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「意外にも親日家が多い!?」緊張感高まるイラン、黒いベールに包まれた国を歩く(前編)

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 核開発をめぐる問題でアメリカとイランの国家間の緊張が高まり、今にも戦争が勃発するのではないかとにわかに騒がしくなっている中東情勢。外務省のHPでは、イラク及びアフガニスタンとの国境付近など一部地域への退避勧告や渡航延期が出されているが、はたしてイランの現状はどうなっているのか。

 まず訪れたのは、首都テヘラン。4,000m級の山々が連なるアルボルズ山脈のふもとに位置し、今の時期は日本とよく似た気候だが、冬季の最低気温は氷点下になることもある。テヘランは、旅行者の間ではこれといって見所のない場所として有名だが、人口680万人を超える人々が暮らす大都会だ。 

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 意外にもテヘランには親日家が多く、歩いているだけで1日100人ぐらいのイラン人からうれしそうに声をかけられる。「日本から来た」と言うと、目を輝かせながら「ウェルカム トゥ イラン!」と迎え入れ、中には車を運転しながら「ジャポーン!」と叫び、走り去ったかと思いきや、バックをしてわざわざ戻ってくる人までおり、かなり好意的な様子。

1iran_01.jpgテヘランで出会った軍人。

 治安はよく、夜でも出歩く人は多い。だが、不思議だったのは、迷彩柄の軍服を着た軍人がやたらと多かったこと。別に銃を持って警備しているわけでもなく、ただ、軍服のまま街をふらふらと私用で歩いているだけなのだが、テヘランを始め、イラン各地の街中をこうした軍人がうろついている。一体、なんだってこんなに多いのか、これはアメリカに対抗してなのか。疑問に思い、出会った軍人に直接聞いてみるとこんな答えが返ってきた。

「別にアメリカだけじゃないよ。イランの周りは、イラクとか、アフガニスタンとか、敵だらけだからね」

13iran_01.jpgイランの国旗。緑はイスラームのシンボルカラーで白は平和、赤は勇気を表す。

 地図を広げてみれば、なるほど確かに少し危険な香りのする国が多い。ちなみに、出会った軍人などに聞いた話によれば、軍人の給料は、1カ月100ドルから400ドル程度。イランでの平均的な1日の稼ぎは10ドルから20ドルのようなので、100ドルは安すぎる気がするが、ほかの職業とそれほど給料は変わらない。ただ、職業によって、日本と同じように住宅手当や食事も出るようなので、軍人の場合、優遇されている可能性は高い。

12iran_01.jpgバンダルアッバースの船着場。
この先には、アフリカ大陸のオマーンがある。

 そもそも、イランがイスラーム国家になったのは1979年のこと。イラン宗教界の指導者だったエマーム・ホメイニーがイランの最高指導者に就任してからなので、意外と最近の話だ。それ以前はアメリカとも友好的な関係にあり、今ではとても考えられないが、女性は自由にミニスカートをはくことができたそうだ。

 30代後半のイラン人男性に当時の話を聞いてみると、「ある日、突然、母親がスカーフをつけ、スカートをはかなくなってしまった」と、子どものころの記憶を語ってくれた。

 それゆえ、イランの行く末を変えたエマーム・ホメイニーは、イランでは誰もが知る最重要人物。イランで使用されている5万リアル、2万リアル、1万リアルなどの紙幣にも載っている。都市部では彼を嫌う人が多く、顔をしかめて「ベシベシ」とお札を叩く人がたまにいたので、私も冗談でタクシーのおじちゃん相手にマネをして叩いてみると、『分かっているじゃないか!』と満足そうな表情を浮かべていた。

iran3 388.jpgホメイニーが載っているイランの紙幣、イラン・リアル。イランでは、
クレジットカードもトラベラーズチェックも使えない。
ドルを中心とした現金を両替する。

 それにしても、旅行中に出会ったイラン人に話を聞く限り、現大統領の支持率は低い。

 そのもっとも大きな理由のひとつが規制の厳しさだ。とくにネットの規制は激しくFacebookやTwitter、YouTubeはもちろん、Yahoo!やGoogleのトップページすら開かず、メールのチェックができないこともあり旅行中は非常に困った。そもそも、ネットの接続も悪くつながらないことも多いが、その一方で、時々なぜかFacebookが見られるようになる”幻の2時間”があらわれるので、それに対して旅行者は一喜一憂するという感じだった。

4iran_01.jpgネットカフェ。イランでは、「カフェネット」「コーヒーネット」
などと呼ばれている。
5iran_01.jpgネットカフェの店内。ここにも軍人。

 もっとも、イラン人もパソコン持ちの旅行者も、多くの人はフィルター解除のソフトを持っており、自分の見たいサイトのアドレスを入れる自由に見ることができる裏テクをいくつも編み出していた。

 だが、「ウォールストリートジャーナル日本版」の1月6日付けの記事(http://jp.wsj.com/World/Europe/node_371090)によれば、イランではインターネットの規制をさらに強化するとのことで、ネットカフェでは「15日以内に監視カメラの設置と、顧客の詳細な個人情報の収集、ユーザーのオンライン履歴を文書で記録するよう求める規制を導入」するなど、また一段と厳しくなるようだ。また今後、独自のインターネット回線のサイトしか使えないようにして外部の情報を一切遮断するという話もあり、インターネットに対して、神経質なまでに警戒を高めている。

 この国は、外国人に対しても飲酒やポルノ雑誌等の持ち込み禁止に加え、女性には、頭のスカーフとお尻の隠れる上着の着用を義務づけるなど、「超」のつくほどイスラームの戒律が厳しい。

 とくに女性が嫌がっているのが服装。これは法律で決められているので、私も旅行中はスカーフを着用し、お尻が隠れる服を着ていた。初めのうちはコスプレ感覚で楽しんでいたが、2週間が経ったころ、あまりにもずっとスカーフを着けているので、首がかゆくなってきてしまった。

7iran_01.jpg旅行中の格好。大体いつもこんな感じ。スカートは基本ダメだが、怒られず。
レギンスも問題なかったが、スカーフは取ると怒られる。

 イラン南部、現在は封鎖問題でゆれるホルムズ海峡に面するバンダルアッバースという港町は半袖でも過ごせるほど暑く、長袖を着ていることがバカらしくなるし、スカーフもつけていられない。そこで、スカーフを取って歩いていると、すぐさま「スカーフが取れてるよ」といろんな人から笑顔で注意されるので、渋々かぶらざるを得なくなってしまった。
 
 今の若い女の子はみな、スカーフを取ってオシャレをしたいと思っている。

6iran_01.jpgイランの女子高校生。肌を露出しない制服姿。

 田舎ではみんなきっちりとつけているが、都市部ではずり落ちる寸前までスカーフを下げていたりする子も多い。まるで、中学生が学校の校則に逆らっているような感じで、なんだか微笑ましい。

11iran_01.jpgスカーフの中。オシャレな人は、スカーフの形がキマっている。
どうやら”盛り”が重要らしく、巨大なリボンかクリップを使いカサ増し。

 だが、スカーフ巻き初心者としては、決してスカーフが落ちないという点には感心。彼女たちのスカーフは常に一定の位置でキープされている。私の場合、後頭部に丸みのない”絶壁”なため、気がつけばスポッと頭から外れてしまうのでよく手で押さえたりしていたのだが、それを仲良くなった大学生の女の子たちの前でやっていたら、

「押さえなくったっていいのよ! 気にしないで。取っちゃえばいいのよっ、こんなもの」

 と、ひとりが道端で自分のスカーフを取ってしまい、一緒にいた子たちは大ウケ。日本にもいそうなイマドキの女の子なのだ。

9iran_01.jpgスカーフをマフラー風にするのがオシャレ?
日本でいうところのギャル系か。

 そもそも、ムスリム(イスラム教徒)が露出NGの理由は、男性を欲情させないため。前述の大学生とは別に、電車の中でイラン人の若い子と話していると、「肌を見せないことで女性は守られているのよ」と、おばちゃんにゆるやかにお叱りを受けたこともあったが、オシャレをしたいという願望は万国共通だ。

 イラン人はみな自分たちが住んでいる町は大好きだが、イランという国や政治は大嫌い。国の政治の暴走にはもはやあきらめモードなのか、「自分たちの手で変えてやる!」というような心意気の人はおらず、「この国はダメだね」と言う人ばかり。

 イランのパスポートは激薄で出入国のスタンプを押すページが2、3ページしかない。これは、最初から「国外に出るな」という設定で作られているように思えてならない。だがこの国は、いつ国民に”見切られて”国外に出ていかれてもおかしくはない。
後編に続く/取材・文・写真=上浦未来)

イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実

どうなるの?

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最終更新:2013/09/09 19:41
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