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日本"未解決事件"犯罪ファイル

全国有数の”失踪事件”多発地域で女性記者が姿を消してから11年

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何かが狂ってしまった現代社会。毎日のようにニュースに流れる凶悪事件は尽きることを知らない。そして、いつしか人々はすべてを忘れ去り、同じ過ちを繰り返してゆく……。数多くある事件のなかでも、未だ犯人・被疑者の捕まっていない”未解決事件”を追う犯罪糾弾コラム。 

[第7回]
三重県伊勢市女性記者行方不明事件(1998年11月)

 1998年11月24日、出版社勤務の女性記者・辻出紀子さん(当時24歳)が行方不明になった事件は、進展のないまま11年の時が過ぎた。彼女は一体、どこに消えてしまったのか……。あらためて事件を振り返ってみる。

 紀子さんは学生時代にジャーナリストの道を志し、東南アジアの難民キャンプをはじめ、ミャンマー(ビルマ)、タイ、バングラデシュ、中国・雲南省などを約4カ月もの間、撮影しながら旅を続けた。帰国後、地元の三重県伊勢市にある地方出版社・伊勢文化舎に入社。地域情報を掲載する雑誌「伊勢志摩」(現在は「伊勢人」に名称変更)に配属され、最初は駆け出しの新米記者として主に小さな記事を担当していたが、入社2年目は特集記事などにも関わるようになる。そんな忙しい日々にも慣れたころには、大きな仕事が片付くたびに、大好きなタイに何度も出かける余裕さえ見せていたという。

 そして事件の夜。紀子さんが遅くまで会社に残っているのを見かけた同社社長が「もう遅いから帰りなさい」と声をかけると、しばらくして「お先に失礼します」と退社したという。社長の証言によれば、彼女が会社を出たのは午後11時過ぎ。実家暮らしで両親・祖父と同居していたが、仕事で遅くなることが多かったため、その日も両親はさほど心配をしていなかったという。紀子さんは朝方になっても帰らなかったが、母・美千代さんも働いているため、気には止めつつも自分の職場へと向かった。一方、職場でも出社してこない紀子さんを同僚たちが心配したものの、昨晩遅くまで原稿を書いていたということもあり、午前中は連絡を取らなかった。昼過ぎ、同僚が携帯に電話をかけてみたが、留守番電話になるだけで、紀子さんが出ることはなかった。

 伊勢警察署から紀子さんの自宅に電話があったのは、日も落ちかけた夕方過ぎ。紀子さんの勤務先から数百メートルほど離れた損害保険会社の駐車場に、彼女の愛車・日産マーチが長時間停められている、という知らせだった。電話を受けた祖父はすぐに美千代さんに連絡を取り、事情を伝えた。おかしく思った美千代さんが娘の勤務先に問い合わせると、朝から出社していないという。ここで初めて異変に気づいた美千代さん、そして社長は、紀子さんの車が発見された現場へと向かった。

 車にはいくつか不審な点があった。まず、駐車ラインを無視して斜めに停車していたこと。関係者によれば、紀子さんは「とても几帳面な性格」とのことなので、よほど慌てていたか、別人が運転した可能性も考えられる。次に、ドアがロックされていたにもかかわらず、所持品がすべてなくなっていること。通常、車を乗り換えでもしない限り、少し人と会うぐらいなら荷物は社内に置きっぱなしにするのではないか。近くの飲食店に寄るために財布やバッグが必要だったとしたら、わざわざ無断駐車などせず、その店の駐車場に停めるはずである(そもそも飲食店での目撃情報はない)。そして、決定的な異変が3つ。灰皿にタバコの吸い殻が1本残されていたこと(紀子さんは喫煙者ではない)、車の座席が下がっていたこと(紀子さんのサイズに合わない)、カーステレオのスイッチが切られていたこと(普段はつけっぱなし)……。状況が示す通り、明らかな失踪事件であるにもかかわらず、警察は当初、”家出”として処理してしまう。ようやく重い腰が上がったのは、紀子さんがいなくなってから1カ月が過ぎたころだった。

 警察が調べを進めると、捜査線上にある人物が浮かんだ。携帯電話キャリアから取り寄せた通話記録を調べたところ、失踪当日に4回も紀子さんに電話をかけている男がいたのである。その男は同年春ごろ、紀子さんの取材を通じて同業者として出会ったが、「取材に関するやりとりで行き違いがあり、直接謝りたかったので呼び出した。(発見現場の)駐車場で落ち合い、自分の車に乗せて1~2時間話をした。その後、駐車場から少し離れた県道沿いで降ろしたが、別れてからの彼女の行動は何も知らない」と供述している。この男には当日のアリバイがなかったため、捜査関係者も事件解決に期待を膨らませたが、目撃者や物的証拠が一切なく、逮捕には至らなかった。それどころか、99年2月に東京都港区の女性を監禁したとして、”別件逮捕”(東京で起きた事件にもかかわらず三重県警が拘留)されたが、裁判では無罪。逆に警察が訴えられる始末となり、それ以降は所轄が手出しできない状況になっているのだ。

 もちろん、”彼”が事件に関与しているかどうかは、当事者以外、誰も分からない。そして、紀子さんが11年の時を経て存命であるのか、それとも……何らかの被害を受けてしまったのか。三重県は全域で過疎化が進み、都市部から少し車を走らせれば山深く、伊勢港には外国船も頻繁に出入りしている。そういった事情も災いしてか、失踪・誘拐などの未解決事件はあとを絶たない。08年9月、紀子さんも”北朝鮮拉致問題”に関わっている可能性があるとして、民間団体「特定失踪者問題調査会」の0番台リスト(北朝鮮に拉致された疑いを否定できない失踪者)に名前が載せられた。このことで、ご家族の心情に変化が生じるとは到底思えないが。

 紀子さんがいなくなってから3年が経ったころ、家族と友人の呼びかけにより、彼女が旅を通じてフィルムに収めてきた記録を公開する写真展が開催された。現在も、その記念碑としてホームページが残されていて、多くのジャーナリストが閲覧し、紀子さんの学生時代・社会人における活動に賛同の意を表している。彼女が撒いた”夢と理想”の種は、主人が留守にもかかわらず、大きな実をつけて育ち続けている。
(取材・文=神尾啓子)

<行方不明者のプロフィール>
氏名:辻出紀子さん
年齢:35歳(当時24歳)
身長:161cm
体重:46kg
頭髪:黒色・セミロング
服装:ベージュ色のセーター、黒色のパンツ
靴:オレンジ色のスニーカー(ニューバランス/24cm)
所持品:濃緑色のショルダーバッグ(ビニール製)
居住地:三重県一志郡一志町波瀬
職業:雑誌記者
特徴:左手薬指つけ根に1cm大の火傷痕あり

<連絡先>
三重県伊勢警察署
TEL 0596-20-0110

失踪〈2003〉―尋ね人捜索白書

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最終更新:2010/01/14 15:09
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