『鬼滅の刃』劇場版を“キング・オブ・アウトロー”が予備知識ゼロで斬る! 瓜田純士「俺もかつては鬼だった」

文=瓜田 純士(うりた・じゅんし)

 “キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士が森羅万象を斬る不定期連載。今回の題材は、空前の大ヒットを飛ばしている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(外崎春雄監督/原作:吾峠呼世晴)だ。原作未読、テレビアニメも未見、予備知識ほぼゼロで劇場に入っていった瓜田夫婦は、果たしてこの映画にどのような反応を見せるのか?

『鬼滅の刃』劇場版をキング・オブ・アウトローが予備知識ゼロで斬る! 瓜田純士「俺もかつては鬼だった」の画像1
撮影=おひよ

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載されていた吾峠呼世晴原作の大人気マンガ『鬼滅の刃』をアニメ映画化したものだ。大正時代を舞台に、家族を鬼に殺された主人公の竈門炭治郎が、鬼になった妹の禰豆子を人間に戻すため、鬼殺隊の一員として鬼と戦うストーリー。10月中旬より全国公開されるや、コロナ禍にもかかわらず、日本で上映された映画の中で最速で興行収入100億円を突破するなど、いまや一種の社会現象に。

 アウトローでありながらミーハー心を持つ瓜田純士は「そこまで話題なら観に行きたい」と関心を示したものの、原作マンガもテレビアニメもまったく見たことがないという。妻の麗子も同様だ。そのくせ「予習するのは面倒臭い」と2人は口を揃えるので、とりあえず「鬼退治の話だ」「主人公の妹は鬼になってしまって、人を食べないように竹を咥えている」「猪はかぶりもの」とだけ伝えて劇場に送り込み、のちに感想を聞いてみることにした。

ライオン丸みたいな奴が戦うシーンのギターサウンドがやばい

――鑑賞おつかれさまでした。劇場版はテレビアニメの続編なのですが、話にはついていけましたか?

瓜田純士(以下、純士) はい。ストーリーは問題なく理解できましたよ。

瓜田麗子(以下、麗子) 聞いてた前情報だけで充分やったな。

――感想はいかがでしょう?

純士 最初に感じたことは、「この絵か……」と。ほぼ全員目がデカ過ぎだし、やたらめったらカラフルなので、「ビックリマンシールの静止画ならいいけど、この絵で2時間の動画はきついな」というが最初の印象でした。あと、ストーリーとしては、始まって15分か20分の段階で思ったのは、「もしかして2時間ずっと列車の中だけで終わらす気か? だとしたらつらいな」と。

 ところが後半、列車から表に飛び出したあたりから、俄然面白くなってきた。あのライオン丸みたいな奴……名前はなんだっけ? (煉獄)杏寿郎か。あいつが戦うシーンで、ギターサウンドがガンガンに流れていたんですけど、それが抜群に格好よくて。原作マンガがなぜヒットしたのかは未読なのでわからないけど、映画に関しては「この音楽とバトルシーンさえあれば、だいぶごまかしが効くぞ」と。ただし、バトルシーンは全体的に説明台詞が長かったので、舞台を見ているような退屈さを感じる瞬間もありました。

 でも結局感動してしまったのは、登場人物のバックボーンや心情をしっかり描いていたからですね。ああいう描写があることで、初見の俺でもストーリーに入り込むことができた。うまい作りだと思いました。

――感動したということは、この作品を気に入ったんですね?

純士 いや、まだまだ核心は突いていませんよ。それはおいおい語りますね。

――奥様はいかがでしたか?

麗子 あんま期待してなかったんですけど、めっちゃ面白かった! 2時間があっという間でした。でも、ちょっと「ずっこいな」とも思った。過去のいろんなヒット作の寄せ集めちゃう? と感じたんですよ。

純士 確かにいろんな作品のヒットの要素をふんだんに詰め込んでいたよね。たとえば、猪のかぶりものをした(嘴平)伊之助って奴がいたけど、ああいう威勢のいい空回りキャラは『るろうに剣心』とかにも出ていた気がする。また、『銀魂』っぽいギャグ要素もあったし、『ドラゴンボール』みたいなバトルシーンもあって、『孔雀王』とか『3×3 EYES』みたいな妖怪的な世界観も出てくる。『幽遊白書』のテイストも感じました。ヒットの法則に基づいているから、そりゃ当たらないわけがない、という感じですね。

麗子 似てるな、と思った部分はまだまだあるで。呼吸法にこだわるあたりは『北斗の拳』みたいやし、『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉おやじを彷彿とさせる描写もあった。杏寿郎は『ビックリマン』のキャラみたいやし、禰豆子は『NARUTO』のヒナタそっくり。水、炎、風……とかって柱を紹介しとったけど、それって『ポケットモンスター』みたいやし、あの猪のかぶりもんは『もののけ姫』の乙事主からヒントを得たんちゃう? 

純士 作者がインスパイアされたのはマンガだけじゃないかもね。今海外でティーンのカリスマとして売れているビリー・アイリッシュあたりの要素を取り入れていそうなキャラもいたし。

麗子 ついでに言うとこの作者は、「瓜田純士プロファイリング」を見ている可能性もあるで(笑)。顔や身体にタトゥーみたいな模様を施した鬼もおったし、金髪の子(我妻善逸)が「殺すぞ」と言うタイミングなんて、瓜田純士そのもの。作者はきっとものすごい研究熱心なオタクで、いろんな作品のいいとこどりをしてるんですよ。ずっこいなぁ(笑)。

純士 別にずっこくないよ。それが今も昔もヒット作を生むための当たり前の手法だから。この作品が素晴らしいのは、ただ過去作を参考にしているだけじゃなく、人の心をつかむ台詞やシーンが、ストーリーの中にしっかり盛り込まれているところなんですよ。あとは、「人間と鬼」を差別化しつつも、それぞれの立場や心境を丁寧に描いている点も秀逸だと思いました。

 たとえば、後半に出てくる十二鬼月・上弦の参とかいう鬼(猗窩座)がいたじゃないですか。あいつにも鬼なりの背景や心がちゃんとあるんですよ。人間とは価値観が違うんだけど、「俺たちはこっちのほうがいい」という鬼側の視点が明白にあった。そして、同じ強さを持つ者として、同じ武を志す者として、「こっち側へ来いよ。鬼になろうぜ」と人間を誘ったりする。そして、相手の力量に応じて徐々に本気を出していく姿にも男らしさを感じました。

 しかも最後、炭治郎に「逃げるな」と言われたときに一瞬、立ち止まるじゃないですか。鬼だったら「グヘヘヘ、太陽が出る前にサラバじゃ」とか言ってとっとと逃げてもいいのに、ちゃんと「何ィ?」と言わんばかりに立ち止まる。つまり、鬼にもプライドがあるんですよ。そういう細かい描写があったから、鬼にもシンパシーを感じてしまいました。

 一方、人間サイドの炭治郎らにもそれぞれ、家族とのシーンなどが出てくる。夢をコントロールされて、家族から「あなたが死ねばよかったのに」とか言われたりするんだけど、「いや、俺の家族がそんなことを言うわけがない!」という違和感から目が覚める。そこにはちゃんと「親から愛されていた」というストーリーがあるんですよ。

 親からちゃんと愛を受けた人間と、そんなの知らないという鬼。その対比があるから面白い。でね、さらに言うとこの映画って、今の世の中が抱えている、いじめや自殺などの問題ともリンクするように作られていると思うんですよ。登場人物たちの思いに、見ている子どもたちが自己投影できる作りになっている。「それでもこの学校に行かなきゃ」「それでもこの社会で生きてかなきゃ」「悲しいことがあったとしても、もっと俺たちは強くならなきゃ」みたいにね。そこがさすがだな、と思いました。

 もう一個言うと、炭次郎の妹の禰豆子って、正体は鬼なんだけど、人間を守るためにお兄ちゃんたちと行動を共にすることで、周囲の人間たちから認められていくじゃないですか。ああいう過程を見ていると、たとえば転校先でいじめられている子どもたちは勇気づけられるだろうし、子育て中の親世代もジーンとくると思うんです。

 そういう強いストーリーに、先代の名作たちのエッセンスをギュッと詰め合わせて、このメガヒットになったのか。なるほど、そういうことか、と腑に落ちました。

麗子 格闘家の安保瑠輝也が、朝倉未来のいいとこどりをしてユーチューバーとして成功しつつあるのと一緒。『鬼滅の刃』はアニメ界の安保瑠輝也やな。

純士 うーん……それはちょっと、ピントがズレてるな。

麗子 なんで?

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