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"輝くオヤジの星"ロングインタビュー

名脇役・光石研の気取らない俳優哲学 33年ぶりに主演『あぜ道のダンディ』(後編)

mitsuishiken002.jpg映画出演作は140本を超える光石研。
「メジャーとインディーは、タオル1枚の違い」と語る。

前編はこちらから

――33年間の俳優生活。最近でこそ年間10本近くの映画に出演していますが、若い頃は仕事が少なくて大変な時期もあったんですよね?

光石 えぇ、厳しい時期がありましたね。20代の頃は仕事があったんですが、30代前半は辛かった。男の子から大人になっていくに従って、仕事が減っていったんです。ボクに限らず、俳優はみんな経験することでしょうね。まぁ、俳優業に限らず、働いている男は青年期から大人へ移行するに従って、求められる役割が大きく変わっていくと思います。どうやって、それを乗り切ったのか、自分ではよく分かんないですね(苦笑)。ただ、仕事が明らかに減っていくわけですから、今までの取り組み方を変えないと、この世界で長く仕事を続けることはできないなと切実に感じました。何か手掛かりはないかと、いろんな映画を観たり、「どんなオーディションでも受けるから」と事務所に頼んだりしました。事務所から「この人に会ってみたら」と勧められたら、会いに行きました。29歳で結婚し、しっかり稼がないといけない時期だったのですが、その頃はなかなか難しかったですね。事務所にお金を借りたこともあります。でも不思議と転職することは考えなかったですね。映画の中ではいろんな役を演じましたが、実社会では何もできないんですよ。この仕事以外、ボクには何もできないんです(苦笑)。

――そんな状況の中、岩井俊二監督の深夜ドラマ『ゴーストスープ』(1992年、フジテレビ系)での傷痍軍人、青山真治監督の『Helpless』(96)での片腕のチンピラといった世間から疎外されたキャラクターを演じ、徐々に注目されるようになったわけですね。

光石 丁度バブルが弾けて、低予算の作品を若い監督たちが任されるようになり、それで年齢の近いボクを使ってもらえるようになったんです。時代のタイミングが良かったんです。俳優って自分でどれだけ意欲を持っていても、どうにもならない面がありますから。同じ頃に、オーディションを受けて『ピーター・グリーナウェイの枕草子』(96)にも出ました。カメラを回さないリハの段階で、50テイク近くやり直しさせられましたね。19歳のときに出演した『セーラー服と機関銃』(81)でも相米監督に半日近くリハを繰り返させられたことがありましたが、あのときは若かったから良かったけど、『枕草子』は34歳のときでしたから、これはキツかった(苦笑)。でも、そのお陰で、「常に気持ちを新たにしないと、この仕事は続かないぞ」と気づくことができたんです。「次の仕事も真剣にやらないと、また酷い目に遭うぞ」と肝に銘じるようになりましたね。

azemichi_dandy03.jpg光石研にとって33年ぶりの主演作。『カイジ』
で共演した藤原竜也や同じ事務所の岩松了
らがスクリーンを盛り上げている。
(c)2011「あぜ道のダンディ」製作委員会

――『枕草子』での光石さん、現代劇なのに何故か弓で矢を射っている不思議な役でしたね。

光石 えぇ、本当に不思議な作品でした。訳わかんないですよね。でも、出演できて良かったと思いますよ(笑)。

■メジャーとインディーズの違いとは?

――宮田が勤める運送会社の同僚役で藤原竜也が出演していますが、『カイジ 人生逆転ゲーム』(2009)繋がりですか?

光石 はい。『カイジ』では2人のシーンがけっこう多くて、藤原さんには凄く良くしてもらったんです。どういうルートで藤原さんに話が伝わったのかボクは知らないんですけど、手弁当みたいな形で出演してくれて、うれしかったですねぇ。その上、藤原さん、現場に差し入れまで持ってきてくれて。

――昨年は三池監督の本格時代劇『十三人の刺客』でも、刺客たちの引き立て役を見事に演じました。『カイジ』や『十三人の刺客』みたいなメジャー作品に出るのと、本作のようなインディペンデント作品に出るのでは取り組み方に違いはありますか?

光石 どちらも違った楽しさがあります。メジャーはメジャーで普段は体験できないような世界を味わえますし、インディーズはインディーズでみんなで汗まみれになりながら寝る暇もなく作っていくという面白さがあるんです。どっちがどうではなく、それぞれ面白いです。それに映画って大作だと朝早く起きなくていいかというと、そんなことはなく、やっぱり朝6時には出発しますし、ズブ濡れにならなきゃいけないときは全身グッチョグチョになります。現場の苦労は変わらないですね。まぁ、グッチョグチョになったときに、予算のある映画の場合は手渡されるタオルが1枚多いとか、ストーブが1台多いとか、そのくらいの違いなだけですよ(笑)。

azemichi_dandy04.jpg前田健の振り付けによるミュージカルシー
ン。光石研いわく「ダンスは初めて。台所の片隅
で毎日練習しました」。

――”メジャーとインディペンデントは、タオル1枚の違い”ですか。ベテラン俳優ならではの言葉ですね。『地獄の逃避行』(73)『天国の日々』(78)で知られる名匠テレンス・マリック監督の『シン・レッド・ライン』(98)にも日本兵役で出演しましたね。

光石 えぇ、米国映画らしく4台のカメラを同時に回していましたね。撮影前に説明があって、スタートと同時にカメラが一斉に回り出して、一気に撮るというスタイルを何度も繰り返しました。集中して演技するという面白さがありましたね。タイ映画『インビジブル・ウェーブ』(06)にも出演しましたが、やはり独特のスタイルがありました。それぞれ現場での苦労は違いますが、また違った楽しさもあるんです。そのお陰で飽きずにずっと続けられたように思いますね。

――ひとつひとつの仕事を楽しめるのが光石さんの才能ですね。

光石 いやぁ、本当にね、スタッフのお陰なんです。俳優は、スタッフがいてくれてこそですから。

――普段はお人好しのキャラクターを演じることが多い光石さんですが、園子温監督の社会派サスペンス『紀子の食卓』(06)でのバイオレンスシーンは強烈でした。

光石 ハハハ、あのときは大暴れさせてもらいました(笑)。やっぱりね、あのときは撮影が終わって家に帰ってからも、興奮して寝付けませんでしたね。アドレナリンが出過ぎて眠れないときは、クールダウンするためにちょっとお酒を呑みますね。

――行きつけのバーで呑むんですか、それとも自宅派ですか?

光石 以前は誘われて外へ飲みに行ってましたけど、最近はもっぱら家呑みですね。だいたい現場から帰って、家でちょっと呑んで、寝るという生活です(笑)。ビール呑んで、それからハイボールかな。いつもじゃないけど、女房にもたまに付き合ってもらいます。女房はこっちの業界とは全然関係ないんで、結婚してしばらくは俳優の不規則な生活に戸惑ったと思います。今まであんまり考えなかったけど、この仕事をずっと続けられたのは家族の理解があったからかもしれませんね。うん、家族にも感謝しないといけないかな(照れ笑い)。

――光石さん、サイコーです! 最後にオヤジ世代とオヤジ予備軍にメッセージをお願いします。

光石 老けるには、早いですよ。ボクらにはまだまだ50代、60代、70代とあります。若い人に媚びを売っても仕方ないですよ。誰でも何かひとつは楽しみがあると思うので、ボクらが楽しんで生きましょう! こんな感じで、いいですか? いやぁ、今日はどうもありがとうございました(笑)。
(取材・文=長野辰次)

●『あぜ道のダンディ』
脚本・監督/石井裕也 出演/光石研、森岡龍、吉永淳、山本ひかる、染谷将太、綾野剛、蛍雪次朗、藤原竜也、岩松了、西田尚美、田口トモロヲ
配給/ビターズ・エンド
6月18日(土)テアトル新宿、ユナイテッド・シネマ前橋、シネマテークたかさき他全国順次ロードショー <http://www.bitters.co.jp/azemichi>

●みついし・けん
1961年福岡県生まれ。曽根中生監督の『博多っ子純情』(78)のオーディションで抜擢され、主演デビュー。中島貞夫監督の『瀬降り物語』(85)、水谷俊之監督の『ひき逃げファミリー』(92)、岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(94)、青山真治監督の『Helpless』(96)『ユリイカ』(2001)『サッド ヴァケイション』(07)の”北九州3部作”、橋口亮輔監督の『ハッシュ!』(02)、李相日監督の『BORDER LINE』(03)、瀬々敬久監督の『ユダ』(04)、園子温監督の『紀子の食卓』(06)、周防正行監督の『それでもボクはやってない』(07)、吉田康弘監督の『キトキト!』(07)、荻上直子監督の『めがね』(07)、森義隆監督の『ひゃくはち』(08)、佐藤東弥監督の『カイジ 人生逆転ゲーム』(09)、三池崇史監督の『十三人の刺客』(10)、平山秀幸監督の『信さん・炭坑町のセレナーデ』(10)ほか映画出演作は140本を超える。2011年公開作に『毎日かあさん』『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』『岳-ガク-』。公開待機作に『ロック~わんこの島~』『しあわせのパン』『東京プレイボーイクラブ』などがある。

カイジ 人生逆転ゲーム [Blu-ray]

こっちもね。

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最終更新:2013/09/12 21:08
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