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国益の元に隠された秘密交渉 教科書には載っていない『戦後「裏」外交史』

uragaiko.jpg『戦後「裏」外交史』(洋泉社)

 昨年秋、ノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作内閣政権下で、日本国内への核持ち込みを認める密約が結ばれていたことが報じられた。沖縄における基地問題も相まって、国内では安全保障についての議論が盛んに行われている。北朝鮮の核政策を巡る6カ国協議も再開に向けて動いており、いま、外交問題がにわかに熱を帯びているのだ。

 よく、日本人は外交が下手だと言われるけど、戦後65年の間、なかなかどうして、裏でさまざまなネゴシエートがなされていた。『戦後「裏」外交史』は、戦後、外国との交渉の水面下でどんな動きがあったのかをたどったムックだ。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の統治政策から北朝鮮による拉致事件まで、日本外交史の裏舞台が詳細に記されている。表紙には、吉田茂、佐藤栄作、田中角栄、竹下登、小泉純一郎といった”お歴々”の顔が並び、いずれも腹に一物も二物もありそうな笑顔だ。外交ジャーナリスト・手嶋龍一と元防衛大臣・石破茂、衆議院外務委員長・鈴木宗男のロングインタビューも掲載されており、読み応えのある内容となっている。

 戦後、GHQと日本政府の間に多くのフィクサー(黒幕)が暗躍して、両国の仲介を果たした。右翼の幹部であったり、ヤクザであったり、女優であったりと、フィクサー達の肩書きはさまざま。白洲次郎や渡辺恒雄、最近では佐藤優など著名な人物の名前もちらほら見受けられる。

 例えば、1972年の沖縄返還。「冷戦構造下における戦略上の拠点として必要」と、アメリカは返還を渋ったが、「密約」を結ぶことで沖縄返還が成立。その密約の秘密交渉にあたったのが、若泉敬という京都産業大学の教授。アメリカが支払うべき沖縄の土地復元費用を日本が肩代わりする密約も同時に結ばれた。71年、毎日新聞の西山太吉記者がこの密約をスッパ抜いたが、国家公務員法違反で有罪となる(西山事件)など、沖縄返還交渉は、とかくキナ臭く、国家にとってアンタッチャブルな事柄なのだ。現在も外務省は密約の存在を公式に認めていない。

 この政治家やフィクサーたちの行為は、決して清廉ではない。のちに逮捕された者、失脚した者も少なくない。だが、国と国がケンケンガクガクで凌ぎを削る交渉のテーブルで、必要とされていたある種の必要悪であったといえる。教科書には書かれていない、テーブルの下でスネを蹴り合うような”ウラ外交”は喜劇に似ている。
(文=平野遼)

戦後「裏」外交史

怖っ。

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最終更新:2010/05/23 15:00
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