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「偽りの物語」に踊らされれるな!

佐藤優が分析する「インテリジェンスと陰謀論」の境界線(前編)

irapwar.jpg「大量破壊兵器がイラクにある」という誤った情報を
元に、アメリカは戦争へと突入した。

 偽情報で暴走したアメリカ、差別を助長する反ユダヤ主義……人はなぜ陰謀論にハマってしまうのだろうか? 私たちの目に見えない国際舞台の水面下ではいったい何が起こっているのだろうか?

 もはや説明不要であろう、情報分析のプロフェッショナル・佐藤優氏に陰謀論が生まれる過程と、そこに潜む危険性を解説してもらった。

──まずは陰謀論について、基本的な認識からお聞かせください。

佐藤 私は大きな枠組みにおいては、陰謀論的なものの見方を否定しません。「ある出来事の裏に、特定の意図の下に結集した、特定の人的ネットワークの動きがあるのではないか?」と疑うこと自体は必要です。

 例えば、日本の外務省には東西冷戦後、3つの潮流ができました。親米主義とアジア主義、地政学主義です。それぞれの潮流に属する外交官たちは当然、自分の信じる方向に外交を動かそうとする。その潮流が時代とマッチして、力のある政治家や経済人をリクルートした時には、ある幅において、その外交官たちの意図が実現するということはある。このこと自体は陰謀ではありませんが、「見えないところに、見えない動き」があると理解することは、情報リテラシーの上でも必要なことでしょう。

 しかし「ユダヤ人が世界征服を企んでいる」だとか、「世界はロスチャイルド対ロックフェラーの構図で動いている」だとか、そのようなたぐいの話は、決めつけから発した”偽りの物語”にすぎません。

──私たちジャーナリストも取材を始める際、自分なりの「仮説」を立てて取り組む場合がよくあります。その段階では決め付けに過ぎません。それを検証せずに表に出せば、一種の陰謀論になってしまいますよね。

佐藤 そうですね。インテリジェンスにも「最悪情勢分析」という手法があります。CIAのような諜報機関にも、はたから見たら「陰謀論者じゃないのか?」と思えるような分析官が2割ぐらいはいるんです。

 普通の分析官は、分析対象に関する大量のデータをさまざまなパターンで関連付けて、複数の予測を併記します。しかし2割の「陰謀論者」は、それをしない。極端な要素、極端な関係者を抽出して結びつけ、予想し得る中で最も”極端なシナリオ”だけを考えるんです。そうすることで、ほかの分析官とか諜報機関の幹部は、最悪の事態に対する心構えができる。その心構えをもって、客観的な分析作業に取り組めばいいわけです。

 この場合重要なのは、いくら極端なシナリオであっても、客観情報に基づいていることです。客観情報とは、当事者や第三者、マスメディアが発表した公開情報などです。

 ただ、情報を精査してやっているつもりでも、重視すべき情報が排除されてしまって、あえて組み立てた「極端なシナリオ」が暴走してしまうこともあります。その典型例が、アメリカを対イラク開戦に向けて突っ走らせた、「カーブボール」【註】の一件です。

──仮説を否定できない心理に陥ってしまうわけですね。

佐藤 諜報機関も役所であり、そこで働くスタッフは官僚です。官僚にとって最大の職業的関心は何かといえば、出世にほかなりません。自分の出世に都合のいいように情報を選択し、結果的に事実関係をも捻じ曲げてしまう。つまり、無意識のうちに「物語」を作ってしまうんです。

 つまるところ、陰謀論というのは、こうして「物語」を作ってしまう人間の習性から出てくるんじゃないかと思います。
後編につづく/取材・文=李策/「サイゾー」4月号より)

【註】ドイツに亡命後、同国の情報機関を通じ、「イラク政府はトレーラー型の生物兵器工場を運用している」という虚偽情報をCIAにもたらしたイラク人男性のコードネーム。アメリカはこの情報を最大の根拠に、国連などの制止を振り切ってイラク戦争に踏み切った。

satoumasaruinboron.jpg●さとう・まさる
1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、ノンキャリアの専門職として外務省に入省。02年に背任と偽計業務妨害の容疑で逮捕。05年、東京地裁で執行猶予付き有罪判決を受ける。現在、最高裁に上告中の「起訴休職外務事務官」。

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最終更新:2009/03/18 19:46

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