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トヨタのエゴがもたらす現場社員への圧力と不条理

20080321_toyotashoutai.jpg『トヨタの正体』/『続・トヨタの正体』
発行・金曜日

【推薦人】 横田一(共著者)

──生産・販売台数で世界一が確定したトヨタですが、ビジネス誌では、成功事例を取り上げる記事が多数見られるように思われます。

横田 それはひとえに広告費のためですね。以前も某大手出版社に、ある企業をめぐる告発記事の企画を出したんですが、直前にボツになりました。広告が引き揚げられるリスクがあるため、記事を見送るという企業論理が働くんです。

──トヨタ式の経営を称賛するビジネス書も多く出版されていますが、そんな中、横田さんはトヨタの暗部を浮き彫りにする書籍を執筆されました。

横田 多くのトヨタ関連本では、同社内で起きている過労死や労災などの実情が抜け落ちています。確かに、業績から見ればトヨタが素晴らしいことは間違いない。しかし、良い面と悪い面を総合的に見て、はじめてトヨタの全体像が見えてくると思います。

──『トヨタ 愚直なる人づくり』では、「トヨタは(社員の)失敗に寛容であり、それをどうリカバーするかを見る」と書かれていますが。

横田 それは建前でしかありません。実際工場では、ラインが止まると音楽が大音響で流れ、ランプが点灯してどこの工程で止まったかが一目でわかる。で、周囲からの冷たい視線を一身に浴びる。現場の人からは「失敗に寛容な雰囲気では全くない」と聞いています。現実とは全く正反対ですね。

――同書や『強い現場をつくる トヨタの上司』などでは、新入社員を先輩が徹底的に指導する職場先輩制度や、実務を通じて従業員の教育を行うOJT(On The Job Training)による成功について書かれています。こうした試みについてはどうでしょうか?

横田 現場では非正規雇用が増えています。ですから、現在ではそういった教育制度は機能低下に陥っているのではないかと思います。過去の良い面までは否定するつもりはありませんが、現場での教育を重視するのであれば、長期的に技術者を育てていかなければならない。しかし、今はとにかくコストダウン優先で非正規雇用を増やしていますから、教育の効果も落ちてきてしまっているんですね。

──「“なぜ”を5回繰り返す」などの思考法や、数々の改善活動がトヨタの強みにつながっていると指摘する書籍も多いですが。

横田 確かに、現場がより深く考えることが企業にとって有益になることは理解できます。ただ、現場にはあまり考える余裕がないんですよね。これも形だけになっていると思います。うつ病になった設計担当の人に話を聞きましたが、とにかく受け持つ仕事量が多くて、「ゆっくり考えている暇がない」と語っていました。打ち出していることが立派でも、それを実際に実行する環境が整っていないというのが実情だと思います。

──ミシガン大学教授が記した『ザ・トヨタウェイ』では、「部品メーカーなど社外ネットワークを尊重し、改善するのを助ける」と書かれていますが、トヨタの関連会社や下請けとの関係の実情はどうでしょうか?

横田 「尊重」など全くおこがましいという感じですね。過酷なコストダウンを要求して、酷使している。これはもう、いじめているに等しい。基本的に下請けや関連会社は弱い立場ですから、人件費を浮かすために経営者の奥さんが子どもも育てられないほど追い込まれているといった状況もある。そういうところで搾り取って利益を出して、トヨタ本体の正社員は産休が取れる構造になっている。エリート正社員と悲惨な状況でそれを支える人たちに二極化しているんです。

──それが世界ナンバーワン企業の正体、ということですね。では最後に、横田さんの目から見て、トヨタという会社を一言で表すならば?

横田 “エゴ”“非人道的”“冷酷”。そんな感じです。ほかの会社がトヨタ生産方式を真似すると、日本が不幸になるんじゃないかとすら思いますね。

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『続・トヨタの正体』 週刊金曜日 編/金曜日/1050円(税込)
ベストセラーとなった『トヨタの正体』と、その続編。環境問題、交通事故、リコールやコスト削減による弊害など、大手マスコミに取り上げられないトヨタの「負の側面」を浮き彫りにする。

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最終更新:2008/05/21 22:34
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