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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.252

“食べることと、ただ殺すことはまるで違う!”レース未勝利馬の数奇な運命を追う『祭の馬』

umanomatsuri01.jpg福島で被災した馬たちの行方を追った『祭の馬』。ドバイ国際映画祭のアジア・アフリカ・ドキュメンタリー部門でグランプリを受賞した。

 勝つことが義務づけられた競走馬として生まれながら、負け続けることで生き残った不思議な元競走馬がいる。2007年青森県生まれの牡馬ミラーズクエストは、10年に中山競馬場でデビューするも16頭中16位に終わった。その後も負け続け、競走馬としての成績は4戦0勝、獲得賞金0円という結果だった。11年1月には地方競走馬登録を抹消され、肥育馬として福島県南相馬市の馬主のもとへと引き取られる。肥育馬とは食肉用に育てられる馬のことだ。性格的に難のあるもの、怪我をしたもの、勝ち運から見放されたもの、競走馬の多くは遅かれ早かれミラーズクエストと同じ道をたどる。同年3月、東日本大震災が起き、ミラーズクエストたちのいる厩舎も津波に呑まれた。震災を奇跡的に生き延びることができたミラーズクエストだが、今度は“被災馬”というレッテルを張られることになる。一頭の元競走馬の足取りを追ったドキュメンタリー映画『祭の馬』は、カート・ヴォネガットのSF小説『スローターハウス5』を思わせるブラックな笑いと社会風刺に満ちた内容となっている。

 震災直後から南相馬市に通い続けたのは『相馬看花 第一部 奪われた土地の記憶』(12)を撮った松林要樹監督。「テレビのニュースから省かれたものこそ、ドキュメンタリー映画にしたい」というのが松林監督の信条だ。『相馬看花』では福島第一原発から20km圏内にある自宅に一時帰宅を許された夫婦が持ち出す品物をめぐってケンカを始める様子をユーモラスに映し出していたが、今回もテレビのニュース番組では使われることがないショットがスクリーンに大写しとなる。主人公である牡馬ミラーズクエストのおちんちんが真っ赤に腫れ上がり、ずっとぶらぶらしたままなのだ。

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