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火星にたった1人──前人未到のサバイバルをマット・デイモンが熱演! アカデミー賞ノミネート作『オデッセイ』

600_mkt_0950_sharp(C) 2015 Twentieth Century Fox Film

 今週取り上げる最新映画は、火星に取り残された探査隊員のサバイバルを描くSF作品と、2011年に他界したアップル創業者の実像に迫る伝記ドラマ。いずれも今年の第88回アカデミー賞(2月28日発表)に複数部門でノミネートされている傑作だ。

『オデッセイ』(2月5日公開、2D/3D上映)は、リドリー・スコット監督、マット・デイモン主演のSF超大作。火星での有人探査中、探査船を倒しかねない大嵐に見舞われNASAの宇宙飛行士ワトニーが吹き飛ばされてしまう。死亡したと推測されるワトニーを残し、仲間たちは探査船を緊急発進させ、火星を去る。だが、負傷しながらも生きていたワトニーは、酸素も水も食料も乏しく、通信手段もない絶望的な状況で、4年後の次回探査まで生き延びようと決意。あらゆる手段を講じてゆく。


 原作は、プログラマー出身のアンディ・ウィアーがネット上で連載し、電子書籍化されてベストセラーになった『火星の人』。脚本は、監督デビュー作『キャビン』(2013)でホラーの約束事を脱構築してマニアをうならせたドリュー・ゴダードが担当した。『エイリアン』(1979)、『プロメテウス』(2012)でも宇宙SFを手がけてきたスコット監督は、火星地表の雄大な景観、探査基地でのサバイバル生活、手に汗握る火星脱出の試みなどを、3D映像で臨場感たっぷりに描き出す。デイモンが演じるワトニーは、豊富な知見と創意工夫で難題を乗り切るポジティブさや、記録用ビデオにジョークを交えて自分語りするユーモアで、観客も一緒にサバイバルを体験している気分にさせてくれる。アカデミー賞には作品賞をはじめ7部門でノミネートされた。

『スティーブ・ジョブズ』(2月12日公開)は、アップル創業者スティーブ・ジョブズの生き様を、3回の製品発表会の舞台裏を通じて描くドラマ。現在のパソコンの原型となった1984年のMacintosh。アップルを追放された後に再起を賭けた88年のNeXT Cube。復活を印象づけた98年のiMac。注目を集める発表会本番の直前、ジョブズ(マイケル・ファスベンダー)は控え室や通路、舞台を忙しく移動しながら、問題を急いで解決しろと部下を脅し、同僚や元恋人と言い争い、側近のジョアンナ(ケイト・ウィンスレット)に不満をぶちまける。元恋人との間に生まれた娘リサも舞台裏に現れるが、ジョブズは父親としてうまく接することができない。

 作家ウォルター・アイザックソンがジョブズ本人のほか、多くの関係者に取材した公式伝記が原作。『ソーシャル・ネットワーク』(11)でアカデミー賞脚色賞を受賞したアーロン・ソーキンは、転機となった3度の発表会に、独自取材の情報も盛り込んだ会話劇として脚本化した。『スラムドッグ$ミリオネア』(09)のオスカー監督ダニー・ボイルは、実録風カメラワークに映像的ギミックも添え、言葉の応酬で緊迫感を増す舞台裏の人間模様を描き出す。革新的な製品の開発過程もプレゼンの本番も大胆に省略し、“人間ジョブズ”に迫ろうとするスタンスが印象的だ。膨大なせりふの難役を熱演したファスベンダーとウィンスレットは、アカデミー賞主演男優賞と同助演女優賞にそれぞれノミネートされている。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『オデッセイ』作品情報
<http://eiga.com/movie/82409/>

『スティーブ・ジョブズ』作品情報
<http://eiga.com/movie/83404/>

最終更新:2016/02/05 23:00
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