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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.220

きうちかずひろvs. 三池崇史による“男の世界”!『藁の楯』に立ち込める濃厚なるVシネマの香り

waranotate01.jpg従来の邦画のスケールから逸脱したアクション娯楽作『藁の楯 わらのたて』。
SPの銘苅(大沢たかお)は自分の体を楯にして、凶悪犯を護衛するはめに。

 人間の持つ倫理観ほどモロいものはない。それはまるで藁で編んだ楯のようだ。時代や状況によって、いとも簡単に破れてしまう。だが、そんなフニャフニャな楯でも、追い詰められた人間は藁にもすがる想いで振りかざすしかない。その姿は台風の中でビニール傘を差すようで、あまりにもこっけい過ぎる。木内一裕原作、三池崇史監督の『藁の楯 わらのたて』は人間社会を成り立たせている倫理観をテーマにしたアクションエンターテイメントだ。“作家・木内一裕”という字面にピンと来ない人は音読してほしい。そう、『BE-BOP-HIGHSCHOOL』で一世風靡した漫画家きうちかずひろ氏の作家名義なのだ。長年にわたって“男の世界”を描き続けてきた漫画家きうち氏の処女小説を、バイオレンス&アクション描写では他の追随を許さない三池監督が映画化。むせ返るような2人の男が出会ったとき、そこに何が生まれたのか。男たちのほとばしりが『藁の楯』を匂い立たせる。

 『藁の楯』は2004年に小説として発表されたものだが、それは日本映画界への挑戦状だった。1990年代にレンタルビデオ店に通っていた人間なら、Vシネマ初期の傑作と評される竹中直人主演の『カルロス』(91)や中年探偵とヤクザとのバディムービー『鉄と鉛』(97)といったタイトルがアクションコーナーに並んでいたことを覚えているだろう。木内氏は漫画家きうちかずひろとは別に、ガンアクションにこだわりを見せる映画監督としての顔も持っていた。Vシネマは表現の規制がゆるい反面、製作費は非常に限られている。いつかもっと予算をふんだんに使えるようになったときのためにと木内氏がアイデアをしたためていたのが『藁の楯』だった。殺人犯に10億円の懸賞金が懸けられるという破天荒な設定、列島縦断という大掛かりなロケ、新幹線内での銃撃戦、派手なカーチェイス……。従来の邦画だったら、脚本段階で削り落とされるだろう「非・邦画」的要素が目一杯に散りばめてある。こんな常識知らずの企画を監督できるヤツが日本にいるのか? 木内氏からの挑戦状を受け取ったのが三池監督だった。

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