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過去最大の防衛費、専門家が“利権をめぐる派閥争い”に懸念「政治家と軍需産業の癒着が……」

国会議事堂

 北朝鮮情勢の緊迫化が衆院選での与党大勝を後押ししたといわれるが、増大する一方の予算案では、防衛費を過去最大5兆2,000億円に増やす方向で調整される見込みだ。

 軍事ジャーナリストの青山智樹氏は「北がミサイルを打てば打つほど、日本の防衛利権の口実ができる」と警鐘を鳴らす。

「単純に増額自体を批判したいのではありません。もともと日本の防衛費は世界標準の半分程度しかないのですから。航空・海上自衛隊は対地攻撃力が微弱で新しい研究が必要だったり、洋上防衛の要ともいえる対艦ミサイルや戦闘機の旧式化という課題もあるので、そこで追加予算が生まれるのは当然です。でも、そういう実質的な使い道ではなく、政治家と軍需産業の癒着となってしまう不安があります」(同)

 青山氏がそう見ているのは、「日本の国防予算は派閥による奪い合いの構図がある」からだという。

「日本は専守防衛なので、侵略してくる他国を上陸前、上陸直後に撃退することが想定されているんですが、そういう区分けじゃなくて、攻めてくる国の想定によって防衛省・自衛隊で内部対立があるんです。主にロシアを想定する派と、中国北朝鮮を想定する派です。ロシア想定派からすると、たとえば近年の動きでも、択捉島に飛行場が作られるなどのインフラ整備には対策が必要と考えるわけです。でも、いま北朝鮮への不安から、対中国・北朝鮮の派閥が勢いづいて、予算獲りを猛プッシュ。特にミサイル防衛については実態の見えにくい『研究開発費』の名目が作れるので、天井知らずなんです」

 もともと北朝鮮への不安による防衛ビジネスともいえる傾向は、テポドン発射兆候による麻生(太郎)政権時代に強まったともいわれる。このとき政権は、記者たちを集めて迎撃ミサイル「パトリオット(PAC3)」の配備を宣伝したが「それは本来、マスコミに見せるべきものではなかった」と青山氏。

「PAC3は移動型で、敵からどこにあるか見つけにくいのが長所なのに、わざわざその姿を示したのは、実戦よりも別の目的があったからとしか思えませんでした。他国ではダミーの車両を走らすなどの工作をするのが通例なのに、そういったことをまったくせず報道陣を招き入れてたのですから」(同)

 事実、このときはミサイル防衛利権がひとつの社会問題にもなっていた。アメリカに引っ張られるがままに小泉(純一郎)政権の04年度から予算付けが始まり、8,000億円を超えると見られる新たな防衛利権が甘い汁になっているのではないかという疑念が生じていた。

「防衛予算というのは、自衛隊に限らず一般的な軍隊でも主要支出は主に人件費なんです。自衛隊の場合、訓練費、居住費を合算すると全体の8割が人件費になるはず。なので過去の予算上下は人を増やすか減らすかが主だったんですが、安倍政権になってからの増額は、それまでと様子が違っていて、自衛隊員の増員がないのに予算が増え続けています」(同)

 導入が見込まれる新型戦闘機F35ライトニングIIは、同盟国にも工場が置かれるため、アメリカ政府はこれに1万人以上の雇用が発生すると試算し、日本の三菱重工などがその4割を担うという話だが、青山氏は「三菱など防衛産業はいま経営難に陥っているといわれるので、そんな景気の良い話ではないはず」と話す。

 この防衛費増大は、中国のさらなる軍備増大の口実を作ることになるという危惧もあり、ロシア・スプートニク紙では「日本の防衛費増額は外交の失敗を意味する」とも伝えている。一般人にはわかりにくい軍事分野だが、いろいろな意味で懸念がありそうだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

最終更新:2017/12/10 18:00
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