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『アメリ』監督4年ぶりの新作は自身初の3D 天才少年の旅を描く『天才スピヴェット』

m0000000747.jpg『天才スピヴェット』(C) EPITHETE FILMS – TAPIOCA FILMS – FILMARTO – GAUMONT – FRANCE 2 CINEMA

 今週取り上げる最新映画は、宮沢りえが不倫をきっかけに横領に手を染める難役に挑んだ7年ぶりの映画主演作と、女性を中心に高い支持を集めた『アメリ』(2001年)の監督が天才少年の旅を描く自身初の3D作品。どちらの主人公も特殊な「冒険」に踏み出すが、恋愛や家族のあり方、現実との向き合い方という普遍的なテーマが込められた2本だ(共に11月15日公開)。


 『紙の月』は、ベストセラー作家・角田光代の同名小説を、『桐島、部活やめるってよ』(12年)の吉田大八監督が映画化したサスペンスドラマ。夫と2人で暮らす梨花(宮沢りえ)は、銀行の契約社員として外回りの営業を任され、丁寧な仕事ぶりで顧客から信頼を得、職場でも評価されていた。多忙な夫(田辺誠一)との希薄な結婚生活にむなしさを感じていた頃、年下の大学生・光太(池松壮亮)と出会った梨花は、外回りの帰りに化粧品を買おうとして代金が不足し、顧客の預金に手をつけてしまう。最初は1万円を借りただけのつもりが、次第にエスカレートし、顧客の預金証書を偽造する方法で横領を繰り返すようになる。

 まじめな兼業主婦の銀行員が若い男との道ならぬ恋をきっかけに、顧客から預かった金を着服し転落していく過程を、宮沢りえが切なく哀しく透明感漂う演技で熱演。行内での横領の手口が緊張感たっぷりに描かれており、観客は主人公に感情移入してハラハラしながら眺めることになる。不倫愛の破局と犯罪の発覚を予感しつつも、ヒロインの幸せを願ってしまうはず。先月開催された東京国際映画祭では、コンペ部門で最優秀女優賞と観客賞を受賞しており、宮沢りえと吉田監督の評価が海外でも高まることを期待したい。

 『天才スピヴェット』(2D/3D上映)は、日本でも大ヒットした『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督による4年ぶりの新作。米北西部モンタナの牧場で、発明が趣味の天才少年スピヴェットは、カウボーイの父、昆虫学者の母、アイドル志望の姉と一緒に暮らしている。だがスピヴェットの弟の死で、家族の心はバラバラになっていた。そんな折、スミソニアン博物館に送った発明が権威ある科学賞を受賞。スピヴェットは授与式に出席するため、家族に黙って家を後にし、貨物列車で米東部シカゴを目指して大陸横断の旅に出る。

 原作は、ライフ・ラーセンの冒険小説『T・S・スピヴェット君 傑作集』(早川書房刊)。ジュネ監督は自身初となる3D映画で、原作本にある人物画やスケッチなどの挿絵を実写映像から浮遊するように重ねるなど、創意工夫あふれる立体的な映像で表現した。昆虫の標本などの3D描写も絶品で、ウェス・アンダーソン監督の箱庭世界に通じる映像体験を味わえる。主演のカイル・キャトレットは、これが映画初出演ながらピュアで繊細な演技で魅了する。繊細なスピヴェットの冒険と葛藤と成長に触れつつ、家族の関係性と愛情に思いをめぐらせ、胸が温かくなる感動作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『紙の月』作品情報
<http://eiga.com/movie/79885/>

『天才スピヴェット』作品情報
<http://eiga.com/movie/79745/>

最終更新:2014/11/14 21:00
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