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MC内郷丸「現代アイドルソング学概論」第5回

モーニング娘。’17「BRAND NEW MORNING/ジェラシー ジェラシー」に見る、“ヒップホップ的マッチョイズム”

 ラッパーブームといわれる昨今、アイドルがラップを、ラッパーがアイドルの楽曲を手掛けることは珍しくない。この連載では、アイドルファンで「社会人ラップ選手権」決勝進出経験を持つ、ラッパーのMC内郷丸が“ラッパー的観点”から毎月大量にリリースされるアイドルソングを定点観測。

モーニング娘。’17『BRAND NEW MORNING』(Morning Musume。’17[BRAND NEW MORNING])(Promotion Edit)

 今回の「現代アイドルソング学概論」は、今月発売されたアイドルソングを何曲かピックアップして紹介。楽曲を紹介するにあたり、少し遠回りになるが、別の話を挟むことにしよう。

 先日、「ユリイカ」(青土社)の日本語ラップ特集を読み返していたのだが、ラッパーの般若がインタビューでとても興味深いことを言っていた。般若といえば、現在『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)でラスボスとして君臨している。チャレンジャーとの対戦のためにステージに上がるとき、彼はいつも上裸で鍛えられた身体を見せつけているが、そもそも彼がトレーニングを始めたのは、「ライブをやるにあたって身体がキツくなってきた」からだという。

 海外のヒップホップアーティストでも筋骨隆々な人間が多く、特にギャングスタ系のヒップホップはマッチョイズムが強い。般若もまた、そういった文化に影響を受けたのではないかと思っていたのだが、単純にそういうわけではないようだ。般若は先のインタビューで「トレーニングができていない状態でライブをやれって言われたら、NO」とまで答えている。ヒップホップといえば、チャラチャラしてストイックさがないというイメージを持つ人もいるかもしれないが、そんなことはない。そもそも、ステージに立ってパフォーマンスするというのは、精神的にだけでなく、体力的にもかなりハードなはずである。

 般若のパフォーマンスを意識した身体づくりは、“ヒップホップらしさ”と直接は関係ないかもしれないが、般若と同じように、ステージでのパフォーマンスを意識してトレーニングしなければいけないのは、アイドルとて同じ。ステージ上を縦横無尽に駆け回り、歌い踊り、ファンをロックしなければいけない。ラップは「歌がヘタでもできる」と思われ、アイドルは「ホンモノの歌手に比べたらヘタ」と思われ……奇しくも“多少ヘタでもできてしまう”と思われがちなジャンルでありながら、実際には歌手同様、あるいはそれ以上にしっかりとしたトレーニングやリハーサルが必要というところまで、アイドルとヒップホップは似通っていると言えるだろう。

 そんなステージのパフォーマンスのためのレッスンが、とりわけストイックであることで有名なのがハロー!プロジェクトである。今月8日に「モーニング娘。’17」が両A面シングル「BRAND NEW MORNING/ジェラシー ジェラシー」(UP FRONT WORKS Z = MUSIC =)をリリース。

 新メンバーの加入後も、彼女たちの代名詞ともなっているフォーメーションダンスは健在だ。「ジェラシー ジェラシー」ではラップにも挑戦し、また、初回限定盤には、なんともう19年も前のデビューシングル「モーニングコーヒー」をサンプリングした「モーニングみそ汁」を収録。公開されたMVは、キャンプを楽しむメンバーたちのカットが中心で、バキバキのダンスシーンはなし。A面シングルの楽曲2曲と比べると、これまでデビューから長らく幾多のメンバーの入れ替えを経て、ストイックなパフォーマンスグループに成長してきたグループの歴史を感じることができる。

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