市川猿之助を失った澤瀉屋を救うのはやはり「あの親子」なのか

　東京・明治座の座長公演『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』に出演中だった人気歌舞伎役者の市川猿之助が救急搬送され、両親が亡くなるという悲劇から3週間。衝撃的な事件を受け、澤瀉屋（おもだかや）の存続が危ぶまれている。

 「事件が起きた5月18日は、猿之助のハラスメント疑惑を報じた『女性セブン』の発売日でした。直前に同誌から直撃取材を受けた猿之助は激しく動揺したそうで、その後の警視庁の捜査に対し、“家族で話し合い、両親が薬を飲んだ”と説明しているそうです。当局は自殺幇助も視野に捜査を進めているようですが、従兄弟の香川照之のセクハラ騒動に続いて、自身のハラスメント疑惑と今回の事件……。澤瀉屋の存続が危ぶまれています」（演芸ライター）

　猿之助が、伯父にあたる3代目（現・市川猿翁）から大名跡の4代目を襲名したのは2012年6月。梨園では長男が後を継ぐのが原則だが、香川の父親で、スーパー歌舞伎を確立した猿翁さんは、1965年、宝塚出身の女優・浜木綿子さんと結婚したものの、1年余りで別居。日本舞踏藤間流名取の藤間紫さんとのW不倫が原因だった。

「猿翁の不倫が公になったことで夫婦は離婚。浜さんが香川を引き取ったことから、猿翁さんと香川は長らく絶縁状態にありました。ご存知の通り、香川は役者の道に進みましたので、猿翁の弟である段四郎さんの長男、亀治郎（当時）が澤瀉屋の後継候補とされました」（梨園関係者）

　だが、09年、藤間さんの他界後、父子は和解し、復縁した。

「それまでは、スーパー歌舞伎を継承するのは猿翁さんの部屋弟子である市川右近（現・市川右團次）と目されていましたが、親子関係が修復したことで、香川は従兄弟の亀治郎を後押ししたと言われています。香川の思惑は、長男の市川團子に5代目猿之助を襲名させるためと言われていました」（前同）

　亀次郎の4代目猿之助襲名と時を同じくして、香川も歌舞伎役者として9代目市川中車を襲名。その一方、俳優としても活動し、人気ドラマシリーズ『半沢直樹』（TBS系）でバイプレーヤーとして大ブレーク。CMにも引っ張りだことなった。

「香川は、『半沢直樹』でも猿之助のキャスティングを後押ししたと言われています。猿之助も香川同様、“顔芸”で俳優としてもブレーク。去年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも出演したほか、本業の歌舞伎では、“ワンピース歌舞伎”など新作歌舞伎に取り組んでいます」（芸能ライター）

　ところが、昨年8月、猿之助を後押ししてきた香川の、銀座クラブホステスへの“セクハラ疑惑“を「週刊新潮」が報道。事実と認めた香川は、ドラマやCMの降板を余儀なくされ、事実上の芸能活動謹慎が続いている。

「そんな中、今度は『女性セブン』によって、猿之助が師匠や舞台での座長の立場を利用して、若手歌舞伎役者だけでなく、現代劇の俳優やアクション俳優にまでセクハラやパワハラを働いていた疑惑が報じられた。しかも、コロナ渦にもかかわらず、猿之助が積極的にパーティーを主催して性的スキンシップを求めていたという内容でした」（前出の芸能ライター）

　折しも、ジャニーズ事務所の創業者である故・ジャニー喜多川氏の所属タレントへの性加害が社会問題に発展している現在、同様の疑惑を報じられた猿之助が追い詰められていたことは想像に難くない。

「事件が起きたのは、猿之助の公演中のこと。公演は代役を出して閉幕まで乗り切りましたが、両親を死に追いやった猿之助の責任は非常に重いでしょう」（前出の演芸ライター）

　香川に続き、猿之助までスキャンダルに見舞われた澤瀉屋。事態の重さから、猿之助の引退まで囁かれているが、もしそうなれば、澤瀉屋を継承するのは香川の長男で、19歳になる市川團子になるとも言われている。

「スキャンダルでテレビ界から干された香川は、“俺にはもう歌舞伎だけ”と話しているそうです。実際、昨年12月の大歌舞伎で舞台復帰した香川は、六月大歌舞伎の昼の部で主役を務める。実力を発揮して、澤瀉屋の汚名を返上し、息子の團子につなげるしかありません」（前出の演芸ライター）

　不幸中の幸いか、猿之助の代役を務めた市川團子の人気はうなぎ上り。香川、團子親子が澤瀉屋を救うか、今後に注目だ。

（文＝本多 圭）

本多圭（ジャーナリスト）

芸能取材歴40年以上、タブー知らずのベテランジャーナリスト。主な著書に『 スキャンダルにまみれた芸能界のトンデモない奴ら』など。

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