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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.383

反日思想とも自虐史観とも異なる歴史サスペンス!“猟奇的な花嫁”チョン・ジヒョン主演作『暗殺』

ansatsu0714_01「お父さん、ありがとう」という感謝の言葉の代わりに『暗殺』の花嫁(チョン・ジヒョン)は拳銃を向ける。“父殺し”は本作の裏テーマだ。

 8月15日は日本人にとって終戦記念日として認識されているが、お隣の韓国では日本からの独立を果たした“光復節”として祝日となっている。もうひとつ、8月29日も韓国人にとっては忘れられない記念日だ。こちらは“庚戌国恥日”とされ、1910年に朝鮮半島が日本に併合された国辱記念日となっている。1910年8月29日から1945年8月15日までの36年間は“日帝時代”と呼ばれ、多くの韓国人の脳裏には暗い時代として刻まれている。そんな日帝時代の京城(現ソウル)を主舞台にした韓国映画『暗殺』は、抗日ゲリラとして歴史の裏側で暗躍した人々を主人公にしたアクション大作として韓国で記録的なヒット作となった。一見すると日本人を悪者として描いた反日映画かと思ってしまうが、ラストシーンまで観ることで韓国人にとっても日本人にとっても、実に味わい深い歴史ドラマであることに気づく。

 日帝時代は韓民族にとってなかったことにしたい時代であり、この時代を題材にした映画はヒットしないと、タブー知らずの韓国映画界でもタブー視されてきた。日本と韓国で、また韓国内でも歴史認識が大きく異なる複雑な時代なのだ。日本に併合される以前の朝鮮半島は、ずっと封建体制が続いたままの弱小国だった。併合をきっかけに、半島内のインフラや教育制度が整い、各種産業が発達し、近代化への足掛かりとなった歴史の転換期でもあった。ギャンブラーを主人公にした『タチャ イカサマ師』(06)でブレイクし、犯罪エンターテイメント快作『10人の泥棒たち』(12)を大ヒットさせたチェ・ドンフン監督は、この激動の時代を価値観が定まっていなかった描きがいのある時代として捉えている。善悪という道徳論に囚われないアウトローたちが活躍するチェ・ドンフン監督作品のキャラクターたちにとっては、逆に魅力的な時代なのだ。

『暗殺』には表の主人公と裏の主人公がいる。表の主人公となるのは、『猟奇的な彼女』(01)が日本でも大ヒットした人気女優チョン・ジヒョンが演じる愛国義士のアン・オギョン。満州で抗日スナイパーとして活躍していた彼女は、韓国臨時政府から速射砲(チョ・ジヌン)、爆弾職人(チェ・ドクムン)たちと共に召還され、京城にいる日本政府の高官と日本に媚びを売って利権を手に入れた親日派の朝鮮人実業家を暗殺せよと命じられる。オギュンたちは日韓政略結婚を控えた日本高官と親日派の実業家が会食に出掛ける機会を暗殺決行日に定めるが、この暗殺計画は日本側に漏れており、日本側に雇われた賞金稼ぎハワイ・ピストル(ハ・ジョンウ)がオギュンたちの行く手を阻む。スナイパーとしての凄腕ぶりを発揮するオギュンだったが、奮戦むなしく暗殺は失敗。多大な犠牲を払ったオギュンは単独でのリベンジマッチを誓う。

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