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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.404

“理想の夫婦”を演じたエリートカップルの惨劇!! 共依存による殺人事件『ひかりをあててしぼる』

hikariwoatete01渋谷エリートバラバラ殺人事件を題材にした『ひかりをあててしぼる』。都心の高級マンションで暮らす夫婦の間に何が起きたのか?

 事件は2006年12月12日に起きた。新宿、渋谷でバラバラに切断された男性の遺体が発見され、中国系マフィアの仕業ではないかと噂された。やがて、バラバラ死体は外資系投資会社に勤める30歳のエリートサラリーマンであることが判明し、翌年1月になって代々木公園近くのデザイナーズマンションで暮らしていた被害者の妻・三橋歌織(事件当時32歳)が逮捕される。凶器はワインボトルで、就寝中の夫の頭部を何度も殴りつけ、ノコギリによってバラバラにしている。逮捕直後は夫のDVに苦しめられていた美人妻の逆襲として騒がれたが、事件の真相はそう簡単なものではなかった。ブランド品を愛する虚言癖のある女とギャンブル好きで虚栄心の強い男というある意味よく似た、でも出会ってはいけない男女間に起きた惨劇だった。映画『ひかりをあててしぼる』はこのミステリアスな事件をモチーフに、夫婦間の闇にスポットライトを当てた密室ドラマとなっている。

 浩平(忍成修吾)と智美(派谷恵美)は合コンの席で出会った。社長令嬢で、お嬢さま大学を出ている智美は人目を惹く華やかさがあった。ひと目惚れした浩平は智美が暮らすマンションに転がり込み、やがて2人は結婚することに。周囲は美男美女のカップルとして祝福する。だが、弁護士事務所に勤める浩平は弁護士ではなく司法浪人の身。智美は浩平の子どもを身籠るも、浩平の収入が少ないこと、自分の自由がなくなることから一方的に堕胎してしまう。

 ブランド好きな智美がイメージする“理想の夫”になろうと、浩平は外資系の有名企業に転職。念願叶って年収1000万円以上の高給取りとなるが、そのころから浩平は暴力を智美に振るうようになっていく。専業主婦となった智美はカードで高額な買い物を続け、浩平には浮気相手がいた。2人は完全な“仮面夫婦”だった。浩平のDVは次第に激しくなっていくが、智美はマンションから逃げ出そうとしない。これ以上、智美を殴り続ければ殺してしまいかねない。恐ろしくなった浩平は「離婚してほしい」と懇願するが、智美は離婚届にサインすることを頑なに拒む。ある晩、智美はワインボトルを手に、ついに一線を越えてしまう──。

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