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尾上菊之助の密会報道が波紋 歌舞伎界の倫理観と世間とのギャップ

尾上菊之助の密会報道が波紋 歌舞伎界の倫理観と世間とのギャップの画像
尾上菊之助 公式Instagramより

 歌舞伎俳優の尾上菊之助が不倫疑惑を報じられた。品行方正な印象があった菊之助だが、今春には弟子へのパワハラ疑惑を伝えられたこともあり、イメージが急変しているようだ。それと同時に「不倫や隠し子などは当たり前」「ハラスメントが横行している」ともいわれる歌舞伎界の世間離れぶりに改めて注目が集まり、それが市川猿之助の騒動にもつながったのではないかとの指摘が出ている。

 発売中の「週刊文春」(文藝春秋社)が菊之助の不倫疑惑を報じており、記事によるとお相手は19歳年下で26歳の日本舞踊家の女性。昨年9月ごろから親密な関係になったとされ、同誌は今年7月中旬、2人が大阪の高級ホテルの同じ部屋に出入りするところをキャッチしている。

 双方とも不倫関係を否定しており、同誌記者に直撃された女性は、菊之助とは面識がないとし、「お稽古場でお見かけするくらい」と答えたものの、その後代理人が「交際関係はございません。尾上さんに芸事の件でご相談をしたことはありますが、それ以上の関係はございません」と説明。同様に直撃された菊之助は、ホテルに女性を招いたことについて「全然、記憶にないです」とまで言い切ったが、業務提携先の事務所は「(ホテルの)部屋滞在は事実です」とあっさり認め、「ですが、仕事の相談に乗る関係でした、とのことです。(「記憶にない」と答えたのは)時間等細かいことは忘れた(との)意味だと聞いてはおります」と説明。いかにも苦しい釈明となった。

 菊之助は名門・音羽屋に生まれ、父は人間国宝の七代目・尾上菊五郎、母は昭和の名女優として知られる富司純子、姉は女優の寺島しのぶという、華麗なる一族で育った。2013年に結婚した妻は、人間国宝の二代目・中村吉右衛門さん(2021年に他界)の四女で、一男二女をもうけている。生前の吉右衛門さんは、娘婿となった菊之助を実の息子のようにかわいがっていたとされ、今回の不倫疑惑について歌舞伎ファンからは「奥さんだけじゃなく吉右衛門さんまで裏切った」といった手厳しい声が飛び交っている。

 菊之助といえば、今春に主演した『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』の公演終盤に年上の50歳の弟子を罵倒し、息子への土下座まで要求したことで、弟子が“怒りの引退”となったなどと報じられ、パワハラではないかと騒がれたことも記憶に新しい。騒動の原因は、弟子が菊之助の9歳の息子・丑之助におしろいの塗り方と着物の着方のことで強めに注意したことだとされ、息子からそれを伝え聞いた菊之助が激高。弟子を自宅に呼び出して丑之助がいる前で罵倒し、「息子に土下座しろ!」と謝罪を迫ったと伝えられている。事実であれば、上品な「歌舞伎界のプリンス」のイメージとは程遠い蛮行だ。

 だが、こうしたトラブルは菊之助に限ったことではない。世間と隔絶した独特の世界である歌舞伎界では、昔から不倫やハラスメントが当たり前のようになっていた面があると指摘されている。

 不倫問題を起こした歌舞伎俳優は枚挙にいとまがないが、その中でも中村芝翫は4度も不倫疑惑を報道された“常習犯”で知られる。そのたびに、笑顔でメディア取材に受け答えする妻・三田寛子の「神対応」が話題になってしまうが、離婚問題に発展することはなく、仕事への影響もほとんどない。ある意味で「いつものこととして許されている」といえるだろう。

 隠し子が発覚した歌舞伎俳優も多く、松本幸四郎は「市川染五郎」時代に、市川團十郎は「市川新之助」時代にそれぞれ隠し子がいることを報じられている。2011年に隠し子が判明した片岡愛之助は、藤原紀香と結婚した2016年に「隠し子の母親から認知を求められた」とし、認知したら養子として入った片岡家の問題にもなることから「愛之助側が白黒つけるためにDNA鑑定を求めた」などと伝えられて大きな騒動になった。ただ、これらの隠し子騒動も、彼らの歌舞伎俳優としての活動にはほとんど影響していない。

 昨今は芸能人が不倫騒動で仕事をすべて失ってしまうようなケースが多々あるが、影響の少なさを鑑みるに歌舞伎界はやはり特殊な世界なのだろう。もっとも不倫や隠し子については「当事者同士の問題であって外野がどうこう言うことではない」との見方もあるが、同じく歌舞伎界で横行していたとされるセクハラやパワハラとなると、コンプライアンス意識が高まっている現代ではそうもいかなくなっている。

 そうした部分で歌舞伎界と世間の大きなズレが表面化したのが、昨年8月に報じられた香川照之の性加害騒動だった。香川は出演していた番組やCMを全降板するなどしたものの、昨年12月に13代目市川團十郎白猿襲名披露の公演で歌舞伎俳優・市川中車として復帰。タニマチ筋から「復帰させてやりたい」との要望があり、それでも勧進元の松竹は当初消極的な姿勢だったが、市川宗家である團十郎の鶴の一声で決まったという。「芸能界追放」状態となった香川ですら許容してしまう、歌舞伎界の特殊性が露呈したともいえる。

 世間を驚かせた市川猿之助の一連の騒動は、週刊誌で報じられたセクハラ・パワハラ疑惑が発端(所属事務所はハラスメントを否定)になったとされている。仮に疑惑が事実だったとした場合、もし歌舞伎界の常識が世間とそれほど乖離せず、歌舞伎俳優であってもそうした行為は絶対に許されないという認識があれば、あのような悲劇はそもそも起きなかったのでは……と思えてくる部分もある。

 歴史と伝統を重んじる世界であるのは理解できるが、モラルに欠けた行動が「歌舞伎役者だから」で許されることが続けば、歌舞伎界の品格にもかかわってくるのではないだろうか。

SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。

さとうゆうま

最終更新:2023/07/28 21:00
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