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アダルトから東京オリンピックへ──

ジャンルを越境する表現の自由を体現するルポルタージュ 昼間たかし『コミックばかり読まないで』

「これのどこが亀頭なんですか!? ただのおっさんの頭じゃないですか!」

 2007年頃だっただろうか、当時、某実話誌の編集者だった筆者は、営業部に内線電話をする編集長の失笑混じりの声を聞き、何事かと彼のデスクを覗いた。

「これ見てよ。営業部が、ここにモザイク入れろってさ」

 編集長が見せてきたのは、とあるエロページの初校(印刷所から上がってきた第一校)だった。頭頂部ハゲのおっさんの後頭部が、“全裸の女性の股間付近にかぶり、おかげで女性のアソコがモザイクがないのに隠れている”という写真が掲載されたページである。

「『おっさんの後頭部が亀頭に似て卑猥だから、おっさんのハゲ頭にモザイク入れろ』って……」

 なんてアホらしい、という表情の編集長だったが、結局オッサンのハゲ頭にはモザイクが入った。

 その頃の私たちは、せっま~い世界ながらも、日々自主規制と戦っていた。表紙モデルにセーラー服を着せることができなくなり、「女子高生」という記述が「女子校生」ならOK、となった。男女のセックス写真が掲載される場合、局部のみのモザイクではなく、女性に触れる男性の体全てにモザイクが入るようになった。苦肉の策として、男性モデルに全身黒タイツを着せたこともあった。このあたりまでなら「そりゃそうか、“テープ綴じ(成人向けほどではないが、アダルトな内容を扱う雑誌に対して、立ち読み防止のためのシールで留めた雑誌)”じゃないもんな」と納得できた。

 近年では、ベッドに白濁色の液体が滴っている写真はNG、上半身ヌードでのキス写真もNG、あげく、日本の芸術作品として世界中から評価されている春画にもモザイクが入った、なんてケースも聞いたことがある。

 猥褻とは一体、なんなのだろう──。

 このたびルポライター・昼間たかし氏が上梓した『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)には、前述のせっま~い世界での“亀頭事変”の火付け役であろう大本営の東京都と出版界との、“表現の自由”をめぐる攻防戦が詳細に記されている。

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