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巨匠・小池一夫が喝!「俺がマンガ界の総理になる!!」(後編)

koike_manga.jpg名作・怪作が揃った小池作品の数々。
ちなみに、本名の「一雄」から「一夫」に変えたのは
「原作者として劇画の夫になる」という意味を込めて。
さすがです!

前編はこちらから

──そういう濃密な人生体験を今の作家に求めます?

【小池】 難しいですね。あの時代はみんなが「自分ありき」の時代でしたからね。今の若い人たちはちょっとよそにいくと、その世界に沈没しちゃうんじゃないかな。今は自己中心主義、自分がこうなったのは社会のせい。目上も目下もない。説教してくれる父親もない。そういう世の中では、いろんなところに行って経験を積め、というほうが無理だと思いますね。いろんなものが希薄になって、変な時代ですよ。

●若者よ! 俺がマンガのイロハを教えてやる

──あと、最近のマンガ界の動きのひとつに、書店の衰退と「コンビニ売りマンガ」のブームがあると思います。で、小池先生が経営している小池書院の本って、小池先生の著作をはじめ、このブームのだいぶ前からコンビニ売りを積極的に展開していますが、この流れを見越していたんでしょうか?

【小池】 実はね、コンビニができたとき、僕は絶対にこれから若い人がモノと一緒にマンガを買う時代になるって予想したんですよ。それで、もうだいぶ昔、全国でセブンイレブンが1000店舗ぐらいになった頃かな、「うちのマンガを置いてくれよ!」って頼みに行ったんですよ。当時はマンガの棚がなかったから話をつけて、結果、うち(小池書院)で400店舗分ぐらい、一棚3600円でセブンイレブンにマンガ用の棚を作ったんですよ。

──そうだったんですか! 売れました?

【小池】 売れた売れた!(笑) 今でも棚が残ってるところがありますよ。でも当時、ほかのマンガ家や編集者たちから「本という知財をバナナやティッシュペーパーと一緒にするのか?」と言われたんですよ。別にいいじゃない、消費するものなんだから。で、その頃僕をボロクソ言ってた連中が全部コンビニに入ってきて、今は飽和状態になっちゃった(笑)。ケータイマンガも飽和状態だね。今はあっちもこっちも配信っていう感じで、ここまで増えちゃうと、過当競争。それよりも、マンガだけを配信するようなケータイやシステムを作ったほうがいいんじゃない。

──書店よりもコンビニでマンガが売れつつあるという逆転現象そのものはどう捉えます?

【小池】 そういう時代なんだから、書店は書店で工夫しなくちゃいけない。逆にコンビニでマンガ全集みたいなものを置いても売れないんだし。そういうことを僕はずっと提案してるんだけど、聞いてくれないんだ。マンガ不況の中、右往左往してるだけで、リーダーも誰もいない。僕をマンガ界の総理大臣にしてみろよって(笑)。権限を与えられたら、関係者みんな集めて話を聞いて、舵取りするから。この前、僕はサンディエゴのコミックコンベンションで「アメリカのマンガ界に貢献した人」ということで賞をもらったんだけど(06年/Inkpod Awards)、そういうのも日本のメディアは一切報道しない。

──日本と海外では、マンガに対する認識が違うということでしょうか?

【小池】 そう、ハリウッドはアメリカが国策としてバックアップしてる。日本だって、映画には国が補助金を年間50億円ぐらい出してるんだよ。映画の規模なんてマンガに比べたら小さいのに、マンガには補助金がまったく下りてない。僕なんか今までに400人以上も人を育てていて、何億も使ってるのに(笑)。今だって、大学の「小池ゼミ」で生徒を合宿に連れていくだけで、年間何百万円もかかってるんですよ。

──使ってきたお金は億単位ですか! 確かに言われてみれば……。

【小池】 億どころか、昔から数えたらそれこそ天文学的数字になってますよ(笑)。まあ、僕はたまさか稼いできたからいいんだけどね。

──では、最後に、そんな小池先生から、これからマンガ業界に入りたいな、という若者へ一言お願いします。

【小池】 そりゃもう……教えてやるから、俺んとこ来い!

●こいけ・かずお
1936年生まれ。劇画原作者。「さいとう・プロダクション」を経て70年に独立。以降、『子連れ狼』『御用牙』『修羅雪姫』『クライング フリーマン』『実験人形ダミー・オスカー』『マッド・ブル34』など数多くのヒット作を生み出す。77年に自身の私塾「小池一夫劇画村塾」を設立し、高橋留美子、原哲夫、板垣恵介、山口貴由、堀井雄二、さくまあきら、狩撫麻礼、山本直樹など、数多くの才能を世に出した。現在は、大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科教授、出版社「小池書院」の代表取締役会長でもある。

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「ちゃーん」のルーツ。

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最終更新:2008/10/18 11:00
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