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ラジオ批評「逆にラジオ」第19回

「笑いなき芸人ラジオ」という前代未聞の問題作『ダイノジ 大谷ノブ彦のオールナイトニッポン』

dainojiradio.jpgダイノジ大谷のオールナイトニッポン

しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。

 パーソナリティー本人も繰り返しその言葉を口にするように、とにかく「熱い」ラジオである。だが、「熱さ」と「面白さ」は、必ずしも直結するものではない。すべてはその熱がどう生まれ、どう使われるかによる。そして熱さとは、すなわち危うさでもある。

『ダイノジ 大谷ノブ彦のオールナイトニッポン』(ニッポン放送 毎週水曜深夜1:00~3:00)は、この4月改編の目玉のひとつである。芸歴を重ねた中堅芸人が、2月に放送された『オールナイトニッポンR』ただ一回を経て『ANN』1部のレギュラーを任されるというのは、大谷自身が「2部でも大抜擢」と言うほどの快挙である。ではなぜそれほどの厚遇を、彼は受けることになったのか。それは一重に、番組のコンセプトが非常にわかりやすく、狙いが定まっていたからだろう。

 この番組が掲げているコンセプトは、「洋楽で世界を変えるラジオ番組」。そしてその根底にある武器は、パーソナリティーが好きなものを語る「熱量」である。この2つの要素はいずれも、本来の芸人ラジオにはちょうど欠けている部分だろう。前者に関しては、当然だが芸人のラジオは音楽評論家のラジオではないので、芸人ラジオとしては新たな試みに映る。そして後者の「熱量」に関しては、皮肉にもちょうど裏番組を担当する南海キャンディーズ山里亮太は、時に好きなアイドルについて熱く語ることがあるが、その中には必ず自分自身をも冷笑する冷めた視点が所々登場し、その熱は自虐的な笑いへと昇華される。つまり、芸人ラジオの中で珍しく熱さを感じさせる山里のラジオであっても、結果として熱さ一辺倒ではなく、主観的な熱さと客観的な冷静さの間から笑いが生まれる構造になっている。

 だが『ANN』における大谷のトークには、その笑いという要素が、まったくといっていいほど登場しない。むしろ笑いを省くことで熱量をキープしている節があり、結果として芸人のラジオに期待すべき最大の長所が失われている。つまり「洋楽」と「熱量」という、ほかの芸人とかぶらない要素を生かすために、芸人本来の武器であるところの「笑い」を、芸人がすっかり手放してしまっているのである。

 もちろん、裏番組の『JUNK』が世の中を冷たく笑う姿勢(というか、笑いとは本来そういうものである)で勝利している中で、そこに対するカウンターとして、別の武器を持って戦いたくなる気持ちは理解できる。誰もが希望を欲しがっている世の中で、音楽を通じて希望を熱く語るというのは、企画書的には完璧なプランであるように思える。だが、熱さとはつまり押しつけがましさでもあり、パーソナリティーが希望を語れば聴き手も希望的な気分に、熱く語れば聴き手も熱い気分になれるというわけではない。パーソナリティーとリスナーの関係とは、いやそれ以前に人間同士の関係とは、そこまで単純な反応で出来上がっているものではない。そのやり方が通用するならば、この世から熱血教師の言うことをきかない生徒は誰ひとりいなくなり、一瞬にして世界に平和が訪れるはずだ。


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