日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 恐怖と暴力『クリーピー 偽りの隣人』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.378

北九州監禁殺人事件、尼崎変死事件に似ている!! 恐怖と暴力による洗脳『クリーピー 偽りの隣人』

creepy01黒沢清監督にとって久々の犯罪サスペンス『クリーピー 偽りの隣人』。身近なところから、かつてない恐怖が忍び寄る。

 今年1月に劇場公開された中村義洋監督の『残穢 住んではいけない部屋』は、かなり不気味なホラー映画だった。自分が住んでいるマンションは以前どんな人間が暮らしていたのかよく分からないという、地縁や血縁から切り離された現代人の浮遊感・不安感がもたらす恐怖を描いていた。黒沢清監督の『クリーピー 偽りの隣人』もまた流動性の激しい都市部で起きる怪事件を扱ったものだ。『クリーピー』には幽霊などオカルト系の類いはいっさい現われないが、幽霊以上におぞましく、常識がまるで通用しない“ご近所さん”がこちらに向かって近づいてくる。

 近年は『トウキョウソナタ』(08)や『岸辺の旅』(15)など非ホラー系の家族ドラマが高く評価されている黒沢監督にとって、『クリーピー』は『CURE キュア』(97)以来となる久々の犯罪サスペンス。黒沢監督のブレイク作『キュア』では萩原聖人が催眠術を巧みに操り、次々と遠隔殺人を行なった。だが、『クリーピー』はさらに現代的にバージョンアップされた形となっており、催眠術を使わずとも人間がいとも簡単にマインドコントロールされてしまう恐ろしさが描かれている。

 2011年に発表された前川裕の処女小説『クリーピー』(光文社)が原作だが、黒沢監督は原作の設定だけをもらって、ストーリーは映画独自の展開となっている。犯罪心理学者の高倉(西島秀俊)は妻の康子(竹内結子)と共に東京の都心部から少し離れた静かな住宅街に引っ越してきた。お菓子を持って引っ越しの挨拶回りをするが、このへんはご近所づきあいがないらしく、ろくに挨拶ができないまま引っ越し初日を終える。後日、康子がひとりで改めて隣家を訪ねると主人の西野(香川照之)が出てきたが、あまりに不躾な態度で康子はショックを受けてしまう。中学に通う西野の娘・澪(藤野涼子)はきちんとしているだけに、余計に西野家のことが気になってしまう。

123
ページ上部へ戻る
トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真