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高橋源一郎 ”自分の文章”の書き方『13日間で「名文」を書けるようになる方法』

meibun.jpg『13日間で「名文」を書けるように
なる方法』朝日新聞出版

 ビジネス文書、年賀状やちょっとした挨拶状、日々のメールなど、ぼくらは様々な文章を書いて暮らしている。でも、本当の”自分の文章”を書いているかというと、どうも自信がない。現在、大学で学んでいる学生たちも、「自分らしい文章とは何か」という疑問を抱いているようだ。

 この本『13日間で「名文」を書けるようになる方法』は、テレビなどでもおなじみの作家・評論家で、明治学院大学教授でもある高橋源一郎氏の、明治学院大学での講義録だ。学生とのやり取りもそのままに、授業の息づかいを感じられるスタイルとなっている。高橋氏の学生に対する目線は真摯で、率直で、優しい。学生の発言も活発で、「こんないい先生居たかなぁ、居たらなぁ……」と嘆息させられるような授業風景だ。高橋氏の豊かな教養に基づいた幅広いテキスト選びも、ちょっと他の授業ではお目にかかれないだろう。


 しかし、短く簡潔でわかりやすい自己紹介文の例に、「本番OK、アナルNG」といったAV女優の履歴書を挙げるなど、その論旨はアイロニー(皮肉)に満ちている。『13日間で「名文」を書けるようになる方法』というタイトルからして、世のハウツー本に対する大いなる皮肉だろう。この本には、「名文」を書けるようになるコツなど載っていない。「日本国憲法前文」とカフカの「変身」の対比や、靖国神社に祀られる英霊になった気持ちを書く、といったこの講義の本質は、実は文章作法ではない。社会や道徳観念が我々にかけさせている「サングラス」をいかに取り払って物事を見るか、いかに想像力を羽ばたかせるか、ということではないだろうか。

 学生の文章は、未熟だが、瑞々しい感性に満ちている。百点を取るためでなく書いた文章は、鎖や「サングラス」から解放された”自分の文章”となり得ている。きっと、「背筋を伸ばして授業を受けなくてもいいよ、欠陥は必ずしも直さなくていいんだよ」というタカハシ先生の言葉が、学生達に”自分の文章”を出せる自信を持たせているのだろう。そんなタカハシ先生の名講義を聴けるのはこの本だけだ。瑞々しい”自分の文章”を取り戻したいと思っているあなたの助けとなってくれることだろう。もちろん、読み物としても文句無しに面白い一冊だ。
(文=平野遼)

高橋源一郎(たかはし・げんいちろう)
1951年生まれ。作家、明治学院大学国際学部教授。1981年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人賞長編小説賞優秀作、1988年『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞受賞、2002年『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞受賞。著書に『文学じゃないかもしれない症候群』『官能小説家』『一億三千万人のための小説教室』『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』『ニッポンの小説 百年の孤独』『いつかソウル・トレインに乗る日まで』など。

13日間で「名文」を書けるようになる方法

想像力不足の現代人に

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最終更新:2009/10/21 16:57
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