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『合理的にあり得ない』黒幕はやはりあの男!? “あり得ない”どんでん返しはあるか

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ドラマ公式サイトより

 過去を悔いるよりも、輝かしい未来を祈るよりも、今を一生懸命に生きることこそ大事であると思い知らされた。6月19日に放送されたカンテレ・フジテレビ系ドラマ『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~』の第10話。元弁護士の女探偵・上水流涼子(天海祐希)が巻き込まれた過去の事件の黒幕がついに明らかになった。

 涼子はまだ弁護士だった1年前、「椎名レンズ」社長の椎名保(野間口徹)を公衆の面前で殴り続けるという暴行事件を起こし、弁護士資格をはく奪されてしまった。しかし涼子に殴ったときの記憶はない。第1話から謎に包まれていたこの事件だが、第9話ラストで涼子宛てに送られてきた動画によって、「3 7 7 6」という言葉を聞くと「自分でも抑えきれないほどの怒りの感情」が沸き上がるという後催眠暗示をかけられていたことがわかる。そしてこの動画を見たことで、涼子の記憶が蘇る。椎名は、誰にも知られないようにホテルのラウンジで涼子と密会。用件を聞くと、椎名は「上水流さんはご存知ですか? 3 7 7 6」と言い、暗示が発動してしまったのだった。

 涼子が動画を詳しくチェックすると、見覚えのあるマークがあった。名刺を探すと、それはアリアというヒプノセラピーサロンのマークだっだ。涼子は、後輩弁護士の谷川俊也(長田成哉)から紹介されたことを思い出し、谷川を探る。すると、涼子が抱えていた顧客を暴行事件後、すべて谷川が引き継いでいたことがわかる。これが狙いかと涼子は谷川が犯人だと疑うが、そのさなかに転落死してしまった。しかしそれでも涼子は、アリアがあった物件を扱っていた不動産会社から、リバーエンドコーポレーションという会社のCEO・山田隆史という人物の関与を掴む。そして涼子がリバーエンドを訪れると、そこで見たのは例の催眠動画の続き。催眠をかけていたのは、涼子の相棒であるはずの貴山伸彦(松下洸平)だった――。

 この裏には、山田隆史こと氷川玲児(阿部亮平)が関わっていた。元半グレの氷川は、かつて闇バイトの元締めをしていたとき、父親が犯罪者の汚名を着せられたまま昏睡状態となってしまったためにまともな働き口が見つからなかった貴山を雇っており、涼子に後催眠暗示をかけさせたのも氷川の指示だった。そして日本に戻ってきた氷川は、IQ140の貴山の頭脳をふたたび利用しようと、「仕事」を手伝えと貴山に言う。氷川は涼子に「ゲーム」を仕掛けていた。催眠動画を涼子の携帯電話に送ったのも氷川だった。断れば涼子に危害が及ぶと思った貴山は、涼子に上水流エージェンシーを辞めると伝えて、氷川のもとに行ったのだった。

 しかし貴山は、氷川の詐欺の片棒を担がされることに良心の呵責を感じ、逆らおうとする。氷川に囚われた貴山。そして氷川は「ゲーム」を続けており、涼子に氷川の影を追うようヒントを与え、谷川にたどり着くと谷川を殺し、リバーエンドのオフィスにたどり着いた涼子に、後催眠暗示をかけたのが貴山だったとわかるフル動画を見せる。瞬時に発揮される分析力で修羅場をくぐり抜けてきた貴山を精神的に追い詰め、涼子すら意のままに操る策士の氷川。登場回数は少ないもののコメディ要素のある本作品で異彩を放つ危ないキャラクターで、一躍ラスボス候補に名乗りを挙げるほどの存在感を見せた。

 貴山にずっと騙されていたと知って、唖然とする涼子。涼子に弁護士資格を失う暴行事件を起こさせたことを、そしてずっとそのことを黙ってきたことを悔やむ貴山。だが、その貴山の窮地を救うのは、ほかでもない涼子だった。貴山は念のため、捜査一課に復帰した丹波勝利(丸山智己)にすべてを伝えており、自分と氷川のスマートフォンを交換することで、自分の身に何かあっても氷川の位置情報がわかるようにしていた。そして丹波は涼子に貴山の身の危険を知らせたのだった。丹波の活躍もあって、氷川から解放される貴山。

 貴山は罪を正面から謝罪し、涼子はすべてを受け入れたうえでオンリーワンの相棒としてふたたび貴山を迎え入れる。第1話から抜群の呼吸で悪を成敗してきたふたりだったが、それは完成形ではなかった。ふたりの間には互いに「秘密」が横たわっていたが、回を重ねるごとに絆が深まり、「過ごした深さ」で築かれた信頼によって、ふたりはついに本物のバディとなったのだ。

 氷川は取り逃がすことになってしまったが、抜け目ない貴山は、涼子の後催眠暗示を依頼した人物を氷川から聞き出すことに成功していた。その黒幕はやはり、諫間慶介(仲村トオル)。筆者がにらんだとおり、娘の久実(白石聖)が上水流エージェンシーで勤めるとなったときに就職祝いといって持たせた花瓶にはやはり盗聴器が仕込まれており、諫間が黒幕であると貴山が涼子に明かした会話も、すべて諫間に筒抜けだった。

 今夜放送の最終話では、天敵・諫間との本格的な潰し合いが行われそうだ。それと同時に気になるのが、予告映像にも出てきた「3776計画」なるプロジェクトと、なぜ諫間が涼子に椎名を殴らせたのかということ。第9話のラストで「完成には、まだ」「時間がかかって申し訳ありません」と意味深な会話をしていた椎名は、次回の予告映像では拉致されている姿も見受けられ、涼子と貴山が壮大な陰謀に巻き込まれるのは濃厚だ。諫間を上回る“真の黒幕”が登場するセンもまだ残っており、ひとつやふたつのどんでん返しでは済まない、予測不可能な展開になるのではないか。エンタメとシリアスを掛け合わせた『合理的にあり得ない』だけに、集大成となる最終話も“あり得ない”内容になることを期待したい。

■番組情報
月曜ドラマ『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~
フジテレビ系毎週月曜22時~
出演:天海祐希、松下洸平、白石聖、中川大輔、丸山智己、仲村トオル ほか
原作:柚月裕子『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(講談社文庫)
脚本:根本ノンジ
音楽:眞鍋昭大
主題歌:ざきのすけ。「彼は誰どき」(ソニー・ミュージックレーベル)
プロデューサー:萩原崇、清家優輝
演出:光野道夫、二宮崇、倉木義典
制作協力:ファインエンターテイメント
製作・著作:カンテレ
公式サイト:ktv.jp/arienai

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/06/26 12:00
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