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木村文乃『七人の秘書』映画化、『科捜研の女』レベルの“テレ朝印”ドラマになるか?

木村文乃、広瀬アリスら映画『七人の秘書』は『科捜研の女』レベルのテレ朝印になるか?の画像1
映画『七人の秘書 THE MOVIE』ポスター(撮影=筆者)

 平均視聴率14.5%という高視聴率ながら、コロナ過に制作された作品ということもあり、全8回で終了してしまったドラマ『七人の秘書』(テレビ朝日系、2020年)。その待望の続編が、映画『七人の秘書 THE MOVIE』として、10月7日から公開される。

 ドラマ最終回から2年、劇場版と直結するスペシャルドラマも10月2日に放送されたばかりで、視聴率は10.4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録。盛り上がりは絶好調だ。あの個性的な7人――木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井滋、江口洋介――の活躍を再び、しかも今度はスクリーンで観ることができるのだ。

 お馴染みのメンバーたちが再集結するほか、シリーズを通りしての宿敵であり、逮捕されたはずの粟田口十三(岸部一徳)がまさかの再登場。一体、どんな役割で登場するのだろうか……。

 ドラマ版でも毎回ゲスト俳優が登場していた本作だが、映画ならではの豪華ゲスト俳優として、玉木宏や吉瀬美智子、浜田岳、笑福亭鶴瓶らが参加する。

 ドラマ版に続き田村直己が監督、中園ミホが脚本を務めることで、テレビ朝日ドラマならではの安定・安心感もそのまま引き継がれている。

【ストーリー】
熾烈な戦いの末に政界のドンを辞任に追いやった秘書たちは、今日もラーメン萬で平和な日々を噛みしめていた。そんな彼女たちのもとに新たな依頼が舞い込む。今度のターゲットは信州一帯を支配する「九十九ファミリー」。表の顔は経済を潤してくれる地元の名家だが、実はその裏の顔は国家と繋がり私腹を肥やすためには手段を厭わない極悪一家だった……。過去最大の悪人を懲らしめるため、雪深き地へ向かった七人。しかしそこで彼女たちを待ち受けていたのは、絶体絶命……史上最高難易度の任務と、決して知られてはいけない秘密だった!

■劇場版はスケールアップ……ではなく、“テレ朝色”がより濃厚に!?

 社会の裏側で渦巻く腐敗、権力、そしてジェンダーギャップにメスを入れた社会派な作品というドラマシリーズのテイストはそのままに、劇場版では、謎解きミステリー、サスペンス劇場の要素も加わり、一気にテレ朝の連続テレビドラマ色を強くしている。

 旅先、地方で事件に巻き込まれるというサスペンスの典型的なパターンは、パッケージとしてはありがち。サスペンス好きであれば、事件の黒幕は結構すぐわかってしまうはずだ。しかし、決してそれが悪いわけではなく、テレ朝の名だたる人気ドラマ『科捜研の女』(沢口靖子)や『ドクターX~外科医・大門未知子~』(米倉涼子)、『相棒』(水谷豊)などのように、むしろ長寿シリーズとして愛され、残り続けそうな風格を漂わせてる。

 よく日本映画に対して、「テレビドラマの延長線上のような作品だ」という皮肉的な言い方がある。でも今作においては、それこそが大きな安心感・安定感に繋がるプラス要素なのだ。つまり、これでいい。

 『科捜研の女』ファンが、去年公開された劇場版に映画的大スペクタクルを求めていないように、ぬるま湯に浸かっているような状態で、ずっと観ていたいと思う心地いい温度感こそが、丁度いい作品なのだ。

 女性陣がハニートラップを駆使するスパイアクション映画『チャーリーズ・エンジェル』や、日本でいえば1969年~76年まで続いたドラマ『プレイガール』シリーズのような作品には、現代では時代錯誤だという意見もあるだろう。だが本作は、それと描くと同時にジェンダーギャップの問題も浮き彫りにすることで、あえて時代と逆行したテーマをほどよく現代的にアレンジしている印象だ。

 重圧なテーマは他にも隠されている。本作においては、リゾート・レジャー施設開発の影に渦巻いている政治家や悪徳弁護士の癒着、地方の雇用問題、そして慈善事業という表の顔の裏にある環境・貧困ビジネスなどが描かれており、現実社会においてはそう簡単に解決できることではないだけに、グレーなものはグレーとして蔓延るもどかしさを感じさせるのが妙にリアルだったりする。

 それでも、本作は決して説教臭くはなく、陰鬱な気分にもならない。社会派に振り切ず、作品のエンターテインメント性を維持しているのは、『特捜9』や『刑事ゼロ』なども手掛けてきた田村直己監督、そして『ドクターX』シリーズの脚本家・中園ミホの手腕ならではだろう。“テレ朝印”の安定・安心感が際立っている。

 ドラマ版同様に、それぞれのキャラクターの個性がわかりやすいのはいいとして、もはや戦隊ヒーローのようなテイストも入っているのは、少し劇場版をはき違えている感じがしないでもない。だが、これも『仮面ライダーエグゼイド』や『仮面ライダーカブト』などの平成ライダーシリーズを多く手掛けてきた田村直己監督ならではの演出なのかもしれない。

 それにしても、この安定・安心感。テレ朝の連続ドラマシリーズとしては相応しく、何年も続いてもらいたいと思える、そんな作品だ。

監督:田村直己
脚本:中園ミホ
出演:木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井 滋 江口洋介、玉木宏、濱田岳、吉瀬美智子、笑福亭鶴瓶ほか
音楽:沢田 完
製作幹事:テレビ朝日
制作プロダクション:ザ・ワークス
配給:東宝
公開:2022年10月7日(金)
©2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

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ばふぃーよしかわ

最終更新:2022/10/08 07:01
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