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アジア・ポップカルチャーNOW!【vol.17】

「ルーツは『天空の城 ラピュタ』」ウォン・カーウァイに見い出された香港の若き才能

shuhacomic1s.jpg(c)小克

 『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』……子どものころ、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火をつけていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介します。

第17回
イラストレーター/漫画家/アニメーター/脚本家/作詞家

小克(シュウハ)

 小克(シュウハ)は、漫画家であり、脚本家であり、アニメーターであり、作詞家であり、かつてはぬいぐるみ作家だったこともあるマルチタレントだ。本人に、肩書きをどうすればいいかと聞くと「好きなように呼んでいいよ。自分では決められないんだ」という。学生のころにその才能をウォン・カーウァイに見い出され、彼の映画の脚本チームとして参加して以来、小克の活動は香港の若者の注目の的であり、今や香港のカルチャー・シーンでカリスマ的人気を誇る兄貴的な存在だ。
 
 その小克に、日本のことをチラリと振ると、待ってましたとばかりに話し出す。

「日本のテレビアニメを見ること、それが僕の子どものころの一番大切な時間でした。10歳でサッカーを始めたのは、『キャプテン翼(足球小將)』の影響だし。あとは何と言っても『黄金戦士ゴールドライタン(飯冪鋩淪)』。僕の『ハーバー・ヒーローズ』は、ゴールドライタンの深い記憶から生まれた、彼らに捧げた作品です」

61SPTTM6YCL._SL500_AA300_.jpg hourbar-heroes00.jpg(左)「黄金戦士ゴールドライタン」オリジナル・サウンドトラック
(右)「hourbar heroes」(c)小克

 「ハーバー・ヒーローズ」とは、巨大ロボット風に描かれた香港の高層ビル群が、ローカルなネタをめぐって毎回珍騒動を巻き起こす、小克漫画の人気シリーズだ。香港っ子も大好きなヒーローたちの元ネタが、ゴールドライタンだったとは……。

「日本のプラモデルにも夢中でした。バンダイやタミヤの、ガンダムやタンクモデル。特に今も捨てられないのが、『ビッグワンガム』(のおまけについていたプラモデル)!! 子どものころ、母親に連れられてスーパーマーケットに行くたびに『ビッグワンガム』をねだりました。いつも買ってもらえたわけではないけど、僕がスーパーに行きたがった理由は、考えてみたらそれだけでしたね」

「生涯何度でも繰り返し見ることができるのアニメは『天空の城 ラピュタ』。宮崎駿は、僕のスーパーアイドルですから。『ラピュタ』が香港で初めて上映されたのは1986年。僕は12歳でした。ああ!! もう、これって、12歳の男子にとっての、ファンタジーそのものでしょ。冒険、父と息子の関係、愛と友情、夢、空を飛ぶこと、戦争、機械、ロボット、西洋的な風景、環境保護、工業革命、アトランティスの謎の石……他に何が必要か、教えてほしいぐらい! この映画がきっかけで、元ネタの『ガリバー旅行記』も読みました」

illustration1s.jpg(c)小克

 日本アニメを熱く語る小克兄貴。だが、コミックは数えるほどしか読んでいないという。

「テレビはタダだけど、漫画は買ったり借りたりにお金がかかったから。漫画を読まない漫画家というのは変かもしれないけど、でも楳図かずお(媒圖一雄)の『神の左手悪魔の右手』を読んだときの衝撃は今でも覚えているし、大学のときに出会った手塚治虫の『火の鳥』は、未来永劫僕の”ベスト・オブ・ザ・ベスト”です!」 

 小克は小説読みでもある。好きな作家を聞いてみた。

「最近は東野圭吾、向田邦子、宮本輝。東野圭吾は推理小説の発展にすごく貢献していると思う。向田邦子の文章や人物表現、そして彼女の悲劇の人生に感銘を受けました。宮本輝は、常に大好きな作家なのですが、人生を描くときのリアルな描写力、彼の表現するリアリティーがすごい! 僕の作品に直接影響を与えたわけではないのですが、彼の書くものからは、自分とほぼ同じ感覚を受けるんです。まるで自分の考えを書かれているみたいに! 彼と僕は、すごく似た感覚を持っているのかもしれません。『錦繍』は、今まで読んだ中で最高の小説でした」

 この夏、ビッグ・イベントが控えているという。

「香港のテルフォード・プラザというショッピング・センターで「Siuhak’s mass landing 2011」というイベントを行います。7月18日から9月まで、僕の初の個展も開かれるなど、夏いっぱい、カーニバルが続く感じです。時間があったら、是非遊びに来てください!」

■画像ギャラリー<画像をクリックすると拡大します/(c)小克>

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(取材・文=中西多香[ASHU])

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●小克
1974年、香港生まれの典型的なてんびん座。
96年、Hong Kong Polytechnic universityにて BA (Hons) Graphic design修得。
卒業後は、フリーランスで、イラストレーター、漫画家、アニメーター、脚本家、作詞家として活躍中。現在は杭州をベースに、香港を行き来している。
Web site : <http://siuhakfans.blogspot.com/>

なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別藝術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >
オンラインTシャツオンデマンド「Tee Party」<http://teeparty.jp/ashu/>

「黄金戦士ゴールドライタン」オリジナル・サウンドトラック

テコンVみたいな感じね。

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最終更新:2012/04/08 23:19
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