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防衛省腐敗を生む元凶 ずさんな装備調達とは?

 山田洋行の分裂劇に端を発した防衛スキャンダルは、守屋武昌・防衛省前事務次官および夫人の逮捕にまで発展した。それでも、マスメディアは、今後は国会議員にまで捜査の手が伸びるのか否かというスキャンダルや政局に終始するばかりで、防衛調達の問題点は何かという根源的な報道や分析は行われていない。これでは、また同じようなスキャンダルが発生するだろう。


 日本のメディアは、軍事に弱い。防衛省記者クラブは、単に防衛省という役所の担当者の集まりなので、軍事一般や諸外国の動向には疎い。また、メディアは防衛産業を産業として認知しておらず、各経済担当部署もフォローしていないという構造的な欠陥がある。これでは、問題の本質が見えない。

 諸外国では装備調達に先立って、調達数、調達期間、総予算が決定されており、それを前提に国防省とメーカーが契約を結ぶ。周辺諸国の新兵器の調達状況などを鑑み、5年先とか10年先の安全保障環境を予測、それに基づいて、「仮想敵」に対して優勢を保つような調達を考えていくわけだ。

 ところが、我が国の場合、そんな基本的なことがなされていない。それなのに、国会では予算が簡単に通ってしまう。必要であるべき装備調達の完了時期が20年先でも構わないというのであれば、周辺国家の「脅威」は存在せずに等しく、そのような「不要不急」の装備を高いカネで調達する必要はない、ということになるはずだ。

 売り手のメーカーや商社にしてみれば、プロジェクトの終了時期とそこから得られる利益がわからないと、経営計画が立てられない。たとえば、生産が10年で終了するのと20年で終了するのとでは、翌年に見込むべき維持費や人件費は単純計算で2倍違う。また、部品などもまとめて注文できないので、コストが割り高になる。

「商社のマージンなんて、10パーセント程度。違法行為でもやらなければ、ボロ儲けなんてできませんよ。今では、官僚への接待はおろか、天下りの受け入れだって減らそうという空気になっています」(軍事専門商社マン)

 商社のマージンを減らすよりも、「まとめ買い」をするほうが、よほど大きな経費の削減になるのだ。実は、こうした異常な調達システムが、国産・輸入品問わず、防衛装備の価格が高騰し、官民癒着を生む原因となっている。
 調達数は、毎年の予算編成で決まる。この数は、防衛省の胸先三寸(その先には財務省との折衝もあるが)で変わる。ゆえにメーカーや商社は、官側から情報を得ようと、あるいは装備の調達を増やしてもらうために官との接待や付け届け、さらには天下りの受け入れなどで「密接な関係」を維持しようとしてきた。

 当局は長年、我が国の防衛予算は単年度方式なので「まとめ買い」(多年度契約)はできないと主張してきた。ところが平成19年度分の予算要求から、防衛省は「まとめ買い」を始めている。19年度予算ではF-2戦闘機2年分を一括で調達、汎用ヘリコプター・UH-1も3年分を一括調達することにより、合わせて約180億円を削減、さらに事務機器のリースを単年度契約から複数年度に切り替えただけで78億円の削減を実現している。

 現在要求が出されている平成20年度予算では、PX(次期哨戒機)やF-15戦闘機の近代化改修などの「まとめ買い」で、約400億円のコスト削減になるとしている。一部を「まとめ買い」するだけで数百億円の節約ができるわけで、諸外国同様「調達数、調達期間、予算総額」を事前に契約する方式に変えれば、数千億円単位での調達費の削減も可能なはずだ。このような変化の背景には、膨大な資金がかかるMD(ミサイル防衛)に圧迫されて、一般装備の予算が大幅に削減されているからという事情がある。

 筆者は昨年本誌でこの防衛省の「まとめ買い」の意義を報じた。防衛省のHPでも堂々と公開されているにもかかわらず、今回の事件に際して、この点を報道したマスメディアはほとんどない。メディアの無関心と問題提起力の低さが、防衛調達改善の一番の障害なのかも知れない。
(清谷信一)

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最終更新:2008/07/08 20:16
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