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もう一つの『アバター』? 

“WATARIDORI”の監督が描き出す未知の海洋世界『オーシャンズ』

eiga_oceans.jpg(C) 2009 Galatee Films – Pathe – France 2 Cinema – France 3 Cinema – Notro Films – JMH-TSR

 沈没船の悲劇を描き、世界興行収入ナンバーワンの不沈の記録を打ち立てたと思われた『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督が、自らの新作『アバター』で『タイタニック』を2位に沈めてみせる歴史的快進撃を続けている。しかし、どうにも『アバター』のあの人工的な青い人を見る気になれない……という方には、自然の青い海を見て癒されるのはいかがだろうか。製作費70億円をかけた海洋ドキュメンタリー大作『オーシャンズ』が、現在公開中だ。


 『ニュー・シネマ・パラダイス』などで知られるフランスの名優でもありながら、自然の世界に魅せられ、飛行する鳥に並走して撮影するという斬新なスタイルを生み出した『WATARIDORI』(2001)を手がけたジャック・ペラン。そんな彼が、今度は世界中の海を舞台に、大きいものではシロナガスクジラやジンベエザメサメ、小さなものではオキアミまで、あらゆる海洋生物のありのまま姿を捉えてみせたのが、『オーシャンズ』だ。撮影には4年間、469時間以上フィルムがまわされ、さまざまな最新技術も導入。カメラが時速70キロで泳ぐマグロやサーフィンするイルカと並走したり、海上を疾走したりしながらも全くブレない映像や、魚の大群とともに泳いでいるような感覚になるシーンも多数で、まさに”息をのむ”という表現がピッタリ。これまでの映画やテレビの自然ドキュメンタリーで同様のシーンがあったとしても、格段に美しいと感じるのは決して気のせいではないはず。

 ペラン監督自身は「ただ『美しかった』で終わるのではなく、生命の力や輝きを理解し、それらを守らなければと観客が思うような作品にしたいと思った」と語っており、「知識を得るためのドキュメンタリー作品」ではなく、「感情に訴えかける映画」だとしている。そのため、映し出されるのは美しいだけの海の生物の姿ではない。人間の漁などにより傷ついていく生物たちも映し出されている。そうした痛ましいシーンは、ちょっとズルい気もするが、まさに感情を揺さぶられるシーンといえる。しかし、海の生命の美しさとかけがえのなさを訴える映画だから、実はそうした生物が傷つくシーン――網にかかるウミガメやイルカ、ヒレを切られてしまうサメなど――は、すべてアニマトロニクス(コンピューター制御のロボット)を用いて撮影されているからご安心を。その精巧さに、ほかのシーンでも同様にアニマトロニクスやCGといった人工物が使われているのではと疑われそうだが、漁のシーン以外はすべて本物。計12人のカメラマン(そのうち1人は日本人)が、4年の歳月をかけて命がけで撮りきった映像だ。登場する生物は100種にも及び、目の前に広がるのはまさしく未知の世界。スキューバダイビングをしている人なら、意外となじみのある生物もたくさん出てくるので、また違った楽しみ方もできそうだ。

 『アバター』は、ジェームズ・キャメロンというひとりの監督の頭の中に描かれた、パンドラという未知の世界を、最新のテクノロジーでスクリーン上に現出させてみせた大作だが、『オーシャンズ』も地球上の表面積の70%を占める海という未知の世界を、最新のテクノロジーで捉えたという意味では同じかもしれない。現実世界にも、まだまだ知らない世界が広がっているということをあらためて認識させてくれる1本だ。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)

『オーシャンズ』
<http://eiga.com/movie/54165/>

『オーシャンズ』ジャック・ペラン&ジャック・クルーゾー監督インタビュー
<http://eiga.com/buzz/20100122/7/>

WATARIDORI~もうひとつの物語~

渡ってます。

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最終更新:2010/01/29 14:01
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