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誰もが「ポカーン」とした『S-1グランドチャンピオン2010』とは何だったのか

s1.jpgソフトバンク「S-1バトル」公式サイトより

 「予想通りの結果」とも言えるかもしれないが、当のチャンピオンも「ポカーン」といったような、なんとも不思議な空気に包まれたまま『S-1グランドチャンピオン2010』が終了してしまった。

 人気バラエティー番組を担当する、ある作家がいう。

「喜びも悔しさもない、フワッとした空気のまま終わっていきましたよね。もともと始まる前から、『本番は盛り上がるのかな』というドキドキ感も全くなく、見終わった後の納得感もゼロ。まぁ、見事なぐらいスベっていた企画でした」

 3月18日に開催されたお笑いコンテスト『S-1グランドチャンピオン2010』。コンテスト主催のソフトバンクが、自社で運営する芸人による動画コンテスト「S-1バトル」の月間チャンピオンを集め、その年間王者を決めるというのがもともとのコンセプトだった。結果としてはNON STYLEが見事優勝したわけだが、そもそも「S-1」の存在自体、携帯サイトということも影響してか、日テレ深夜で関連番組も放送していたりもしたが、今ひとつ世間への浸透度も高くなかった。

「現場でも、『ああ、あれね、へへへ……』といった感じの、ちょっと笑いを入れてしまうような感じの扱いでした」(前出・作家)

 このコンテストに「座りの悪さ」を感じてしまう最大の理由は、そういった浸透度とまったく比例していない賞金の太っ腹ぶりである。

 毎月の優勝者に賞金1,000万円。M-1の優勝者と同額の賞金が、ソフトバンクの、しかも会員登録した人だけが見られる携帯動画で得票1位になれば与えられる。それが毎月。そして今回の年間王者に与えられる賞金額は、1億円。ちなみに1大会での優勝賞金としては、世界最高額タイだそうである。

 これまでM-1やR-1などが何年もかけて築いてきたものを鼻で笑うかのように、10倍以上の金額で差をつける。しかも、「S-1」の月間王者だけでなく、M-1(パンクブーブー)、R-1(あべこうじ)、キングオブコント(東京03)の各チャンピオン3組も招待枠で参戦させる。M-1がS-1の単なる予選であるかのような扱いだ。前出の作家は言う。

「S-1が、それだけの権威を感じられるような大会であれば問題はないと思うんです。M-1は漫才の頂点を決める大会で、R-1はピン芸人のためのもの。そしてキングオブコントはコントでのナンバーワンと、それぞれの意味合いをもったものですよね。S-1は、一応お笑いの総合格闘技的に全ての笑いを基準にしているそうなのですが、その『全て』というくくりがまたフワッとしたものになってしまう。何のための大会なのか分からないんですよね。おそらく、規模だけを大きくしたかった。これをいろいろ順に説明していくと、矛盾だらけになってしまうでしょうから、説明もちょっとあいまいになってしまい、現実離れした賞金額だけが浮いてしまう結果になってしまったのではないでしょうか」

 賞金額の設定ミスも指摘されるが、経済系の記者はこう分析する。

「これだけ厳しい不況が続く中、賞金が毎月1,000万というのは、”金をばらまいている”ととらえられても仕方ないですね。普通の感覚からすれば、1,000万というのは高額所得の基準になるような金額。これが1年に一度の大会で与えられるのであれば、リアリティを感じる金額だと思うんです。スポーツ選手の年俸とは違い、賞金で1億という額は、『いいなあ』とか『すごいなあ』というリアリティを感じない額ですね。ソフトバンクの広告費として考えれば、決して多くはない金額なのでしょうが、ユーザー側からすると、決して安くない自分たちの通話料が、こんなところに、と思ってしまう。打ち出し方を完全に間違えた感じですね」

 実際、1億円という未曾有の額がかかっているのに、決勝3組に選ばれなかった芸人の中には、少しホッとした表情をしたように見えた人もいた。あるテレビ関係者は言う。

「確かにそうです。恥をかかずにすんだ、というような空気はありましたね。出来れば押しつけ合いたいというか。明らかに負ける気だろ、という作品もありましたしね。そんな、負けてホッとするようなコンテスト、ありますか?」

 決勝に残った陣内智則、浅越ゴエを押さえてNON STYLEが優勝という結果に対し、前出の作家は言う。

「ここで陣内さんが1億とっちゃうと、ますます嫌われていたでしょうし、結局NON STYLEさんが全部背負ってくれたぐらいの感じですよね」

 しばらくは1億円の使い道は? といった質問が多そうではあるが、

「実際には映像を作ってくれたスタッフなど、全部が芸人さんに入るわけではないんです。これをネタにすると、結果的にソフトバンクの悪口になりそうですし。難しいところですね」(同・作家)

 この未曾有の規模のコンテスト、どうやら来年も開催されそうなのだが。

「そこが一番ビックリですよ。ソフトバンクを普及させる目的が、マイナスに働いちゃって、『金にモノをいわせる会社』だというイメージが生まれてしまいましたし。完全な失敗で1回でやめるのかと思ってたんですが……」

 罰ゲーム化しそうな空気である。
(文=太田サトル/「サイゾー裏チャネル」より)

志高く 孫正義正伝

高すぎちゃったみたい。

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最終更新:2018/12/10 19:17
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