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『歌声喫茶方舟』が80年代を運ぶね!

『夏のあらし! ~春夏冬中~』キャラソンアルバムが誘う”昭和”への旅

hakobune.jpg『歌声喫茶方舟 ~アキナイチュウ~』キングレコード

 気がつくと2010年代まで残すところひと月。平成の年号もまもなく22になる。かつてロックは不良の音楽で、日本のポップミュージックは歌謡曲だった、なんて言うとオヤジに見られてしまうが、実際に昭和生まれはもうオヤジなんだからしょうがない。

 90年代すらふた昔前扱いの今、80年代は完全に「過去の世紀」だ。すると、いわゆる”昭和ノスタルジー”が芽生えてきて、ダサさの象徴であるはずだった歌謡曲の数々が、なにやら大事な宝物的存在に思えてくるから不思議である。

 00→10。年代の変わり目となるこの12月末に、80年代歌謡曲を散りばめたカバー・アルバムが出る。

 第2期「~春夏冬中~」がオンエア中のアニメ『夏のあらし!』(テレビ東京ほか)からキャラクターソングアルバムとして発売される『歌声喫茶方舟 ~アキナイチュウ~』がそれだ。

 アニメのキャラソンというと、「あー、アレでしょ。飛び跳ねた打ち込みのオケに乗せて、声優さんがキャッキャウフフな声で日常生活+ほんのり恋愛ネタを歌うやつ」という反応が返ってきそうだが、『歌声喫茶方舟』の場合はそうではない。

hakobune2.jpgTVアニメ『夏のあらし! ~春夏冬中~』
(テレビ東京ほか)

 大東亜戦争(太平洋戦争)中に亡くなった女学生の霊である「あらし」。彼女は時間跳躍能力という不思議な能力を持っていた。夏の間だけ現代に存在することが出来る彼女は、物語の舞台である喫茶店「方舟」で働きながら、現代と過去を行き来する──。戦中から現在まで60年の幅を往来するストーリーゆえに、音楽もまた、時代を超える。各エピソードを象徴する昭和の歌謡曲が各キャラクターによって「キャラソン」として歌われているのだ。

 第1期は1948年発売の「東京ブギウギ」から82年の「少女A」まで、70年代を中心に選曲し、劇中で使用。今年7月に昭和歌謡カバーアルバム『歌声喫茶方舟』として発売された。いわば「懐メロ鉄板」的な内容だったわけだが、今回発売される『歌声喫茶方舟 ~アキナイチュウ~』が俎上に載せたのは80年代である。

「選曲が絶妙です。78年の「みずいろの雨」から89年の「淋しい熱帯魚」までをカバーしているのですが、この78年から89年というスパンは、往年の国民的歌番組『ザ・ベストテン』(TBS系)の放映期間とピタリ一致します。J-POPに切り替わるより前の、歌謡曲の黄金期を掬い取った恰好になりますね」(音楽雑誌関係者)

「淋しい熱帯魚」は一年前、「カバーするアーティストが頻発している」と、日刊サイゾーでも触れた(記事参照)Winkのアイドルポップス。J-POP前夜、歌謡曲からの過渡期のナンバーが、80年代終焉の象徴として扱われているのは興味深い。

 一方で、今回最古となる「みずいろの雨」は、アラフォーにとっては『ザ・ベストテン』放映開始直後の高揚感を思い出させてくれるヒット曲である。

「まだ懐メロとして頻繁に触れられる年代じゃない。年配の人間には懐かしく、若い層には新鮮という、発掘感があります」(音楽制作関係者)

 NHKの投稿番組から登場し、坂本龍一アレンジバージョンが『みんなのうた』で放送されて有名になった「コンピューターおばあちゃん」。メジャーとマイナーの狭間でパンク・ニューウェイブの旗手として奮闘していた戸川純の名曲「レーダーマン」などは、存在すら知らない人も多いだろう。

 アルバムのプロデューサー・宮本純之介氏は「『夏のあらし!』の持つノスタルジックな世界観を音楽面からも演出しようという狙いがある」という。

 リスナーは歌声喫茶に「仮想入店」することで80年代への回帰を体験する、というわけだ。

「キャラクターそれぞれのバックグラウンドを把握したうえで聴くと、いろいろ解釈できて面白いかと思いますよ」(宮本氏)

 たとえば、男装の女の子である潤(じゅん、CV:小見川千明)が、男の子歌の「ギザギザハートの子守唄」を元気かわいく歌ったかと思えば、日本通ドイツ人のカヤ(CV:名塚佳織)が情念を込めて「天城越え」を歌う、というように、このアルバムはアニメのファンに向けたキャラソンとして機能している。

 しかしキャラが歌うということには、もう一つ意味がある。

「アニメと歌謡曲って、一見相容れないようでありながら、意外に絵と楽曲がすんなり耳に入ってくるんですよね」(前述の音楽制作関係者)

 昭和が終わり、ザ・ベストテンが終わり、歌謡曲が終わった80年代は、まだ自力で飲み下すにはちょっと濃厚だ。古くなりきっていないから、拒絶反応も起きやすい。そこをアニメキャラがMCとしてワンクッションを入れることで聴きやすくなる、という現象が起きているようなのだ。

 2010年に有効な80年代音楽カルチャーガイドがアニメから出てくるとは夢にも思いませんでした。最後に完全な私見。Track10と11の声芸連発はスゴイ!

<Track List>
1. 夏休み/八坂一(はじめ)(CV:三瓶由布子)
2. ギャランドゥ/村田英雄(グラサン)(CV:安元洋貴)
3. みずいろの雨/マスター(CV:生天目仁美)
4. Romanticが止まらない/山崎加奈子(CV:堀江由衣)
5. ギザギザハートの子守唄/上賀茂潤(CV:小見川千明)
6. 天城越え/カヤ(CV:名塚佳織)
7. コンピューターおばあちゃん/伏見やよゐ(CV:野中藍)
8. 淋しい熱帯魚/伏見やよゐ&山崎加奈子(CV:野中藍&堀江由衣)
9. 昭和ブルース/村田英雄(グラサン)(CV:安元洋貴)
10. ハイスクールララバイ/塩谷feat.山代武士&十五流一夫(CV:杉田智和)
11. レーダーマン/???
12. 君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。/嵐山小夜子(あらし)&カヤ(CV:白石涼子&名塚佳織)
13. セーラー服と機関銃/嵐山小夜子(あらし)(CV:白石涼子)
(取材・文=後藤勝)

夏のあらし!~春夏冬中~キャラクターソングアルバム

12月23日発売

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最終更新:2009/12/05 11:00
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