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Instagram利用規約騒動にみる教訓とリスク

炎上で露呈…グーグル、アマゾンでもユーザーに所有権ない?

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炎上で露呈…グーグル、アマゾンでもユーザーに所有権ない? – Business Journal(12月26日)

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●Instagram規約変更で炎上

 Instagramは2010年よりサービスを開始し、12年9月には1億ユーザーを突破(米Mashable調べ)したという、世界最大規模の写真共有サービスだ。iPhoneやAndriodアプリとして提供され、ポラロイドカメラのシミュレーション機能(フィルター)でレトロな写真を簡単に作成でき、同じInstagramユーザーとの間で共有できるのが特徴だ。

 Instagramの面白さは、写真を軸にしたコミュニケションにある。Twitterのようにフォロー/フォロワーという関係の中でユーザー同士でオンライン上で写真を見せ合って「いいね!」したり、コメントを入れることで、Twitterのような交流が生まれる。さらに、SNSへの投稿で自分の写真を宣伝し、拡散できることも大きな特徴だ。

instagram1226_01.jpgInstagramは、iPhoneやAndroid携帯で撮影した写真をベースにしたSNSだ

 このInstagramが大変な騒ぎの渦中にある。事の発端は、Instagramが12年12月17日にプライバシーポリシーと利用規約の変更を発表したことにある。その問題点は、InstagramのユーザーデータをFacebookと共有すること(規約には「グループ会社内で共有する」と書かれている)ことで、それに伴い、以下の点が付け加えられた。

(1)ユーザーは、我々(=Instagram)がユーザーに対価を支払うことなく、興味深い有料広告またはスポンサー広告およびプロモーションの配信を促進するため、プロモーションや広告コンテンツにユーザーの名前、リンク、メタデータ付きの写真を表示することにより、企業から使用料を受け取ることに同意。

(2)ユーザーは、我々(=Instagram)がスポンサー企業の費用負担によるコンテンツの表示を行うことについて同意。

 この問題の背景にあるのは、FacebookがInstagramを12年9月に10億ドルで買収し、Instagram上の写真データをFacebookと統合(共有)するというプランに基づくものだ。

 このプライバシーポリシーと規約改定により、

「自分が撮影した写真が勝手に加工されて、どこかの企業の広告用の写真になるのでは?」

「自分の写真が勝手にInstagramやFacebookの所有物になってしまうのでは」

という疑惑がユーザーの間に広がり、Instagramから写真を引き揚げてアカウントを閉鎖するユーザーが続出する、という騒ぎに発展してしまったのだ。この情報はTwitterなどを通じて瞬く間に世界に広まった。特に、米メディアやIT系メディアは一斉にその現象を伝えた。

instagram1226_02.jpgThe New York Timesが報じた、Instagramのアカウントを削除したユーザーの事例
instagram1226_03.jpg米Wiredには「Instagramのアカウントを削除する方法」という記事まで掲載された

●Instagramは謝罪するも、集団訴訟に発展

 この騒ぎを受けてInstagramでは、(1)の条項の記述を取り下げると共に、Instagram公式ブログ(Tumblr)上で同社共同ファウンダー(創業者)、Kevin Systrom氏の名前で「我々の告知が誤解を与えるものだったと謝罪し、Instagramはユーザーの写真を勝手に売ることはないと強調し、ユーザーの写真の所有権や閲覧できる範囲について一切変更がない」と声明を発表した。

 さらに、同社の公式Webサイトでは、12月20日に改定された新利用規約が公開された。また、この規約は13年1月19日から有効になることも明記されている。しかし、この新規約はかなりの長文で、3万文字を超える大変な長文だ。しかも英語でのみ記述され、日本語訳はない。

instagram1226_04.jpgInstagramの最新の利用規約、かなりの長文だ

 そもそも規約やプライバシーポリシーといった文面はわかりにくく、長文のものが多い。今回の騒動も、最初に掲載された文面の意味がわかりにくく、読みにくかったため、大きな誤解が生じたものと考えられる。また、日本語の文面がないため、日本のユーザーはTwitterやまとめサイトなどで交わされる情報を鵜呑みにし「Instagramをやめる」ユーザーが続出したことも否定できない。

 このような状況の中、12月25日のロイター電は、12月21日にカリフォルニア州在住のInstagramユーザーが、契約違反などを主張してInstagramをサンフランシスコの連邦地方裁判所に提訴したことを報じた。同社の親会社であるFacebook広報担当者は「断固として戦う」というコメントを出しているという。まだまだ騒ぎは収まる様相を見せない。

●今一度、利用規約を理解して冷静に判断しよう

 この民事訴訟によって、これまで明るみにされていなかったような事実が発覚し、新たな問題が浮き彫りになるのか、それとも、単なる現状の問題を指摘するにとどまるような訴訟で終わってしまうのかはわからない。

 だが、裁判の行方はともかく、深刻な問題点は、Instagramが難解で長文の規約やプライバシーポリシーのみ(しかも英文のみ)を掲載するにとどめているということだ。日本をはじめ、非英語圏のユーザーは、これらの規約やプライバシーポリシーを理解しないまま使わざるを得ないという現実がある。少なくとも、Instagramはワールドワイドなサービスであり、アプリを配布する国々の言語で、わかりやすく説明をすべきだろう。少なくともFacebookとInstagramは、この件を教訓にして、さらなる努力をすべきと考える。

 同時に、私たちが利用しているWebサービスは、自分のデータやプライバシーをどう扱うのかを、これを機会にしっかり理解しておくことが求められている。

 たとえば、Google純正のストレージサービス「Google Drive」も同様の騒ぎがあり、

「ストレージにアップしたコンテンツは、Googleが勝手に使ってもいい」

「アップされたコンテンツはGoogleが所有する」

ともとれる内容の利用規約やプライバシーポリシーが掲載されている。その内容は次のようなものだ

「本サービスにユーザーがコンテンツをアップロードまたはその他の方法により提供すると、ユーザーは Google(および Google と協働する第三者)に対して、そのコンテンツについて、使用、ホスト、保存、複製、変更、派生物の作成(たとえば、Google が行う翻訳、変換、または、ユーザーのコンテンツが本サービスにおいてよりよく機能するような変更により生じる派生物などの作成)、(公衆)送信、出版、 公演、上映、(公開)表示、および配布を行うための全世界的なライセンスを付与することになります。このライセンスでユーザーが付与する権利は、本サービスの運営、プロモーション、改善、および、新しいサービスの開発に目的が限定されます。このライセンスは、ユーザーが本サービス(たとえば、ユーザーが Google マップに追加したビジネスリスティング)の利用を停止した場合でも、有効に存続するものとします。」

 もっとわかりやすい例もある。アマゾンのKindleストア利用規約には「Kindleコンテンツの使用」欄に「Kindleコンテンツは、コンテンツプロバイダーからお客様にライセンスが提供されるものであり、販売されるものではありません」と明記されている。つまり、アマゾンから紙の本を買えば自分のものだが、電子書籍となると、お金を払ってもユーザーに所有権がない。Kindleユーザーは、これに「同意」したことになるのだ。

instagram1226_05.jpgアマゾンKindleの利用規約の一部。このサービスがライセンスの付与にとどまることを明記している

 少なくとも、Instagramのこの騒動は、我々が利用するサービスの条件に、利用者に不利な事項が隠されている可能性というものを示唆している。確かに、規約やプライバシーポリシーはわかりにくく読みづらい。

 だが、可能なら自分がアクティブに利用するサービスにどのような条件が設定されているのか、これらの文章に今一度目を通すことをお薦めしたい。ネットに流れるデマやまとめサイトを鵜呑みにして短絡的に行動するのでなく、冷静に情報を収集・判断した上で行動するようにしたいものだ。
(文=池田冬彦)

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最終更新:2012/12/28 07:00
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