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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第106回

千鳥 いよいよ全国区に羽根を広げる「媚びない心」の切れ味

813ZAcByI9L._AA1500_.jpg『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶ』
(よしもとアール・アンドシー)

 関西を拠点に活動している千鳥が、ついに東京進出を果たしつつある。この4月からは22時台に進出した『ピカルの定理』(フジテレビ系)でもレギュラーメンバーの仲間入りを果たした。関西ではロケ芸人として名が知られていた千鳥の勇姿を、全国ネットで見かける機会も少しずつ増えてきている。

 千鳥が漫才の祭典『M-1グランプリ』で初めて決勝の舞台に立ったのは2003年。その印象は強烈なものだった。1番手として舞台に上がった彼らが披露したネタは、司会の今田耕司から「エロ漫才」と呼ばれる衝撃的な代物だった。

 ボケ担当の大悟は、ツッコミ担当の相方のノブを女性役にして、幼なじみの女の子と虫取りに行った思い出を再現する。その設定で話が進んでいく中で、不意に大悟は女の子の胸に止まった虫を捕るふりをして彼女の胸を触る。そんな彼をノブ演じる女の子がやんわりとたしなめる演技も妙に生々しい。客席は静まり返り、百戦錬磨の審査員たちもただ苦笑いを浮かべるばかりだった。全国ネットの漫才番組にあえてこんなネタをぶつけてくるところに、千鳥の芸人としてのこだわりの一端がうかがえる。この年、千鳥は決勝で最下位の9位。それ以降も、決勝には三度上がっているが9位、6位、8位という結果に終わっている。

 そんな彼らが漫才の全国大会で華麗な復活を遂げたのは11年。『THE MANZAI』に出場した彼らは決勝に駒を進め、そこで爆笑を勝ち取った。決勝16組の中から最終4組にまで勝ち残り、3位入賞を果たした。ここで自分たちの漫才の面白さを見せつけた千鳥は、ようやく全国区への足がかりをつかんだ。

 彼らの漫才師としての特徴は、第一にネタの種類が豊富であるということ。彼らの漫才には決まったパターンのようなものがほとんどなく、ひとつひとつのネタが違っている。ひとつのボケを何度も繰り返して用いるネタもあれば、わかりやすい笑いどころをあえて設けないストーリー性の高いネタもあるし、リズミカルなしゃべりの掛け合いで笑わせるネタもある。設定が奇抜なものから下ネタ交じりのものまで、とにかく圧倒的に種類が豊富なのだ。

 また、彼らの漫才の技術も折り紙付きだ。チンピラのような怪しい雰囲気を持つボケの大悟は、岡山弁のよどみない語り口で一瞬にして自分の世界を作ってしまう。また、ツッコミのノブは、抜き身の日本刀のように鋭い大悟のボケに対して、いなすようにして優しくツッコミをいれる。シンプルな訂正ツッコミをするだけでなく、ボケを否定せず聞き流すこともあるし、ツッコミのフレーズをひとひねりして笑いを増幅させることもある。一見温厚そうなノブのえびす顔の奥には、漫才サイボーグとしての確かな技術が潜んでいるのだ。

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