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松江哲明の経済ドキュメンタリー・サブカル・ウォッチ!【第5夜】

俳優・松坂桃季の邪魔をする「情熱大陸」のベタな演出にうんざり!

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俳優・松坂桃季の邪魔をする「情熱大陸」のベタな演出にうんざり! – Business Journal(10月31日)

post_934.jpg24歳…さわやかな笑顔…。
(「情熱大陸HP」より)

――『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』(共にテレビ東京)『情熱大陸』(TBS)などの経済ドキュメンタリー番組を日夜ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で裏読みレビュー!

今回の番組:10月28日放送『情熱大陸』(テーマ:俳優・松坂桃季)

「またこんな演出やってる!」と憤った。

 最近の『情熱大陸』で役者が登場する回は「撮影中でも密着」が当然だ。芝居のリハーサル中でもキャメラは回る。そして本番も。涙を流したり、感情を吐き出すシーンでも『情熱大陸』は容赦しない。なんと芝居をする目線の先でキャメラは待っている。視聴者には「普通」のアングルかもしれないが、役者にとってはたまったものじゃない。

 僕も以前、劇映画のメイキングを撮影していた時に役者の視線の先で構えてしまい、本番の演技を台無しにしてしまったことがある。ただ、確かに役者の違う顔が記録できることはできる。そんな表情を引き出したい気持ちも分からないはない。

 だが、最近の『情熱大陸』でそんな演出がお約束になっている。

 以前も新垣結衣さん、前田敦子さんの回では「ちょっとどいて下さい」といった言葉を彼女たちが発するまで粘っていた。視聴者はそんなタレントの姿を批判したが、僕は全く逆だ。「本番」の邪魔をしなければ撮れないようなことを狙うべきではないし、第一撮影現場のほかのスタッフ、キャストにも迷惑がかかる。今回も芝居に集中する役者に対し、ナレーションでは「それでも粘る」「礼儀正しく追い出された…」としつこく撮影していた。

 僕が憤りを抑え切れなかったのは今回の取材者、松坂桃李に好感を持ってしまったからかもしれない。

「今年大ブレイク! 若手No.1」と画面の左上にテロップが出されていた彼は、ファンはもちろん、取材者からも現場のスタッフからも好かれている。

「自分(ほど)の実力で、このステージに立っているのはおかしいんじゃないのか」と語れば、皆「謙虚だねぇ」「いい人だ」と口をそろえる。テレビのスタッフにラーメンをおごられれば缶ビールでお返しし、自宅に招く。

 室内は驚く程に質素だ。そんなに広くもないマンションの一室には日本映画のDVDが並び、共に缶ビールを飲みながら映画鑑賞。老舗映画雑誌『キネ旬』(キネマ旬報社)で新作もチェックしているらしい。特別大きくもないテレビを前に座る彼をナレーションが「よく言えばシンプル、悪く言えばつまらない奴」と断言する。それは言い過ぎだろう、とも思うが こんな素直な姿が女性に好感を持たれるんだろうな、と思う。

 ちょうど半分に差し掛かった頃に、『情熱大陸』お約束の自己紹介が始まる。ゲストの生年月日や出身地を子どもの頃の写真で見せるアレだ。そこで意外なエピソードが語られる。彼は小学生の頃にいじめられていたと言うのだ。

「こいつら全員、クソ野郎。クラス全員が嫌いだった」とこれまでとは違うトーンの声が聞こえる。その理由は名前。桃という漢字が「女の子みたい」と思われていたそうだ。なんとも小学生らしい、くだらないイジメだろう。

 人と違うものを全否定し、徹底的に攻撃する。彼は目立たなく生きようと決めたらしい。だが、松坂桃李は20年以上溜め込んだ「本音」を演技で発揮することで成功を手にした。そして彼はこの番組で、これまで嫌っていた名前と向き合うことになった。名前の由来は中国の故事「桃李不言下自成蹊」から。桃やすももは何も言わないが、香りにつられて人が自然と集まるという意味らしい。

 父親は「そういう人徳のある人になれ」と願いを込めた。

 桃李はホテルの一室で父に電話をする。父が「生まれる前から付けたいと思っていた」と語る声は、どこかひょうひょうとしながらも優しさを感じさせる。しかし「男にしてみては変な名前だよ。親父の勝手な思いでいじめられてたって知って、初めて申し訳ないと思ったよ」と謝る。だが桃李は「この仕事を始めて名前にインパクトがあるんだと知った。ありがとうございます、と初めて 思ったよ。生まれて20年にして初めて」と感謝し、互いに「初めて」で応答し合っていた。ちょっと涙ぐみながら電話をし、互いに「まーねー」「ありがとう」と笑う合う姿はまさに親子ならではだった。

 僕も彼と仕事をした監督から「素直ですっごくいい俳優だよ」と聞いたことがある。番組を見てもそこに疑いはない。よりブレイクすることは間違いないだろう。

 しかし移動中のワゴン車でおにぎりを頬張る、なんともコンビニエンスな生き方を見てると、こういうタイプの俳優が活躍するのは今っぽいなーとも思うのだ。だから『情熱大陸』も新しい演出を見せて欲しい。撮影の本番で目線の先にスタンバイするなんて、もう「なし」で。
(松江哲明/映画監督)

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最終更新:2012/11/01 14:00
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