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【wezzy】

熊本市議の問題提起で議論「子連れで仕事」、寛容さと託児所整備のどちらも「今」必要なことだ

 11月22日に開会された熊本市議会の定例会で、緒方夕佳議員(42)が生後 7カ月の長男を伴い“子連れ”での議会の出席を試みたが結局認められなかった件について、様々な意見が飛び交っている。

 報道によると、長男を抱いて自席に着いた緒方議員と、子連れでの出席は認められないとして退場を求める議長らは押し問答となり、急遽、対応協議が行われた。協議の結果、長男同席は認められず、緒方議員は長男を友人に預けて議会に出席。議会開始は40分遅れたという。

 議会の後、「(子育ては)社会問題になっているのに、職場では個人的な問題にされてしまう」と語っていた緒方議員は、長男妊娠中の昨年から議会事務局に対して、乳児連れでの議会出席や市議会への託児所設置を打診していたが快い回答が得られず、無断で議会に子連れで出向く“強行突破”に踏み切ったとのことである。熊本市議会は、緒方議員に対して「赤ちゃんを議場に入れたことではなく、開会を遅らせたことへの処分」を検討しているという。

 緒方議員の行動の是非を巡ってネット上では議論が紛糾した。ロンドンハーツの田村淳が、Twitter上で開設しているアカウント無党派の集い @mutouha_souにて「熊本市議会育児中女性議員が赤ちゃん連れて出席したことに対して、あなたのお考えは?」と賛成・反対の2択を尋ねるアンケートを実施したところ、68453票の回答が寄せられ、賛成27%を反対73%が圧倒している。

熊本市議会
育児中女性議員が赤ちゃん連れて出席したことに対して、あなたのお考えは?https://t.co/wbMX0mTbx5

あえての2択です。

それ以外の方は誰が見ても気持ちの良い言葉遣いで議論願います。

— 無党派の集い@mutouha_sou) 2017年11月22日
 Yahoo!ニュースでも意識調査「赤ちゃん連れで議会出席、認めるべき?」が実施されており、11月28日の段階で、認めるべき31,548票(17.4%)・認めるべきではない149,613票(82.6%)となっている。

 世界的には、女性議員が乳児連れで議会に出席する(授乳も行う)ケースがすでにある。日本においても、待機児童問題、幼児教育の無償化、子なし世帯への増税案などなど、今は、かつてなく子育て支援の在り方に注目が高まっている時代のはずだ。少子高齢化が進む中、子育てする女性にとって働きやすい環境を整える必要性の高さは以前よりもずっと周知されており、政府も喫緊の課題として捉えているはずだ。だが、それでもいざ、日本で女性議員が子連れで議会に出席しようとなると認められないし、世論は「反対」する。世界経済フォーラムが発表した、男女平等度合いを測る「ジェンダー・ギャップ指数(2017)」において、日本は144か国中114位だった。特に低いのは政治分野(123位)だったが、これでは上昇しようがない。

 タレントや議員などの著名人らも次々に自身の意見を表明している。たとえばタレントのフィフィ(41)は、Twitterで「片手間で仕事されても周りが不安になります。連れて来られる赤ちゃんのストレスも考えるべき。仕事に集中出来るよう、子供を預ける環境を充実させるよう働きかけるのが議員の役目なのに、彼女の主張はズレてる」とツイート。

⬜️熊本市議会 育児中女性議員、赤ちゃん連れ出席試みるも…https://t.co/EHx7r1H35w

片手間で仕事されても周りが不安になります。連れて来られる赤ちゃんのストレスも考えるべき。仕事に集中出来るよう、子供を預ける環境を充実させるよう働きかけるのが議員の役目なのに、彼女の主張はズレてる。

— フィフィ@FIFI_Egypt) 2017年11月22日
 タレントのつるの剛士(42)もやはりTwitterで「『保育園おちた日本○ね』の時もそうでしたが、働く女性や育児、待機児童問題。。などを正義の盾にして正論の剣を振りかざす社会にボクは発展はないと思うし、こういう問題提起の仕方は本当に悩んでいる働くママ達や子供が結局一番可哀想な思いをしてしまうんじゃないかなあ、と思いました」とツイート。つるのは5児の父親で、第4子・5子誕生時に育休取得するなど“イクメン”としても知られているが、正攻法ではないやり方は支持できないとしている。文字数制限のあるTwitterでは書ききれないようで、ブログで詳述している。

 おときた駿都議会議員は、自身のブログや朝日新聞のコメントで、「議場でも乳児連れが認められるようになることに賛成」であり「議会から積極的に多様性を示すべき」だと思っているものの、「女性市議(緒方議員)のやり方にも問題点があったことは指摘をせざるを得ません」と述べている。また、「ルールの作る側の人間が現行ルールを破れば、批判を浴びることになるのは必然」であり、「もう少ししっかりと手順を踏んでから行ってほしかった」とも述べ、緒方議員の考えに同意・理解を示しつつも今回のやり方には疑問を感じているようだ。

 11月26日放送の『サンデージャポン』(TBS系)では、宮崎謙介元議員(36)が「問題提起をするという意味では非常にいいアクション」としながらも、「(仲間を作るなど)もっとテクニカルに周りをやるべきだった」とアドバイスを述べた。憤慨した様子だったのは医師でタレントの西川史子(46)で、「(緒方議員の行動に対して)子供を持っている女性は逆に怒っていますけどね。こういう風にされたら『やっぱり子供持ってる女性って、仕事できないわね』っていう風に思われちゃうから」「託児所に預けるべき」「しかも7カ月だったらハイハイもしたいだろうし、静かなところにいさせるなんて親としておかしいんじゃないかってみんな言ってます」と、どこまでも手厳しい。

 一方で、前出のアンケートでいえば「賛成」派だと意見表明する人々もいる。映画監督の紀里谷和明氏がTwitterで「この際だから言っときます。紀里谷と仕事をされる方はどなたでも子供連れてきてもらって結構です。打ち合わせ、インタビュー、撮影、全く気にしませんので、お気軽に^_^」とツイートしたことがきっかけで、Twitterでは“自分と仕事をする相手に子連れを認めます”という意思表示としてを付けるムーブメントが起こっているのだ。しかしながら「#子連れ会議OK」を付けた上で、「周りに迷惑」「親のエゴ」など否定的な見解を述べる者も少なくない。

 子連れ勤務を認めている企業としてとりわけ有名なのは、授乳服などを手掛ける有限会社モーハウス(茨城県つくば市)であろう。母乳育児を応援し、「子連れでもっとお出かけしよう」「授乳服があれば 子育てはもっと楽しめる」というモットーを持つ同会社では、創業当初から子連れ勤務が実施されているそうで、採用情報ページには「デスクワーク中でも、会議中でも、ショップで接客中でも、いつでもどこでも、赤ちゃんはお母さんと一緒に過ごす事ができます」ともある。ちなみに、現在募集中の求人だと、事務職(パート)は「※子連れ勤務は、原則として、つれてくるお子様が1歳2ヶ月までとさせていただいているため応募時、お子様の月齢4ヶ月くらいまでとさせていただきます」と同伴する子供の年齢制限が明記されているが、販売スタッフについては「※子連れ勤務は応募時お子様の月齢6ヶ月くらいまでとさせていただきます」とあるのみで、子連れ勤務がいつまで認められるかは不明。ただ、乳児期は預け先がなくとも、いずれ子供は幼稚園、そして小学校へと進学していく。永遠に赤ちゃんのままではいない。

 このような取り組みは、たとえば“働きたい”“早めに復職したい”気持ちと“子供のそばにいたい”“母乳で育てたい”気持ちとが拮抗している女性にとっては、ありがたいといえるし、また都市部のように待機児童問題を抱える地域に住む親にとって恩恵となり得る場合もあるだろう。イレギュラーな子連れ仕事を咎められない社会であってほしい。しかしそれは、子を連れて働きに出なくて済むよう、子供にとって快適な場所となる託児施設がきっちり整備されることが大前提だ。昭和を舞台にしたドラマなんかで、赤ちゃんをおぶった女性が飲食店で接客する光景を描くことがあるが、「それでいいじゃん」とはやはり考えられない。

 私はフリーライターという仕事柄、「子供の世話をしながらでも、お仕事できるでしょう」と誤解されることもなくはない。しかし子供がそばにいては仕事に集中することが出来ないし、赤ちゃんだって一日中おとなしく寝てなどいない。大きくなったらなったで、PCとにらめっこしている母親と同じように、何かに集中してじっとしていることも無理だ。子供をあやしながら、子供の笑顔を保ちながら、仕事に集中するのは至難の業である。だから託児所に子供を預け、その時間で仕事をする選択をしている。しかし託児先がないとか、普段は保育園に預けているが微熱で登園させられない(けれど仕事も休めない)とか、保育園が休みの日に仕事をしなければならないとか、やむをえず子供同伴で仕事をする機会は訪れる。私は運良く認可保育園に入れることが出来たため、今こうして路頭に迷わずにいられるが、入れなかったらどうなっていただろうか。しかも自治体によっては、認可保育園入所における選考基準として“同伴出勤は減点”と見なしていることもあるのだ。

 私の知人で、子供が早生まれだったため保育園の0歳児入園が叶わなかった女性がいる。しかし会社の上司から「職場に連れてきてもいいから復帰してくれ」と懇願され(人員不足だったそう)、産後数カ月で復職。子供を職場に連れて行き、抱えながら仕事をした。ところが彼女の住む自治体の認可保育園入所選考基準では、“保護者が申込児を自宅外で保育している場合(つまり子連れ勤務もこれに含まれる)”は、減点対象とされることが判明し、実際、彼女の子供は翌年度の1歳児クラス募集でも外れてしまったのである。やむなく彼女は、1歳になった子供を認証保育所に預けて勤務を続け、2歳児クラスになる年度の4月、ようやく認可保育園への入所が決まった(それでも激戦だったと思われる)。育休取得者よりも子連れ勤務の優先度が低いという自治体も存在している現状では、子連れ勤務の推進が認可保育園入所を妨げる可能性だってあるのだ。もちろん、育休取得者であれ復職者であれ求職者であれ、保育を必要としている家庭の子供全員の認可保育園入所が叶う状況ならばこんな議論は不要になる。

 日本は女性議員の数が少なく、とりわけ乳幼児を育てる女性が議員として活動することが厳しい現状がある。今回の緒方議員の行動は、そういった状況への問題提起として有効だったかもしれないし、「#子連れ会議OK」もそれぞれの事情に応じて柔軟に仕事をすることを認めるという意味では好ましいムーブメントだ。待機児童が多くて保育園に入れない、フリーランスで産休育休などはなから存在せず早めに復帰したい、という親にとっては、いざとなったら子連れで働ける! と心強くもあるだろう。とはいえ、誰もが子連れ勤務を望んでいるわけではないし、そもそも子連れ勤務など不可能な仕事に従事する男女も多い。子連れ勤務の常態化ではなく、イレギュラーなケースに寛容であることと、幼い子供を安心して預ける託児所を充実させること。同時に叶えることは不可能ではないはずである。

最終更新:2017/11/29 07:15
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