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『Stand by me 描クえもん』発売記念インタビュー

「死んでも契約解除できない」漫画家・佐藤秀峰がkindleを訴えた裏側を語る

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佐藤 そうですか? 別に殴られたり、お金取られたりはしていないし、檻の中に入れられて、死なない程度のエサは与えられているじゃないですか。檻から出ようとすると「せっかく飼ってやっていたのに逆らうのか!」ってコテンパンにされるというだけで。2巻以降が本番ですかね。ある程度、過去の自伝的な話を描き切ったところで、これからの話をしていきたいと思っています。紙を離れ、電子書籍の話に向かっていく予定です。おっさんの正体が徐々に明らかになり、人間関係も盛り上がっていって……。

――2巻以降も楽しみですね。『描クえもん』で印象的なものとして、契約書のシーンがありますが、契約についての状況は変わっていないんでしょうか?

佐藤 僕は散々言ってきたので「あいつはうるさい」って、周囲がわかっているので(笑)。言わなくても向こうから契約書のドラフトを持ってきてくれる。出版契約でも電子配信契約でも、それを叩き台にして内容を詰めるだけなので、楽といえば楽ですね。でも、他の作家さんはどうなのかな……? 昨日もアダルト系の漫画家さんがここ(事務所)へいらっしゃったんですよ。IT系企業と執筆契約をしたそうで、「こんな契約書にハンコを押しちゃったんだけど大丈夫ですか?」ってご相談をいただきました。で、契約内容を伺ったんですけど、とても酷いですね。まず、契約期間が「著作権保護期間」なんです。その人が死んでから50年とかなんですよ。生きている限り契約解除できなくて、死んでも解除できない。

――違法な気もしますけど……。

佐藤 行政書士に確認したんですが、問題はあるけど、双方の合意があれば違法とまでは言えないという見解でした。契約期間は今話した通りで、作品の独占的な使用を認めるって内容。しかも、印税は0%。事実上、著作権譲渡と変わらないのに、そんな言葉はどこにも書いてない。ハンコを押すとページ数千円の原稿料で作品を盗られてしまうんです。その方は、20年以上やっている方だったんですけど、そんな契約書が普通に取り交されています。昔は漫画に関わる人たちというのは出版社が中心でした。今はIT系企業が漫画アプリを作って、そこでオリジナルコンテンツを作りたいだとか、出版以外の人たちが入ってきているんで、状況はむしろメチャクチャになってきている気がします。IT系は漫画部門がうまくいかない時は、極論すれば切り捨てればいいと思っているんじゃないですかね?事業を継続していく根本的な覚悟がないから、平気で無理難題を言ってくる傾向はありますね。出版社だけの頃は、不平等な契約条件を押し付けられることはあっても、もうちょっとわかりやすかったです。

――電子書籍のシステムが整備されてきて、収入面と経済面、環境に変化があったと思うのですが、それによって取り組み方が変わりましたか?

佐藤 お金の話をすると、去年は2億円以上を電子書籍で稼いでいます。電子書籍様々というか、紙と完全に逆転していますね。

――紙はどれぐらいなんでしょうか。

佐藤 紙は原稿料と印税収入を合わせて、2,000万弱じゃないですかね。
去年は紙単行本が出なかったので特に低かったです。

――2億円以上と聞いて、驚いたんですが、どのように収益を上げているのですか。

佐藤 ただ電子書籍を売るだけではダメで、キャンペーンを組んだり運用が重要ですね。今は他の作家さんの取次もやっていますので、収益としてはそちらも大きいです。電子書籍業界全体でいえば、Kindleが圧倒的に強くて、他にも対立野党がいくつかあるという感じです。各ストアからはKindleができないようなキャンペーンをやろうという提案も多いですが、そうするとKindleは大国にしかできないようなことをしてくる。少し前ですが、Amazonはマーケットプレイス出品者に、競合ECサイトより有利な価格・品ぞろえで出品させるという「最恵待遇条項」を盛り込んだ契約を結ばせていたということで、公正取引委員会が入りました。電子書籍はどうなるのかな? と見守っているところです。今、僕はAmazonに対して訴訟を提起しています。彼らは自分たちに都合が悪いことが起きると、契約条件の変更を求めてきたり、それに従わないとコンテンツの配信を一方的に停止したりします。トライ&エラーのフェーズだと言われればその通りですが、ムチャクチャですよ。海賊みたいな中間業者もウヨウヨいますし。ただ、電子書籍は未発達なシステムなだけに、やり方によっては儲かるという感じでしょうか。

――紙と電子書籍の立場がここ10年で逆転しましたが、この先さらに10年、漫画はどのように変化すると思いますか?

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