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アカデミー賞11部門にノミネート アン・リー監督最新作『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』

lifeofpai.jpg(c)2012 Twentieth Century Fox

 今週も数多く封切られる新作映画のうち、人気小説を原作とし映画ならではの表現が印象的な洋画と邦画2作品を紹介したい。

 1月25日公開の『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』(2D/3D上映)は、先頃発表されたアカデミー賞候補作品のうち11部門でノミネートを果たしたことでも話題のアン・リー監督最新作。1960年代のインドに生まれたパイは、父親が経営する動物園でさまざまな動物たちと触れ合いながら成長し、初恋も経験する。16歳になり、カナダへの移住を決めた両親と共に動物たちを乗せた貨物船でインドを出発するが、洋上で嵐に遭遇して船が沈没。荒れる海の中、ただ1人救命ボートにしがみついて一命を取りとめたパイだったが、ボートにはシマウマ、ハイエナなどのほか、体重200キロを超すベンガルトラがいた。

 カナダの作家ヤン・マーテルによる世界的ベストセラー小説を、『ブロークバック・マウンテン』(05)でアカデミー賞監督賞を受賞した名匠アン・リーが映画化。腹を空かせた猛獣との過酷な洋上サバイバルは映像化困難と思われていたが、最新CGで本物と見分けがつかないリアルさで描かれたベンガルトラ、巨大タンクでの実写とCGを合成した海の多彩な表情、演技未経験ながらエモーショナルな表現が見事な主演のスラージ・シャルマ、そしてもちろんリー監督の巧みな演出によって、娯楽性と芸術性を高いレベルで併せ持つ傑作が誕生した。3D上映で鑑賞すれば、迫ってくるトラや荒れ狂う波の恐ろしさ、幻想的に輝く夜の海と生物の美しさをよりリアルに体感できるだろう。

 もう1本の『さよならドビュッシー』(1月26日公開)は、『桐島、部活やめるってよ』(12)の橋本愛が主演した音楽ミステリー。裕福な家に生まれ、ピアニストを目指して音楽高校に通う遥(橋本)はある夜、祖父と従姉妹のルシアと火事に遭い、1人だけ生き残る。顔面も含む全身の大やけどから、数度の皮膚移植と高度な整形手術で元通りの外見を取り戻した遥。ピアニスト・岬(清塚信也)のレッスンを受けながら、コンクール優勝に向けて懸命に努力するが、遥の命を狙うかのような出来事が続き、ついには重大な事件が発生する。

 心身に傷を負い陰のある難役を、ときに繊細に、ときに凛々しく演じた橋本愛が圧倒的に素晴らしく、彼女のファンなら言うまでもなく必見。イケメンの現役ピアニスト、清塚信也が本格的な俳優デビューを飾り、劇中のピアノ曲も実演している。監督は、俳優としても活躍する利重剛。中山七里による原作小説は「このミステリーがすごい!」第8回大賞を受賞しているが、映画版で謎解きに過度に期待すると肩すかしを食らう。とはいえ、ドビュッシーの「月の光」や「アラベスク」といった名曲をたっぷり聴かせながら、秘められた謎に迫っていく構成は、クラシックとミステリーを両方楽しみたい、という欲張りな観客のニーズに応えてくれるかも。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』作品情報
<http://eiga.com/movie/57676/>

『さよならドビュッシー』作品情報
<http://eiga.com/movie/77386/>

最終更新:2013/01/26 21:00
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