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『ゆゆ式』だけではない──BBCで放送された日本の児童ポルノ番組 55分間のあらすじと登場した作品

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■取材手法は正当。では問題は?

 長文を用いて番組の全体像を語りました。その上で、この番組の抱える問題について記していきましょう。

 まずStaceyの取材手法ですが、これはまったく問題ありません。55分の番組の中で、Staceyはさまざまな場所で、多くの人に出会っています。

 そこでは、硬軟使い分けてさまざまな取材手法を用いているのがわかります。

 冒頭のJKお散歩店との悶着は、こうした取材をやれば、用心棒が出てくるのは想定の範囲内と考えたはず。出てくるも何も、いつも明らかに用心棒な雰囲気の男たちが、ケンタッキーの前あたりに立っているわけですし。

 続く、合法JKカフェでの取材では、自分も取材者ではあるものの客のように振るまい、胸襟を開きつつ、づけづけと聞いています。

 着エロ制作現場の取材も同様で、先に撮影しているところを、ある程度取材し、モデルとも距離を縮めることで、制作サイドの警戒心を解いています。

 伊藤弁護士へは、至極真面目に児童の性的搾取の問題を取材に来た海外メディアという立ち位置。

 そして、ダニエル氏への取材では、感情むき出しにケンカを売る姿勢で、コメントを引き出しています。

 それらの取材手法の中に通底しているのは、獲物に食らいついたら離さない意志です。言論・表現の自由をめぐる問題に至るまで、御用やらエア御用が当たり前の我が国にあって、これは猛省すべきところでしょう。何しろ、大手新聞社やテレビ局でもないというのに、レポーターのごとく「行った・見た・聞いた」で取材をした気になっている。その裏に潜む事実や感情を描こうとする姿勢が見られない書き手ばかりなのですから。

 しかし、取材手法には見習うところが多いとはいえ、Staceyには重大な欠点があります。

 それは、自身が<予断>に振り回されていること。

 通例、取材を行う前に予断、すなわち想定される結論を考えるのは必要な作業です。ですが、それは取材のテーマをブレないものにするためのもの。結果、取材によって得た情報でAだと思っていたらBだった。あるいは、AでもBでもなく、Cだった。そんな右往左往するさまを文章や映像で記録していくのが、取材というものです。とりわけ知らなかったことの発見は、取材が形をなったとき、味を濃いものにします。

 ところが、この番組は冒頭22秒から、下調べが不足していることを露呈しています。おまけに取材者自身が予断にすがり続けているので、豊富な取材が単なる、予断の事実確認の記録へと堕ちています。ヨーロッパでも良質のドキュメンタリーは数多く制作されているはずですが、見たことはないのかというほどにひどい。

 なんの本質にも迫ることができていない、物見遊山の記録になっているのです。

 言い方を変えれば、取材対象として個人を追わずに、状況の表面だけを舐めているということ。このStaceyという人は、個々人がなぜそうしているか、なぜそこに至ったかに、まったく興味を抱かないのでしょう。

 この個人の人となりに興味を持てない脆弱性が、Staceyを日本では数年前まで児童ポルノが合法で、女子高生が貧困で売春していて、エロマンガによって児童レイプの犯罪者が生まれている……などの予断から、一歩も動けなくしているのでしょう。

 なんにせよ、このようなデキのドキュメンタリーにも予算を出してくれるBBC。そこだけは魅力的だと思いました。
(文=昼間たかし)

最終更新:2017/03/07 11:30
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