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薬師丸ひろ子、佐々木希、新垣結衣…「女優の歌声」に学ぶアイドル歌謡の神髄

 佐々木希が10年のクリスマスに向けてリリースしたCD「ジン ジン ジングルベル」をご存じでしょうか。Pentaphonicというヒップホップ・チームとの共演で、可愛いラップと若干の歌唱を聴かせています。「ボイス・トレーニングなど知らない」と言わんばかりにフィーチャーされた地声の不安定さがたまらなくキュートです。なんの考えもなしに適当に作った感じのサビメロと相まって、脳の聴覚野が溶けていくような絶望感いや多幸感を覚える、良くも悪くもインパクトのある好盤で、たぶんブックオフで100円で売っているので、見かけたら買われるとよいのではないでしょうか。

 続いて、「これから歌手デビューしてほしい女優」について妄想します。

 今、最も脂の乗っている女優といえば、石原さとみ。彼女の可愛さには抗いがたいものがあります。どんなに良い楽曲も、彼女のキュートネスの前には霞んでしまうでしょう。そう考えると、ハンドメイドなイメージ、ナチュラルなテイストで、石原さとみ自身の素材の魅力を引き出す敏腕シェフのようなプロデューサーが必要です。とはいえ、ここでまたGLAYのTAKUROにお願いしたら、平凡で眠たいバラードを作ってきそうです。トクマルシューゴがよいのではないでしょうか。彼なら、石原さとみのエッセンスに見合ったクオリティの楽曲を作りそうな気がします。きっとさとみちゃんとポップ・ミュージックの未来を切り拓いてくれることでしょう。

 吉高由里子は、RADWIMPSの野田洋次郎と恋の噂がありますから、彼のプロデュースで歌手デビューすればいいんじゃないですか。最近ラッドに似たバンドがたくさん出てきて幅を利かせていますから、本家を従えて吉高が歌えば、他の亜流バンドはきっと太刀打ちできずに沈静化するのではないでしょうか。

 日南響子は、映画の主題歌の着うた配信などがあったもののCDデビューはしていないようです。配信された曲を聴いてみましたが、中島美嘉のアルバムの7曲目ぐらいにひっそり入ってそうな感じの、あまり印象に残らないバラードでした。沢尻エリカ以来久々に現れたヤバそうな素性と美貌を併せ持つ逸材ですから、CDを出す機会があれば慎重に企画してほしいものです。ギター一本でアイドル・フェスの大舞台に立ち、迸る情念と絶叫でドルヲタをロック・オンした気鋭のシンガーソングライター、大森靖子に任せましょう。彼女の激情、剥き出しの愛は、厄介な煩悶を抱える女優が歌うことで、さらに多くの人々の共感を呼ぶことでしょう。

 最後に、ぜひ聴いてみたいのが堀北真希の歌声です。彼女はなぜCDを出さないのでしょう。破壊的な音痴なのでしょうか。ダンスしている動画などを観ていると、決してリズム感は悪くないようです。声もキレイですし、決して歌が下手なようには見えません。ただ、90年代の広末涼子みたいにキャピキャピした元気なポップスを歌うというキャラクターではありませんし、じっくりバラードを唄うとなるとまたGLAYのTAKUROみたいなのが出てきそうで怖い。彼女の透明感には、きっとテクノが合います。それもエモっぽさのない透徹としたテクノ。そうなると日本には彼らしかいません。歌手・堀北真希は電気グルーヴがプロデュースすべきでしょう。石野卓球がなんとかしてくれるはずです。

 妄想が過ぎました。

「国民的大女優を目指す下積みガールズユニット」を標榜する「夢みるアドレセンス」や、すでに女優として活躍しているメンバーを擁する「bump.y」や「9nine」といったアイドル・グループを見ていると、女優とポップ・シンガーの境界の垣根はどんどん低くなっているように思います。また、美しい女性ボーカリストが野心あふれるクリエイターと手を組んでマーケットを活性化していくのは、正しいポップスの歴史のあり方だと思います。とにかく、美しくて可愛い女の子たちが素敵な歌を唄っている姿を、これからもたくさん見たいです。

●プロフィール
山口真木(やまぐち・まき)
大阪出身の27才、OL。ポップスとロックと女の子をこよなく愛する。何かに毒づいてばかりの思春期まっただ中。『あまちゃん』を全然観ていなかったので、今回のコラムでも能年玲奈や橋本愛にあえて触れてない天邪鬼です。信じてもらえないことが多いのですが、テレビを持ってないのです。いまだに「地デジ化反対」を主張している両親の影響です。でも『乃木坂って、どこ?』だけは毎週ワンセグで観てます。まいやん可愛い。

最終更新:2013/10/07 09:00
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