倍氏とコンタクトを取れる立場にいながら記事に反映させないなんて、ジャーナリストとは言えませんよ」

 なぜ、そんな書きぶりになってしまったのか。朝日幹部が指摘する。

「フリーになるにあたり、安倍氏とのパイプは大きなウリになりますからね。安倍氏に切られるわけにはいかないので、noteの記述は、”自分がなりふり構わずやったのだ”という安倍氏サイドへのアピールでしょう」

 だが「安倍嫌い」で知られる朝日だけに、この騒動はなかなか幕引きとはならなさそうだ。

「峯村氏の過去の記事を検証せよという声が上がっているのです。昨年、峯村氏は、LINE利用者の個人情報が中国の業務委託先からアクセスできる状態にあったというスクープを放ち、新聞協会賞受賞を受賞した。これは、『反中』である安倍氏周辺を喜ばせる記事となった。安倍氏は総理を辞任していたとはいえ、ディープな情報を峯村氏に渡していたのではないか。もちろん、情報源について峯村氏が口を割るわけはありませんが、スクープの中身に社として疑義を唱えるだけで、峯村氏の経歴に傷がつくというわけです」(前出・幹部)

 権力にすり寄った代償は大きかったか。

黒崎さとし(編集者・ライター)

1983年、茨城県生まれ。ライター・編集者。普段は某エンタメ企業に勤務してます。

Twitter:@kurosakisatoshi

くろさきさとし

最終更新:2022/04/13 20:00
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