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AKB河西「手ブラ写真集」騒動でわかった 隠蔽される少年への性的虐待

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AKB河西「手ブラ写真集」騒動でわかった 隠蔽される少年への性的虐待 – Business Journal(2月5日)

『卓上 AKB48ー132河西 智美
カレンダー 2013年』(わくわく製作所)

 版元・講談社の事情聴取という事態にまで発展したAKB48・河西智美の「手ブラ写真集」騒動。お得意のメディア操作で芸能マスコミは黙らせているものの、写真集が発売中止に追い込まれたうえ警察沙汰にまでなったわけだから、AKBや講談社の受けた損害・イメージダウンはけっして小さいものではない。

 しかしそうなると、改めて不思議に思うのは、彼らがなぜこんな写真集をつくってしまったか、である。児童ポルノ法、そして青少年育成条例施行後、大手出版社も芸能界も児童ポルノには非常に神経をとがらせてきた。それが、今回は児童ポルノどころか、乳房との接触強要という性的虐待の疑いもある写真を堂々と表紙にしてしまったのだ。

「それは相手が男の子だったからですよ。マスコミは少女の性的描写については慎重ですが、少年となるとほとんど気にしない」(大手出版社社員)

 実際、当初は講談社だけでなく他のメディアも今回の写真集の問題点にまったく気づいていなかった。スポーツ新聞などはAKB・講談社のパブリシティにのっかり、発売直前に堂々と問題の写真を掲載したうえ、「豊満バストの手ブラ披露!」「一糸まとわぬセクシー姿で悩殺」「超過激な手ブラショットを披露」などと煽り立てていたのだ。

 また、熱烈なAKBファンで知られるマンガ家の小林よしのりにいたっては、問題発覚後も「この程度の写真が載せられないことにも十分驚いたが、写真集そのものが発売白紙というニュースにはつくづくあきれた」と手ブラ写真擁護論を展開している。

 こうした少年ポルノへの甘い対応の背景にあるのは、「男の場合は性的虐待にならない」という先入観だ。

「男は常に女性との性的接触を望んでいる、女性とできるなんてラッキーだという思い込みがある。それが性的虐待を受けるわけがない、受けたとしてもたいしたことがない、という意識につながっていると思います」(児童虐待に詳しい心理カウンセラー)

 以前、河西と同じAKB48の高橋みなみの母が、少年への複数回のわいせつ行為で逮捕された事件があったが、この時も同様の構図があった。淫行という重大な容疑で刑事事件になっているにも関わらず、メディアやファンの間では「しつこく性的関係を求めたのは少年のほうで、たかみなの母親はむしろ被害者」という見方が広がって、報道が尻すぼみに終わってしまったのだ。

「この時は、AKBサイドがメディアにそういう情報を流して報道を封じ込めた経緯がありましたが、その情報操作を受け入れたベースにはやはり、『男が性的虐待を受けるはずがない』という意識があったと思う」(スポーツ紙記者)

 しかし、この「男が性的虐待を受けるはずがない」という先入観は、明らかに認識不足といわざるをえない。

 例えば、アメリカの臨床心理研究家・リチャード・B・ガードナーが出版した研究書『少年への性的虐待』によれば、アメリカの一般男子大学生を対象とした調査で、16歳までに直接的な(接触のある)性的虐待を受けたと回答した数は全体の18%、接触のない虐待も含めると、被害者は28%にものぼるという。

 また、同書は、有名なシアトルの小学校女性教師妊娠事件をはじめ、少年の性的虐待被害の具体的な事例を複数紹介しているが、その内容がすさまじい。同じような教師による男児への性的いたずらはもちろん、37歳の女性が近隣の少年をレイプしたケース、修道女が男児に1年間にわたって自分の性器を触らせ続けていたケース、さらには、母親の息子に対するセックス強要、さらには父親による息子への性的虐待……。

 これらの現象は、女性が強く、ゲイの多いアメリカだからだと思われるかもしれないが、けっしてそうではない。日本でも2003年、アジア女性基金が行った「高校生の性暴力被害実態調査」では「無理やりセックスをされそうになったことがある」と回答した男子が2.7%、「無理やりセックスをされた」と回答した男子が1.5%。05年に実施された「青少年の性行動全国調査」では、「性的行為を強要されたことがある」と回答した高校生男子が1.2%、「相手の裸や性器を見せられた」と回答した男子が4.8%にのぼった。

 しかも、こうした数字は氷山の一角だと専門家はいう。

「アメリカでも男児の場合は性的虐待を受けながら、自分自身がその被害者感情を抑圧し、体験を封印してしまうケースが多い。アメリカよりも閉鎖的な日本ではもっとこの傾向が強いですから、実際には10%近い男児が性的虐待を受けている可能性がある」

 そして深刻なのは、こうした性的虐待を受けた少年たちが、女児のケースと同等かそれ以上にひどいトラウマを負っている可能性があることだ。先の『少年への性的虐待』でも抑うつ状態や性的不能になったケース、さらには自分自身が性的虐待の加害者になってしまったケースなどが多数紹介されている。

 そう考えると、河西智美の騒動も「この程度の写真で……」の一言で片づけられる話でないことがよくわかるだろう。むしろ、今回の騒動を契機に、これまでひた隠しにされてきた少年への性的虐待の実態を明るみに出し、対策をきちんと考える必要があるのではないか。

 もっとも、この国ではそれ以前に、どんなスキャンダルを引き起こしてもほとんど報道されることのないこの異常なAKBタブーをなんとかしなければいけないのかもしれないが……。
(文=須田 林)

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最終更新:2013/02/06 07:00
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